イソシアネートの検索結果

2022年06月04日 (土曜日)

猛毒の化学物質イソシアネート、マスクを使わずに工事、国策による人命軽視と愚策

 わたしが住んでいる集合住宅で、建設会社がウレタン樹脂を使った防水工事を実施している。窓を開けるとペンキのような臭いが入ってくる。

ウレタン樹脂には、イソシアネートという猛毒の化合物が入っている。化学物質過敏症を引き起こす化学物質の代表格で、米国では国の諸機関が使用に厳しい条件を付けている。(冒頭の図を参照)。これに対して日本政府は、野放しにしている。何の規制もしていない。

防水工事を見てわたしが驚いたのは、作業員が普通の布マスクしか使っていないことである。本来は毒ガス用のマスクが必要だ。作業員の中には外国人も多数交じっている。布マスクでは、作業員たちは、数年後に確実に病気を発症すると思った。

しかし、企業にすれば、現在の法律の下では、違法行為を働いているわけではない。将来、作業員が廃人になっても、何の責任もない。「労働者の使い捨て」とはこのことである。

◆◆

数年前、「バナナの逆襲」という映画が話題になった。米国の多国籍企業、ドール社がニカラグアで経営していたバナナ農園で働いていた労働者らが、雨のように除草剤を浴びた結果、無精子症になり、米国の辣腕弁護士の支援を得て裁判を起こすドキュメンタリーである。

農薬による被害は、グアテマラのコーヒー農園でも起きている。幼児が死亡するなどの事故が起きている。リゴベルタ・メンチュー著、『私の名はリゴベルタメンチュー』がそれを記録している。

化学物質をめぐるこれらの状況は、時空と地理を飛び越えて、まったく同じである。かつての軍事独裁政権の国も、現在の日本政府も人命を軽視している。大企業にとっては、企業天国である。人命が虫けらのように軽くなっている。

※イソシアネートについては、次の記事に詳しい。

2018年09月07日 (金曜日)

報じられない化学物質イソシアネートの危険性、柔軟剤で体調が悪化、産業界優先の日本の愚民政策(1)

新聞研究者の故新井直之氏が明言を残している。

 新聞社や放送局の性格を見て行くためには、ある事実をどのように報道しているか、を見るとともに、どのようなニュースについて伝えていないか、を見ることが重要になってくる。ジャーナリズムを批評するときに欠くことができない視点は、「どのような記事を載せているか」ではなく、「どのような記事を載せていないか」なのである。

このところ研究者を取材する機会が増えている。電磁波による人体影響から化学物資の脅威まで、さまざまな分野の研究者から話をうかがっている。その中である共通点に気づいた。

何が人体や環境に有害かをメディアがほとんど報じないことに対する強い不満と危機感を持っている研究者が多いことである。報じない結果、自分たちが置かれている危険な生活環境を認識することもできない。

日本では、産業界にとってダメージになる情報は知らせない暗黙のルールがあるのだ。「先進国」の中では、日本だけが例外的に「愚民政策」が敷かれていると言っても過言ではない。新井直之氏の言葉を裏付けるようなマインドコントロールが水面下で進行しているのである。

 

◆何にイソシアネートは使われているのか?

読者は、イソシアネートという化学物質をご存じだろうか。筆者はつい最近まで、この言葉を知らなかった。イソシアネートは、極めて毒性が強い化学物質であるにもかかわらず、工業利用の範囲が広い。

香水から、農薬、 タイヤ、接着剤までイソシアネートを使った商品が日常生活の中に氾濫している。毒性については、後述するので、まず、イソシアネートが何に使われているかを、次の表で確認してほしい。

 

◆柔軟剤の香が長持ちする理由

用途があまりにも広いので、ここでは読者に身近な柔軟剤の例を紹介しよう。洗濯するときに洗剤と一緒に柔軟剤を入れることは生活の知恵として定着している。柔軟剤は香の成分を含んでいるので好んで使用されるのだ。

ところがその香の成分を閉じ込めるために使われているマイクロカプセル(ミクロン単位のカプセル)の「皮」の原料がイソシアネートなのである。

マイクロカプセルは熱や摩擦で徐々に劣化していく。すると、内側から香が出てくる。その結果、香が長持ちする仕組みになっているのだ。何も知らない消費者は、香が長続きすることで、高い商品価値があると勘違いするのだ。

しかし、空気中に飛散したイソシアネートは、呼吸などを通して体内に取り込まれる。そして人体に影響を及ぼすのだ。

柔軟剤を使った衣服を身に着けている本人はいうまでなく、職場の同僚や学友も、知らないうちにそれを吸い込んでいるのである。イソシアネートが原因の科学物質過敏症になった人は、人混みにはいると、症状を発症することもある。極めて微量であっても、体が反応するのだ。

農薬などもマイクロカプセルの劣化の原理を利用して、効果が長持ちする仕組みになっている。次の写真は、マイクロカプセルの劣化を示している。右が劣化前で、左が劣化後である。

 

◆イソシアネートによる化学物質過敏症

イソシアネートによる化学物質過敏症では、次のような症状を示す。

 

◆米国での啓蒙活動

欧米では、イソシアネートの危険性は常識となっており、各種の業界団体をはじめさまざまな公的機関が、リスクを知らせるための啓蒙活動を展開している。次の図は、啓蒙活動を行っている各種団体を示したものである。米国の例だ。

テレビ番組などでも、リスクを知らせている。その結果、多くの米国人がイソシアネートについての常識を共有している。

次の図は、上図の各団体の具体的な活動を示したものである。団体名を色で照合してほしい。たとえば黄色は、「EPA 米国環境省」。オレンジ色は、「DOD米国防衛庁」・・・・。

繰り返しになるが、「不都合なことは知らせない」という愚民政策を取っているのは、先進国の中では日本だけである。

2018年05月14日 (月曜日)

芳香剤や建材等の化学物質過敏症、原因は化学物質イソシアネート、被害者の急増で社会問題化…日常生活に支障で退職の例も

化学物質過敏症とは、化学物質に体が反応して体調の悪化をもたらす病気である。芳香剤、柔軟剤、化粧品、農薬、塗料、建材など広範囲な製品に使われている化学物質が原因になる。将来的に患者数が花粉症なみに増えるのではないかともいわれている。

米国化学会(ACS)の情報部門であるケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が登録する化学物質の数は、1億件を超えている。そんなおびただしい種類の化学物質のなかでも、化学物質過敏症の因子として特に注視されているのが、ウレタン原料のイソシアネートである。その危険性に警鐘を鳴らしている内田義之医師(東京都練馬区・さんくりにっく)に、化学物質過敏症について伺った。

――化学物質過敏症の診断基準を教えてください。

内田義之医師(以下、内田) 日本と欧米では、診断基準に大きな差があります。たとえば米国では、慢性疾患で微量の化学物質への曝露にも反応するなど、具体的な6項目(別表参照)を基準に診断しており、アレルギー疾患としてとらえられています。ところが日本の基準は曖昧で、たとえば「倦怠感や疲労感が持続すること」が主症状として定義されていますが、こうした症状は誰にでもありがちなものです。また、「持続する頭痛」も主症状として定義されていますが、化学物質過敏症なのにまったく頭痛がない方もたくさんおられます。

日本の診断基準は、あまりにも心理面を強調し過ぎ、化学物質過敏症という病気を正確にとらえられていないと思います。とはいえ、化学物質過敏症を疑って受診される患者さんのなかには、実はノイローゼや思いこみである人も少なくありません。

私は、日本も米国の診断基準を採用すべきだと考えています。グローバルにデータを比較するという意味でも、日本の診断基準は問題があります。これでは化学物質過敏症の実態を、ほかの国と比較することはできません。ですから専門家が議論して、新たに診断基準を決めるべきでしょう。これは国の役割であると考えます。

――化学物質過敏症の大きな因子になっている化学物質、イソシアネートはどのような製品に使われていますか。【続きは、Business Journal】

2018年05月08日 (火曜日)

なぜ遺伝子組み換え食品は危険なのか?米国で危険が指摘されている商品を日本で普及させる安倍内閣の愚策、種子法の廃止から猛毒イソシアネートの放置まで

4月1日で、種子法が廃止された。

この法律は、日本の主要な農作物(具体的には、稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆)の品種改良を国の管理下で行うことで、種を確実に保存し、普及することを目的に、戦後制定された法律だった。

廃止の理由は実に単純で、農作物の品種改良を公的な管理下から、民間へ移すことである。典型的な規制緩和=新自由主義の政策である。これにより、これまで国が管理していた稲、大麦、はだか麦、小麦、大豆の品種改良に農業ビジネスが参入してくることになる。関連する法整備が整えば、これらの農作物に遺伝子組み換え技術が応用され、実際に国内で生産される可能性が極めて高い。

幸いに、現時点では、国内で遺伝子組み換え農作物を栽培することは、認められていない。スーパーに陳列されている遺伝子組み換え農作物、たとえば大豆やトウモロコシ、ナタネなどはすべて輸入品である。

が、種子法が廃止されたことで、日本でも遺伝子組み換え農作物が開発・生産されるようになる可能性が高い。グローバリゼーションの中で、ビジネスのハーモニーぜーションが進み、米国のモンサント社など、巨大な種会社が日本に進出してきて、日本でも遺伝子組み換え食品があふれるリスクがある。。

と、いうよりも米国では、既に遺伝子組み換え食品の危険性が指摘され、大きな社会問題になっているので、米国の種会社は市場を米国から日本などに移すことになりそうだ。日本人の大半が、遺伝子組み換え食品の危険性を知らされていないからだ。

◇なぜ、遺伝子組み換え食品が危険なのか

遺伝子組み換え食品のリスクは、すでに動物実験でも立証されている。簡単にいえば、次のような理屈になる。たとえば遺伝子を組み換えることで、農薬を散布しても枯れない農作物を作る。そして大量に農薬を使って、作物の大量生産を行う。その結果、作物に付着した大量の農薬残存物が体内に取り込まれ、奇形や癌などを出現させる。

遺伝子組み換え食品の危険性については、次の記事に詳しい。動物実験も紹介している。

【参考記事・メディア黒書】種子法の廃止で、日本に危険な遺伝子組み換え作物が溢れる、恐ろしく無知な安倍内閣の政策

◇イソシアネートによる被曝
日本では、化学物質を被曝するリスクや電磁波のリスクなど生活環境がもたらす人体影響という観点からの報道が極めて少ない。巨大ビジネスの利権にかかわる分野であるからだ。日本のマスコミは、広告依存型なので、これらの企業から広告費が支出されると、大事な問題であっても、報道しない構図になっている。

最近、筆者が取材した水面下の大問題に、イソシアネートの被曝による人体影響がある。イソシアネートは、化学物質のひとつで毒性が強いにもかかわらず、極めて用途の範囲が広い。たとえば身近なところでは、柔軟剤、芳香剤、塗料、化粧品などに含まれている。

イソシアネートは、元々、アレルギーの動物実験のためのラットを作るために使われていた化学物質である。そのためにその有害性は、昔から周知の事実になっている。イソシアネートが体内に入ると、アレルギーを起こすことがは周知の事実となっている。が、それにもかかわらず野放し状態になっている。広範に商業利用されているのである。

【参考記事・メディア黒書】水面下で広がる化学物質過敏症の原因、死亡例もあるイソシアネートの恐怖

◇米国に利用される日本

日本では、生活環境はどんどん悪化している。危険な食品や危険な商品が増え続けている。しかも、こまったことに国会議員にも、ほとんどその認識がないのが実態だ。議員の数が少なく多忙で、規制する法案が作れない事情もあるが、多くの国会議員は議員定数の削減を主張しているわけだから、理由にならないだろう。

種子法の問題に戻るが、日本人の主食である米などに遺伝子組み換え技術を応用し、その種で「新種米」を栽培することを可能にする法整備は止めなければならない。米国で危険が指摘され、縮小の方向へ向かっているものを、日本で普及させる必要はないだろう。

2018年01月31日 (水曜日)

水面下で広がる化学物質過敏症の原因、死亡例もあるイソシアネートの恐怖

化学物質過敏症という言葉をご存じだろうか。これは、化学物質の被曝により健康被害を引き起こす疾病の総称である。人体影響が現れる被曝レベルには、個人差があるが、一旦、化学物質過敏症を発症すると、その後は極めて低いレベルの被曝でも、症状を引き起こすようになる場合が多い。

米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が登録する新しい化学物質の数は、1日に優に1万件を超えるという。これらの化学物質が相互に作用して、どのような汚染を引き起こしているのかは、ほとんど解明する時間がないまま、自然環境は刻々と変化している。自然界には存在しない異物が、地球上に増え続けているのだ。

化学物質による人体影響という概念も、こうした外界の客観的な変化の中で輪郭を現してきたのである。

日本ではまったく報道されていないが、欧米で大きな問題になっている化学物質のひとつに、イソシアネートがある。有機化合物でさまざまな種類がある。化学物質過敏症の原因のひとつである。

イソシアネートは、ポリウレタンの原料である。そのポリウレタンは、ある種の梱包剤、自動車バンパー、断熱材、合成皮、スポーツウェア、塗料、接着剤、柔軟剤など極めて多様な製品に使われる原料である。これらのポリウレタン製品が、摩擦や熱など、多種多様な原因で劣化すると、イソシアネートが空気に混入して、それを吸った場合、人体影響が表れることがあるのだ。(ポリウレタン製品のリストは文末に掲載)

1月26日、筆者ははじめてイソシアネートによる被害の実態を取材する機会を得た。「化学物質による大気汚染から健康を守る会(VOC研究会)」が、公明党の平木大作議員を通じて、厚生労働省などに、対策を取るように申し入れを行った際に取材したのである。

◇化学物質過敏症の症状

資料として配付された論文「環境に広がるイソシアネートの有害性」(津谷裕子、内田義之、宮田幹生)によると、イソシアネートによる化学物質過敏症では、次のような症状を示す

職業喘息の主な原因物質で、死亡例も報告されている。

◇重度の化学物質過敏症の例

Aさん(女性)の例を紹介しよう。Aさんは自宅で行われた床の剥離作業が原因で、重度の化学物質過敏症を発症した。工事会社に化学物質過敏症についての知識がなかったこともあって、作業員も化学物質過敏症を発症した。剥離作業が難航して多量の剥離剤を使ったのが原因だった。その剥離剤の中に、イソシアネートの一種であるトルエンジイソシアネート(TDI)が含まれていたのである。

Aさんが被曝したのは、体調を崩して会社を休み、自宅で療養していたからだ。その同じ家で剥離作業が行われたのだ。

Aさんの化学物質過敏症は、風邪のような症状からはじまり、ひどい咳や痰に悩まされるようになった。さらに喘息に進み、ひと月後には胸の痛みで眠れなくなった。病院でレントゲンを撮ると肋骨が折れていた。

このころから嗅覚過敏、皮膚過敏、聴覚過敏、添加物過敏などの症状が現れた。化学物質過敏症になると極めて低い被曝レベルでも、症状が現れるようになる。これは生命を維持するための一種の防御反応ではないかと思われる。一度でも人体が化学物質で危機的な状態に置かれると、次に外部から「毒」が入ってきたとき、たとえそれが極めて微量であっても敏感に反応するようになるのだろう。

Aさんの症状がいかに重篤であるかは、工事会社が誠意をもって莫大な額の賠償を行ったことでも分かる。次に示すのは、Aさんの手記である。

私が化学物質過敏症になったわけ
化学物質過敏症になると、電磁波過敏症も発症しやすくなることは、よく知られている。実際、Aさんはその後、電磁波過敏症を発症する。

筆者の友人のケースだが、若いころに水道工事の仕事に就き、接着剤を多量に吸い込み、後に重度の電磁波過敏症を発症した例もある。塩田永さんという方で、詳しくは拙著『電磁波に苦しむ人々』で書いている。まさに重度の電磁波過敏症で、塩田さんは、都市部では生活が困難になり、長野県の山奥へ移りすんだ。

化学物質過敏症も電磁波過敏症も、過去の時代背景では生まれ得ないが、「電化」が進み、化学物質が溢れている現在社会の中で、徐々に輪郭を現してきた新世代の公害なのである。当然、イソシアネートの問題は、早急な対策が必要だが、26日の申し入れ会に出席した厚生労働省の職員は、対策に後ろ向きだった。

「科学的な根拠を示してもらう必要がある」

と、答弁したのだった。しかし、公害で最優先されるのは、科学的根拠ではなく、人間を対象にした事例や疫学調査である。原因としてイソシアネートが疑われた場合、「予防原則」を優先して対策を取る必要があるのだ。まして欧米では、厳しく規制されているのである。

◇イソシアネートを利用した主な製品

既に述べたようにイソシアネートの発生源は、際限がない。参考までに前出の論文に掲載された「イソシアネートを利用した主な製品」リストを掲載しておこう。