2014年04月13日 (日曜日)

言論の自由にかかわる2つの裁判、16日(水)に読売VS七つ森書館 清武氏の尋問 18日(金)に森ゆうこVS志岐武彦

4月16日(水)と18(金)に、言論表現の自由にかかわる2つの裁判の法廷が開かれる。16日は、読売新聞社が弱小な出版社・七つ森書館に対して仕掛けている著作権裁判。18日は、森ゆうこ元参院議員が、『最高裁の闇』の著者・志岐武彦氏に仕掛けている名誉毀損裁判である。

それぞれの裁判の詳細は次の通りである。

【読売VS七つ森書館】

日時:4月16日 水曜日

場所:東京地方裁判所 721号法廷

午前10時20分?12時  原告側証人・星春海さん(出版契約当時、 読売新聞社会部次長)

 午後1時30分?3時30分 被告側証人・清武英利さん(元読売巨人軍 専務取締役)

午後3時30分?午後4時  中里英章(被告代表者・七つ森書館社長)

【森ゆうこVS志岐武彦】

日時:4月18日 金曜日

場所:東京地方裁判所 530号法廷

時間:午前10:00

 ※法廷の終了後、「志岐武彦さんを支援する会」が弁護士会館503号でミーティングを開きます。だれでも参加できます。問い合わせ先は、電話048?464?1413(黒薮)まで。

◇読売VS七つ森書館?職務著作権をめぐる問題

この裁判の発端は、七つ森書館が『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』(読売新聞社会部。1998年新潮社刊、2000年新潮文庫)を復刊しようとしたことである。同書は清武英利氏が中心になって制作したもの。七つ森書館は、2011年5月9日に読売との間に出版契約を結んだ。

ところが本の制作が最終段階に差し掛かったころに、清武氏が記者会見を開いて、読売の渡邉恒雄会長を批判したのを機に、両者は裁判へと突入した。その影響が、七つ森書館にも及んだようだ。

読売が七つ森書館に「出版契約を解除したい。補償はお金でする」と申し入れてきたのだ。しかし、交渉は決裂。読売は、喜田村洋一自由人権協会代表理事を代理人に立て、出版契約の無効を主張して裁判を起こしたのである。

争点としては、出版契約の手続きが有効かどうかという点に加えて、職務著作権をめぐる問題も浮上している。

職務著作権とは、新聞社の場合に即していえば、ある記事を執筆した記者をその記事の著作権者と認定するのを回避して、記者が所属する新聞社を著作権者と定めるルールである。著作権法の15条1は、職務著作権を次のように定義している。

法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

問題となった『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』は、読売新聞の記者たちによる執筆・取材である。しかし、単行本として刊行する場合は、単行本に即した文体や形式に改めることが多い。

新聞連載をそのまま単行本にすれば、無機質な印象が露呈して単行本としては読みづらいからだ。

詳しいことは知らないが、この本が新潮社から出版されるに際して行われた「てなおし」の過程では、清武氏の功績が大きい。このあたりを裁判所がどう判断するかが注目される。

読売勝訴により、職務著作権の適用範囲を拡大する判例ができてしまうと、新聞記者や出版社の編集者が自分の名前で本を出版する自由が侵害される危険性も秘めている。出版関係者にとっては、重要な意味を持つ裁判である。

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2014年04月11日 (金曜日)

同じ脈絡の携帯基地局問題と原発問題、チェルノブイリの被害報告から察する電磁波の影響

原発には反対だが、携帯電話の基地局設置には反対しないという人が少なからずいる。その典型的な人物は、ソフトバンクの孫正義氏である。孫氏は「3・11」のあと、はやばやと原発に見切りをつけて、それを代用する新しいエネルギーの開発へ、第一歩を踏み出した。

しかし、「原発には反対だが、携帯電話の基地局設置には反対しない」という孫氏の立場は、電磁波による人体影響という観点からすると論理が破綻している。携帯基地局が発生源となるマイクロ波も、原発が発生源となるガンマ線も、同じ電磁波(放射線)の仲間である。前者のエネルギーが低く、後者のエネルギーが高いという違いはあっても、電磁波による人体影響という観点からすれば、いずれも電磁波問題である。

その電磁波が誘発する人体影響として、とかく癌がクローズアップされる傾向があるが、癌は数ある病変のひとつに過ぎない。電磁波によりどのような人体影響が現れるのかは、チェルノブイリの原発事故の後に報告されている被曝者の体調変化が参考になる。

 『チェルノブイリ被害の全貌』(アレクセイ・V・ヤブロコフ他 岩波書店)には、原発事故の後、確認されているがん以外の疾患につて次のように要約している。

(略)脳の損傷がリクビダートル(事故処理作業員)や汚染地域の住民とその子どもたちなど、放射線に直接さらされた人びとに見られた。若年性白内障、歯と口の異常、血液、リンパ、心臓、肺、消化器、泌尿器、骨および皮膚の疾患によって、人々は老若を問わず苦しめられ、健康を損なわれている。内分泌系の機能障害、とりわけ甲状腺疾患の広がりは予想をはるかに超え、甲状腺がんが1例あれば甲状腺の機能障害は約1000例あるというほど、大惨事後に著しく増加している。

? 遺伝的損傷と先天性異常が、特にリクビダートルの子どもや、放射性同位体によって高濃度に汚染された地域で生まれた子どもに認められる。免疫異常と、ウィルス、細菌、および寄生虫による疾患が、重度汚染地域に蔓延している。チェルノブイリ事故によって放出された放射線に被曝した人びとの総罹患率は、20年以上にわたり依然として高い。???

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2014年04月10日 (木曜日)

携帯電話の電磁波問題で何が危険視されているのか?欧州と日本の見解の違いとは

携帯電話やスマートフォンの普及が進むにつれて、携帯電話の基地局が増えている。会社から帰宅すると、自宅の隣ビルに携帯基地局が立っていたといった話があとを絶たない。笑うに笑えないブラックユーモアである。

それに伴いMEDIA KOKUSYOにも携帯電話の電磁波(マイクロ波)とは何かという問い合わせが寄せられようになった。

電磁波とは、ごく簡単に言えば電波のことである。その電波とは、電気を空間に飛ばしたものである。電波はアンテナから発せられて、アンテナで受信される。アンテナがなければ、利用価値はない。

固定電話では、ケーブルを通じて情報が送られてくるが、携帯電話では、電波を通じて情報が送られてくる。

ちなみに電磁波の「電」とは、電気のことで、「磁」とは磁気を意味する。「波」は文字通り波。つまり電磁波とは、磁気を帯びている電波の性質をより正確に定義したものである。それゆえに単純に電磁波=電波と考えても、許容範囲といえる。

しかし、電磁波の存在はなかなか認識するのがむずかしい。肉眼で知覚することができないからだ。色もなければ、音も匂いもない。ビルの屋上から街を見下ろして、目の前の空間を電波が飛び交っているイメージを描くひとは、ほとんどいない。

これに対して、たとえば風は目には見えないが、街路樹が揺れたり、桜が花吹雪となって散る光景をまえにすると、風が客観的存在であることを認識できる。

が、認識の壁が、客観的存在を否定することにはならない。マイクロ波が携帯基地局と「電話器」の間に介在しなければ、携帯電話で通話できない事実は、情報を運ぶマイクロ波が客観的存在であることを物語っている。そのマイクロ波を生物、特に人間が被曝した際に現れる負の人体影響が、新世代公害?電磁波問題としてクローズアップされているのだ。

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2014年04月09日 (水曜日)

マッカーサーと最高裁長官の談合で決めた砂川事件・最高裁判決 瀬木比呂志著『絶望の裁判所』?

最高裁事務総局に在職した体験をもつ瀬木比呂志氏の著書、『絶望の裁判所』(講談社現代新書)は、最高裁の実態を冷静な筆づかいて内部告発している。

裁判の原告、あるいは被告になったことがある人であれば、権力を持つものにより親和的な判決を下す傾向がある裁判所の実態を肌で感じたことがあるのではないだろうか。「公正」とか、「正義」といった言葉とは程遠い。

しかし、不公平感の具体像はなにか?『絶望の裁判所』の中で瀬木氏は、判決の内容が方向づけられる不正なプロセスを暴露している。最高裁が民主主義の理念に著しく反し、この国のあり方を国策に照合しながら、「談合」や「密談」で決めてきた恐るべき実態を批判している。

具体例を3件、紹介しよう。まず、最初は次の記述である。

 その後、(私は)東京地裁の保全部というセクションに1年間所属した。  ここでも一つおかしなことがあった。国が債権者(申立人)となる仮の地位を定める仮処分命令事件について、国(法務省)が、事前に、秘密裏に、裁判所に対して、その可否、可能であるとすればどのような申立てを行えばよいのかを事実上問い合わせ、未だ仮処分の申立すらない時点で、かなりの数の裁判官たちがそれについて知恵を絞ったのである。

こうした行為は、入試のカンニングと同じである。「出題者」に事前に答えを教えてもらうのであるから、法務省と最高裁が結託して不正を働いたことになる。

もうひつと類似した例をあげよう。

重要なことなのでほかの例も挙げておくと、ずっと後のことであるが、東京地裁の多数の部で審理が行われている同種憲法訴訟について、同様に事前談合に類した行為が行われたことがある。裁判長の定例会議におけるある女性裁判長の提案により、裁判長たちが秘密裏に断続的な会合をもち、却下ないし棄却を暗黙の前提として審理の進め方等について相談を行ったのである。(略)  こうした不正は、裁判の基本的な公正を害する行為なのだが、おそらく、日本の司法においては、さまざまな場所にさまざまな形で存在するのではないかと思われる。

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2014年04月08日 (火曜日)

新聞を読む事と知力の発達は関係あるのか? 我田引水の『新聞協会報』の記事、背景に新聞に対する軽減税率適用の問題

『新聞協会報』(2014年1月14日)は、新聞を読むことが子供の知力の発達を促すとする観点から、新聞の優位性をPRする記事を掲載した。タイトルは、

新聞読む子供、正答率高く

学力テスト 文部省分析 閲読習慣と相関関係

と、なっている。この記事によると、「新聞をよく読む児童・生徒ほど全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で正答率が高かった」ことが「文部科学省の分析で明らかになった」という。記事の冒頭には、次のような記述がある。

文科省が公表したクロス集計結果によると、小6国語Aでは、新聞を「ほぼ毎日」読んでいると答えた生徒の正答率は69.4%、「週に1?3回」は67.0%、「月に1?3回」は63.1%、「読まない」は59.3%だった。新聞を頻繁に読む生徒ほど、正答率が高かった。

 中3国語Aでも「ほぼ毎日」が80.3%、「週に1?3回」80.0%、「月に1?3回」77.6%、「読まない」75.4%だった。

 算数、数学でも同じ傾向だった。小6算数Bでは、「ほぼ毎日」読む児童は「読まない」児童より、正答率が9.7ポイント高かった。中3数学Bでも8.8ポイント高い。文科省初等中等教育局の八田和嗣学力調査室長は「新聞などで培った言語力は、問題文の理解に役立つだろう」と話す。

注意深く記事を読むと、新聞をPRするために、不自然な論理をこじつけた記事であることがわかる。このような記事を掲載した背景には、新聞に対する軽減税率適用の是非をめぐる議論が、今後、高まることが予測される中で、新聞協会が新聞の優位性をPRする戦略にでた事情があるようだ。

が、新聞協会が情報源とした文科省実施の調査は、科学的な視点を欠いている。情報源となる調査そのものが非科学的なので、記事もずさんなものになっている。それでもあえて記事掲載に踏み切った背景に、新聞協会のあせりがかいま見える。

まず、学力向上と新聞を読む行為の関係を調べるためには、その前提として調査対象を同程度の学力の児童・生徒に限定しなければならない。その上で新聞を読むグループと読まないグループに分けて、一定の期間を経た後に学力テストを実施して、成績を分析しなければならない。

さらに同程度の学力グループを対象として、たとえば新聞を読んだグループと夏目漱石の小説を読んだグループに分けて、一定の期間を経た後に成績の変化を分析しなければならない。

教育問題の専門家にアドバイスを求めれば、他にもたくさん基本的な留意点の誤りがあるかも知れない。

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2014年04月07日 (月曜日)

安倍内閣の下でエスカレートする内閣とメディアの癒着 アメとムチの政策の背景に「押し紙」問題の汚点

『しんぶん赤旗』(3月27日付け・電子版)が、安倍内閣が消費増税に反発する世論を抑えるために政府広報に12億6000万円を支出していたことを報じている。

同紙によると、「政府広報はテレビスポット、新聞・雑誌広告、新聞折り込み広告、ラジオCM」のほか、「インターネット上の広告にあたるウェブバナーや駅貼りポスター、コンビニ有線放送CM」など、「あらゆる階層にいきわたるように広報を展開した」という。

政府広報を受注したメディア企業各社に対して12億円6000万円がどのように配分されたかは不明だが、この支出には不適正な要素がある。改めて言うまでもなく、それは新聞の紙面広告の価格が、実態のない部数データに基づいて決められているために、不当に高い広告費を手にした新聞社が存在する可能性である。周知のように紙面広告の価格は、ABC部数(印刷部数)に準じて決められる。

たとえば、次に例として示すのは、代表的な公共広告のひとつである最高裁がスポンサーになった公共広告でみられる支払い配分の実態である。

■PDF公共広告の価格と部数の関係データ

ABC部数が全国1位の読売がトップで、以下、朝日、毎日、産経の順番になっている。ABC部数の序列も同じである。

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2014年04月04日 (金曜日)

1966年の袴田事件にみる読売記事を検証する、逮捕まえから実名報道「従業員『袴田』逮捕へ」 警察情報が裏目に

袴田巌氏が殺人で逮捕された事件の新聞報道を検証してみると、記者クラブや「サツまわり」を通じて、警察から得た話をもとに記事を書くことが、いかに危険であるかが浮かびあがってくる。事件が起きた1966年の新聞には、警察情報をうのみにして、袴田氏を犯人と決めつけた記事が並んでいる。

袴田氏が殺人で逮捕された事件は、静岡県清水市で起きた。6月30日の未明に味噌製造業を営む一家4人が殺害され、9月になって従業員の袴田巌氏が逮捕された。これが袴田冤罪事件の発端である。

◇皮切りは、「血染めの手ぬぐい押収」

一家殺害の5日後にあたる7月4日には、匿名とはいえ早くも袴田氏を容疑者とする記事が新聞に掲載された。『読売新聞』は、

「清水の殺人放火 有力な容疑者 血染めの手ぬぐい押収」

と、いう見出しで事件を報じた。また、『毎日新聞』は、

「清水の殺人放火 従業員『H』浮かぶ 血染めのシャツを発見」

と、報じた。

2つの記事は内容も見出しもそっくりだ。警察のリーク情報をもとに記事を書いたことが類似の要因にほかならない。

当時、警察がいかにしてマスコミを利用したかは、弁護士の秋山賢三氏が「精神障害者の獄中処遇?袴田巌氏の事例」(『精神神経学雑誌』2001年9月)の中で、次のように指摘している。「その事実(黒薮注:警察が自白を強要した事実)ができると、警察所長とか次席検事が大々的に記者会見して、『本日、袴田巌は自白いたしました』ということで、翌日の新聞やテレビ」で大きく報道された。

ちなみに秋山弁護士は、「精神障害者」として袴田氏を位置づけているが、これは死刑が確定した後、同氏が精神に異常をきたした事実を根拠としている。従って精神障害と犯罪の関係に言及したものではない。

参考までに、警察所長や次席検事に操られて、新聞はどのような記事を掲載したのだろうか。『読売新聞』の記事を検証してみよう。

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2014年04月03日 (木曜日)

ボクシング亀田興毅・和毅兄弟がフリージャーナリスト個人に2千万円請求訴訟、『東スポ』は訴外に

プロボクシング世界王者・亀田興毅と大毅の兄弟が昨年12月、対戦相手のグローブ選択をめぐるトラブル等を報じたフリージャーナリストの片岡亮氏に対し、2000万円の支払いを求める名誉毀損裁判を起こした。

亀田陣営の代理人は、TV出演で稼ぐ北村晴男弁護士だ。片岡側は、今年3月の第2回口頭弁論で、SLAPP(スラップ=恫喝訴訟)とする主張も展開、真っ向から対立している。

争点の記事は、片岡氏が主宰するウェブサイト『拳論』に掲載したもので、亀田兄弟がJBCの職員を監禁・恫喝した、とする内容。だが同じ趣旨を伝えた『東京スポーツ』は訴外だ。事実関係をめぐり双方が対立しているが、今年2月、今度は、そのJBC職員が亀田興毅らに対し、監禁・恫喝に対する1000万円の損害賠償を請求する裁判を起こしたことが分かった。

視聴率に固執するテレビ局の方針のもと、不祥事を起こしても重宝がられてきた亀田家の過去の汚点も、一連の裁判で検証されそうだ。(訴訟の対象とされた記事はPDFダウンロード可)【続きはMyNewsJapan】

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2014年04月02日 (水曜日)

公共事業は諸悪の根源 ジャーナリズムでなくなった朝日 その9【後編】

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

まともな回答がない以上、株主総会で実際に質問するべきか、私は悩みましだ。ただ、箱島社長は、年齢制限の内規でこの期での社長退任も既定路線でした。

朝日の社長は、タスキ掛け。経済部出身者と政治部出身者の順繰りだと、週刊誌はよく伝えています。でも、この話の半分は正しくても、半分は正しくありません。平和裏に順繰り人事が行われる訳ではなく、その度ごとに、経済部、政治部の現役を巻き込み、政党の党首選顔負けの血みどろの派閥抗争になります。円満に収めるため、落ち着くところに落ち着いた結果が、タスキ掛け人事というだけなのです。

キャスティングボードを握った社会部出身の経営幹部も、社長に次ぐ地位を得て、黒幕として社内に影響力を持ち続けるのも常でした。これも雲の上の話です。

私は詳しい内幕は知る立場にはありませんが、箱島社長誕生の時、少なくともキャスティングボートを握れる立場にいた一人が、私の記事を止めた社会部長に「名古屋・編集局長を約束した」という例の社会部出身経営幹部だったのです。様々な憶測が社内を飛び交っていましたが、この幹部が、後日、実質朝日ナンバー2のテレビ局社長・会長へと上り詰めたのは事実です。

社会部、政治部にしかいなかった私と、経済部出身の箱島氏との間で、深い確執があるはずもありません。まして、名古屋が初めてで、事情を知らないはずの名古屋代表が、私に何故、「信頼回復」を求めたのか。私は箱島社長を陰で操るこの人物の隠然たる力を嗅ぎ取っていない訳ではなかったのです。

◇週刊誌への内部告発も考えたが・・

箱島社長は退任時期が迫るほど、派閥人事をさらに強く推し進めていました。退いても自分の思い通りになる経済畑の後輩をその後釜に座らせ、「会長」ポストを作って君臨。院政を敷くためと言うのが、社内のもっぱらのウワサでした。しかし、武富士問題での風当たりは強く、さすがに「会長」職を諦め、次期社長に政治畑の秋山耿太郎氏の就任が内定していました。

箱島氏は取締役にしがみつき、「取締役相談役」で残ることにはなっていました。でも社長が政治畑に代われば、社内の雰囲気は少しは変わり、この幹部の影響力もそがれるはずです。私に、派閥意識はなかったつもりです。この程度の淡い期待は、正直ありました。

実は秋山氏と私は、名古屋社会部、東京政治部で、デスク、記者の関係。政治部を去る時、親身に私を心配してくれた一人でした。河口堰の記事を止めた経過もよく知っています。めでたい社長就任の株主総会で、私が大暴れするのも忍びません。

それに、私は週刊誌に手記を発表する内部告発を何のために見送って来たか…です。前述の通り、靖国参拝、憲法改正なども口にする小泉政権全盛の中で、私が汚点を明らかにすれば、朝日の信頼感はさらに低下。ブレーキ役不在を作り出し、この国を危うくするのではないかとの危惧からでした。その状況に変化はありません。

週刊紙注視の中で行われる株主総会で、私が朝日が記事を止めた経過を発言することは、週刊誌に手記を発表することと同等です。と言うより、質問が週刊誌に面白おかしく書き立てられるくらいなら、むしろ私の思いを手記として発表する方が誤解を招かず、まだましです。

そんなこんなで、私は株主総会での質問を思い止まりました。もちろん、それが良かったことか、悪かったか。今から考えても、私には判断がつきません。ここで読者の審判を仰ぎ、ご意見を真摯に耳を傾けたいと思っています。

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2014年04月01日 (火曜日)

公共事業は諸悪の根源 ジャーナリズムでなくなった朝日 その9【前編】

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

メディアの最大の仕事は「権力監視」。ジャーナリストなら常識であり、「見識」です。それに反し「政府が右と言えば、左という訳にはいかない」と公言しているNHK籾井勝人会長が居座ったままです。

メディアへの暴力行使を礼賛したとも取れる文章を発表した経営委員の長谷川三千子氏、都知事選の応援演説で対立候補を「人間のくず」呼ばわりした作家の百田尚樹氏も…です。

居座りの極めつけは、小松一郎・内閣法制局長官でしょう。政府の法案提出についてまで言及するのはご愛嬌としても、「憲法の番人」としての「見識」が全く感じられません。

憲法は国是であり、時の内閣の解釈で憲法が実質くるくる変わるようでは、「立憲国家」とは言えません。時の権力の意向と一線を画し、これまで法制局がなぜ集団的自衛権の発動を一貫して憲法違反として否定して来たか?

それは、いかなる理由があろうとも「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」との9条に明確に違反するからです。これが「立憲国家」としての法制局の「見識」であり、時の権力に安易に迎合しない「節度」と言うものでしょう。

◇「ナチスの手口を学んだら」

「欧州でもっとも進んだ憲法」と言われていたのは、ドイツのワイマール憲法でした。それがナチスによって都合よく解釈され、歯止めのない軍事国家にひた走りました。「ナチスの手口を学んだら」と発言したのが、麻生副総理です。その意向を受けて、小松長官が「頭の体操」で、これまでの法制局の「見識」「節度」をかなぐり捨て、解釈を180度転換するなら、ナチスの二の舞です。

自民は昔から金にだらしなく、数を頼んだ横暴も数多くありました。しかし、少なくとも歴代内閣には、政府が任命権を持つ重要ポストは、それなりの「見識」を持った人を任命するという最低限の「節度」はあったように思います。

それでも世間の批判を強く浴びる不適任な人と判明した場合、トカゲの尻尾切りではあっても、辞任を求めたりする「見識」もありました。自民が戦後政治の中で、長期政権たりえた秘訣も、こんな「節度」「見識」を辛うじて持ち合わせたことにあったようにも思います。

しかし、安倍政権にそんな「節度」「見識」を求めても無理なようです。自分たちの考えを同じくする「節度」のない「お友達」を集め、憲法まで自分たちの思い通りに解釈を変えて、運用する。これでは、立憲国家でなく安倍独裁国家です。

確かに中国や韓国の指導者の発言にも、「見識」「節度」は感じられません。しかし、この国が両国と対抗するのは、決して軍事力でなく、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」する「見識」「節度」であるべきだと思っています。

曲がりなりにも国際社会でこの国が積み上げてきた「節度ある外交」…。それを安倍政権が根底から崩してしまうなら、その先にこの国の未来は見えて来ないのではないか。私は最近そんな絶望感に襲われています。

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2014年03月31日 (月曜日)

喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求 日弁連が黒薮の異議申立を棄却 ずさんで舌足らずな決定書の文面

日弁連は、3月19日、わたしが申し立てていた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求(第二東京弁護士会が下した棄却決定に対する異議申立)を棄却した。喜田村側からの反論は提出されていなかった。

※なお、この事件の経緯を知らない方は、下記、紫文字で記した【事件の経緯】を最初に読むことをお勧めします。前出記事に加筆した内容です。

日弁連の決定書には、形式的には棄却理由が綴られているが、具体的な理由は何も記録されていない。「理由」と称する記述は次の通りである。驚くべきずさんな書面だ。

異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨は、いずれも第二東京弁護士会綱紀委員会第2部会の議決書に記載のとおりであり、同弁護士会は同議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。  

本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の決定には不服であるというにある。  

当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である。  

よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり議決する。

 平成26年3月19日

 日本弁護士連合会綱紀委員会第1部会                                     部会長 松田耕治

■決定書PDF

松田弁護士が「理由」と称しているものが、理由説明の体をなしていないことはいうまでもない。理由書は、結論に至る経緯を具体的に説明するものである。ところが松田氏が言及する理由とは、「異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である」と判断したことである。

が、これは理由ではなくて、結論を述べているにすぎない。理由とは、結論に至るプロセスの説明である。

大学や専門学校の入試に小論文という科目があるが、この決定書は、誰が採点しても小論文のレベルにすら達していない。このようなものを決定書と称して、弁護士が送付してきた事自体が驚きに値する。不誠実で他人を卑下しているとしかいいようがない。

わたしが第二東京弁護士会の議決を不服として、日弁連に再検証を求めたのは、次の2点である。

問題となった文書(催告書)に書かれた内容そのものが、支離滅裂、デタラメだった事実である。喜田村弁護士がそれを知りながら、裁判所に提出した事実である。それを裏付ける新たな資料を、わたしは日弁連に提出している。

■新証拠PDF(喜田村弁護士執筆の記事。同氏が考える著作物の定義と催告書の中で採用されている著作物の定義が異なる)

著作権裁判をめぐる事件であるにもかかわらず、著作権裁判所で下された判決(黒薮勝訴)を無視して、著作権裁判の勝訴を前提にその後、わたしが起こした損害賠償裁判(読売勝訴)の判決の方を根拠にして、第二東京弁護士会がわたしの申立を退けた事実である。繰り返しになるが、わたしは著作権裁判の勝訴(最高裁で判決が確定済み)を前提として、今回の懲戒請求を申し立てたのである。それにもかかわらず、第二東京弁護士会は著作権裁判の判例を故意に無視し、副次的な意味しかもたない損害賠償裁判の判決を根拠に、喜田村弁護士を「救済」したのである。

わたしは、?と?に基づいての再検証を求めるために、日弁連に異議を申し立てたのである。と、すれば、?と?について、日弁連の見解を明確にするのが、松田氏の任務であるはずだ。なぜ、著作権裁判の判決を無視しているのかという疑問と、催告書の内容がデタラメだった事実をどう評価するのかを問うたのである。それについての判断を示し、その理由を説明するのが、日弁連の役割だったはずだ。

このような書面を配達証明で受け取ると、そもそも最初から異議申立を真面目に検証する気などなかったのではないかと、疑わざるをえない。弁護士会という一種の「村社会」の中で、仲間を仲間が処分することのむずかしさを痛感する。

懲戒請求制度も、弁護士の正義をPRするための儀式に過ぎないと受け取らざるを得ないのである。結局、弁護士会の体質も、利権集団的な傾向が強いのかも知れない。事実、同会は、政治連盟を通じて、政治献金を支出している。

■参考記事:政界進出狙う宇都宮健児氏、日弁連も政界へ献金 献金先の政治家同士で国会質疑の茶番劇も

改めて言うまでもなく、棄却決定に抗して日弁連に綱紀審査を申し立てることになる。

以下、事件の経緯を説明した後、『弁護士職務基本規程』に照らし合わせて、今回の懲戒請求を再検証してみたい。わたしが従来から主張してきたのは、

75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

と、いう条項だったが、細かに検討してみると、ほかにも今回の事件に該当するのではないかと思われる条項が多数ある。

さらに日弁連による弁護士の処分例を紹介しよう。第3者からみると、適正な処分を受けている弁護士もいるようだ。

最後の「資料編」として、書面などをリンクした。

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2014年03月28日 (金曜日)

『財界にいがた』が森裁判の連載を開始 公益性のあるテーマは論争で決着を

新潟県を中心に普及している月刊誌、『財界にいがた』(http://zaikainiigata.com)4月号で、「小沢一郎を強制起訴に追い込んだ検察審査会と最高裁の闇」と題する連載が始まった。第1回のタイトルは、「森裕子・前参院議員はなぜ一市民を名誉毀損で提訴したのか」。

森裕子氏は新潟県出身の前参院議員である。一方、「一市民」とは、『最高裁の闇』の著者で、森裁判の被告・志岐武彦氏のことである。

この裁判については、MEDIA KOKUSYOでも断続的に取り上げている。事件の概要は、小沢一郎氏を強制起訴した東京第5検察審査会が、実は審査員が存在しない「架空審査会」だったのではないか、というかなり客観性がある証拠が浮上し、この点をめぐって意見が対立した森氏と志岐氏の論争が、訴訟にまでエスカレートしたというものである。

志岐氏が東京第5検察審査会を管轄する最高裁事務総局の責任を強調しているのに対して、森氏は最高裁にも問題はあるが、むしろ検察の誘導により小沢氏の起訴議決が下されたとする説を展開してきた。

事件の経緯については、次のPDFを参考にしてほしい。

■PDF『森ゆうこ元参議院議員が「一市民」に起こした恫喝訴訟が明かす「最高裁の闇」』

■PDF『浮上する最高裁事務総局の闇 森ゆうこ元参院議員が一市民を提訴』

リンクした2つの記事は、『ジャーナリスト』と『紙の爆弾』にわたしが執筆したものである。このほか、MyNewsJapanにも次の記事を掲載した。

■生活の党・森ゆうこ氏が最高裁の闇を指摘した「一市民」を提訴、820万円と言論活動の制限求める

今回、『財界にいがた』に掲載された記事の最大の特徴は、森氏の反論が掲載されていることである。

※『財界にいがた』の記事は、黒薮が執筆したものではありません。

森氏の反論の趣旨は、

?志岐氏がインターネットで悪質なデマを拡散しているので裁判を提起した。

?小沢無罪を勝ち取るために最高裁と裏取引をしたことはない。

?検察の捏造報告書を流出させたのは自分ではない。

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2014年03月27日 (木曜日)

強制わいせつ未遂と住居侵入の疑いで読売新聞販売員を逮捕 責任を転嫁する新聞社の「取引関係にある販売店」という表現

新聞ばなれが進むなか、強引な新聞勧誘が増えている。24日付けの産経(電子版)は、読売新聞の販売員が強制わいせつ未遂と住居侵入の疑いで逮捕されたニュースを掲載している。タイトルは、「契約断られた直後に… 強制わいせつ未遂容疑で読売勧誘員の男逮捕」。

 新聞購読の勧誘で訪れたマンションで、女子大生(19)にわいせつな行為をしようとしたとして、京都府警北署は24日、強制わいせつ未遂と住居侵入の疑いで、京都市北区大宮北林町、読売新聞販売員、堀茂樹容疑者(38)を逮捕した。同署によると「行ったことは間違いない」と話しているが、わいせつ目的については否認している。

 逮捕容疑は2月11日午後8時20分ごろ、新聞購読の勧誘で訪れた同区のマンションで、一人暮らしをしていた女子大生の部屋に入り、わいせつな行為をしようとしたとしている。

 同署によると堀容疑者は犯行前にも勧誘に訪れ、女子大生は4日間の試し読みをしていた。試し読み後に購読契約を断ると、犯行に及んだという。

 読売新聞大阪本社広報宣伝部の話 「取引関係にある販売店の従業員が逮捕されたことは誠に遺憾。事実を確認のうえ、厳正な対処を販売店に求める」

疑問を呈したくなるのは、読売の広報宣伝部のコメントである。「取引関係にある販売店」という表現は、販売店が不祥事を起こしたときの常套句になっている。が、これは商取引の契約上、新聞社は販売店との「取引関係」にあるということに過ぎない。読売に限らず新聞社は販売店に対して、販売政策を徹底させている。むしろ実態からすると、販売店は、新聞社販売局の実働部隊と解釈することもできる。

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2014年03月26日 (水曜日)

新聞協会が発表した「新聞を読む」83%、世論調査を実施したのは時事通信社と親密な中央調査会

日本人(子供を除く)の83%が「新聞を読む」習慣があるという日本新聞協会の調査結果を、読者の皆さんはどう感じるだろうか?

同協会は18日、自らが主催した「全国メディア接触・評価調査」の結果を公表した。ところがこの調査は、厳密にいえば新聞協会とは無関係の第三者に依頼して実施したものではないことが分かった。本来、「身内」以外に発注するのが常識なのだが。

調査は、新聞協会の会員社である時事通信の西澤豊社長が会長を務める中央調査社が実施したものである。西澤氏は、少なくとも昨年の1月までは、新聞協会の監事だった。

この調査の結果を伝える新聞協会のウェブサイトをご覧いただきたい。調査概要の最終項目に「実査・レターヘッド:中央調査社」と、明記されている。これが実際に調査を行った組織である。

■http://www.pressnet.or.jp/adarc/data/rep/

つまりこの調査では、意図的な情報操作をおこなうことができる余地があったのだ。新聞を読む習慣がある人が83%を占めるという信じがたい数字が出たゆえんではないか。

かりにこの数字が、新聞の公称部数と同様にまったく実態を反映していないとした場合、情報操作の背景に、新聞に対する消費税の軽減税率の適用を勝ち取りたいという新聞経営社(以下、新聞人)の思惑があるのではないか。

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2014年03月25日 (火曜日)

小沢一郎氏の不正議決事件に見るメディアによる世論形成 最高裁事務総局の責任は自然消滅

【訂正】昨日(24日)付けのMEDIA KOKUSYOで、TBSのドキュメンタリー「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」が放送された日を、2010年9月14日と記載しましたが、正しくは2012年4月26日でした。TBSと読者の皆様にお詫びします。原因は、メモの取り間違いでした。

さて、「訂正」した上で、改めて「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」をどう解釈するかを、わたしなりに論評してみる。既にのべたように、わたしが問題としているのは、TBSが何者かによりガセネタを掴まされた可能性である。

と、いうのもTBSは検察審査会の審査員による証言を報じていながら、石川克子氏(市民オンブズマンいばらぎ事務局長)や志岐武彦氏(森ゆうこ裁判の被告)らが行った調査により、「審査員」そのものが架空だった疑惑が持ち上がっていたからだ。しかも、この疑惑は、憶測ではなく、裁判所、検察、会計監査院などに対する情報公開請求により入手した客観的な裏付け資料に基づいたものである。

小沢検審に検察審査会の審査員がいたのか、それとも審査員は架空であり、最高裁事務総局が小沢起訴を決め、審査員が起訴議決したかのように装ったのか?この問題は、特に小沢一郎氏の支持者の間で大きな話題になり、両者の説が激突して、裁判(森ゆうこ氏が志岐氏を提訴)にまでエスカレートした。

審査員がいたと主張する人々は、「不正な小沢起訴」の責任を捏造報告書を小沢検審に送った検察にあるという世論を形成しようとした。これに対して「不正な小沢起訴」の責任は、最高裁事務総局の謀略と主張する人々は、「検察諸悪の根源派」の言動を批判した。

「検察諸悪の根源派」が、不正な起訴議決の責任を検察に転嫁することで、結果的に最高裁を前代未聞のスキャンダルから救済していると考えた。彼らのマスコミ批判もこの点に重きがある。

※検察審査会は検察の管轄ではなく、最高裁事務総局の管轄

こうした対立軸が存在するとき、マスコミの影響力は大きい。

小沢裁判の無罪判決(東京地裁)が下る直前に、まず、週刊朝日が「小沢一郎を陥れた検察の『謀略』」と題する記事を掲載した。それからまもなく検察批判を展開している歌手の八木啓代氏に、何者かによりロシアのサーバーを使って発信元を隠し、検察による捏造報告書が送られた。八木氏はそれをウエブサイトで公開した。

結果、小沢氏の不正起訴の責任は、検察にあるとする世論が広がった。

さて、TBSが「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」を放映したのは、2012年4月26日である。この日はどんな日なのか?

改めて言うまでもなく、小沢氏に無罪判決が下った日である。TBSは無罪判決が下った日の夜に、小沢検審に審査員は実在したことを証言する人物(ただし肉声も画像もない)を登場させたのだ。いわば架空審査会の疑惑を否定するアリバイを示したのである。

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2014年03月24日 (月曜日)

TBSドキュメンタリー「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」、ガセネタの可能性を検証する 証言者の画像も肉声もなし

昔から後を絶たないのがテレビ番組のヤラセである。たとえば古い事件では、1992年にNHKスペシャル『奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン』にヤラセ場面(スタッフが高山病になった芝居等)があったことが問題になった。

次にリンクするTBS「ニュース23」の画像を見たとき、わたしはTSBのスタッフが報道内容の裏付けを取ったのかを疑った。ガセネタを掴まされた可能性を考えたのだ。なぜ、そんなふうに感じたか、わたしの意見を述べよう。

タイトルは、「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」。ところがこの事件では、もともと検察審査会の審査員が架空だった疑惑が、市民オンブズマンなどの調査を通じて浮上しているのだ。しかも、憶測ではなくて、審査員が不在だったことを証す客観的な裏付け資料が明らかになっているのである。「架空審査員」の疑惑である。

■追跡クロス「小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言」

裏付け資料は、いずれも情報公開請求により検察や裁判所、会計監査院などから入手したものである。審査員が架空だった疑惑が調査により指摘されているのに、あえてこのようなドキュメンタリーを放映したのだ。

この番組は、視聴者に対して、審査員が存在したという主張を広げる役割を果たしている。その裏付けとして審査員の証言をクローズアップしたのだ。少なくともわたしはそんなふうに解釈した。

ところが番組のタイトルとは裏腹に、審査員を自称する男の画像はどこにも現れない。男の声も収録されていない。ナレーションが読み上げられるだけで、ドキュメンタリーとして最低限必要な要素すらも欠落しているのだ。このようなものをあえて放送した意図そのものが不自然だ。

TBSといえば調査報道に定評がある。それゆえに世論誘導の「装置」としては申し分がない。

それだけに「追跡クロス『小沢一郎起訴議決 検察審査会の審査員が証言』」は検証を要する。

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2014年03月21日 (金曜日)

対読売裁判の検証、最高裁の担当調査官はだれなのか? 違憲訴訟の提起を

6年におよんだ対読売裁判(1年半の間に、読売による提訴が4件、黒薮による提訴が1件+弁護士懲戒請求)を通じて、わたしの内部で生じたジャーナリズムのテーマは多岐にわたる。裁判の舞台が最高裁に移ってから、とりわけ疑問に感じるようになったのは、裁判を担当する調査官の氏名が裁判の当事者にも公表されていないことである。

意外に知られていないが、最高裁では口頭弁論(法廷)はほとんど開かれない。大半の上告(憲法違反を理由とした異議申立)事件、あるいは上告受理申立(判例違反を理由とした異議申立)は、調査官と呼ばれる最高裁事務総局に直属する裁判官により処理される。

と、いうのも上告事件と上告受理申立事件の件数は、年間で優に4000件を超えるにもかかわらず最高裁判事の数が14名なので、物理的に処理しきれないからだ。そこで調査官の出番となるのだが、その調査官も50名に満たない。

たとえば次に示すのは、2011年度の調査官リストである。補佐人を含めても42人しかいない。

■2011年度の調査官リスト

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2014年03月20日 (木曜日)

5件の対読売裁判が終了 疑問が残る裁判の公平性と自由人権協会代表理事による改憲派・読売支援

最高裁は12日、わたしが2009年に提起した読売に対する損害賠償訴訟(原告・黒薮哲哉、被告・読売3社、江崎徹志)の上告を棄却した。これにより読売との間で起きた5件の係争は、すべておわった。残っている係争は、読売の代理人、喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求だけになった。

13日付けの読売新聞(ネットは12日付け)は、「黒薮氏の上告を棄却、読売側の勝訴が確定」 と、題する記事を掲載している。しかし、情報が乏しく著しく客観性を欠いた記事なので、補足しておきた。

この裁判は読売がわたしに対して、1年半あまりの間に起こした4件の訴訟(賠償請求額は約8000万円)が、「一連一体」の言論弾圧にあたるとして、約5500万円の損害賠償を求めたものである。

4件の裁判の勝敗は次の通りである。改めて言うまでもなく、原告はいずれも読売、あるいは読売の社員である。

1、著作権裁判の仮処分申立:読売の勝訴

2、著作権裁判:地裁、高裁、最高裁で黒薮が勝訴

3、名誉毀損裁判1:地裁、高裁は黒薮の勝訴 最高裁で読売が逆転勝訴

4、名誉毀損裁判2:地裁、高裁、最高裁で読売が勝訴

勝敗は、5勝5敗である。わたしが5連勝した後、5連敗に転じた。

わたしはこれら4件(実質的には、「1」と「2」は継続性があるので3件)の提訴が、スラップに該当するとして、読売に損害賠償を求めたのである。

それぞれの裁判の判決について、わたしは独自の見解をもっているが、詳細を語るには、スペースに限界があるので、関心があるかたは、拙著『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)を読んでほしい。

ただ、結果についてひとつだけコメントすれば、名誉毀損裁判ではわたしが敗訴したとはいえ、著作権裁判では勝訴しており、しかも、読売側のあるまじき行為が司法認定されたにもかかわらず、それに対する賠償が認められなかったのは、不当だと考えていることを付け加えておきたい。「読売側のあるまじき行為」については、次の記事を参考にしてほしい。

■読売・江崎法務室長による著作権裁判6周年 「反訴」は最高裁で、喜田村弁護士に対する懲戒請求は日弁連で継続

これが不当訴訟に該当しないとなれば、司法の秩序は崩壊する。

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2014年03月19日 (水曜日)

読売・YC久留米文化センター前店における部数内訳 47%が「虚偽」も、「押し紙」ゼロの司法判断

読売新聞の部数内訳を示す資料を紹介しよう。具体例として取り上げるのは、YC久留米文化センター前店のケースである。裁判の中で「押し紙」の有無が争点になったケースの検証である。(地位保全裁判であるにもかかわらず、なぜ「押し紙」の有無が争点になるのかは後述する。)

※YC=読売新聞販売店

「押し紙」の定義は、2つ存在する。?新聞経営者(以下、新聞人)が主張し、裁判所が全面的に認定している定義と、?一般の人々が社会通念を働かせてイメージしている定義の2つがある。そこであらかじめこの点について若干説明しておきたい。

?新聞人と裁判官の定義

新聞人と裁判官が採用してきた「押し紙」の定義とは、新聞社が販売店に対して押し売りした新聞部数のことである。したがって、「押し売り」の証拠がなければ、たとえ多量の新聞が店舗に余っていても、それは「押し紙」ではないという判断になる。

こうした論法を「へりくつ」と批判する声もあるが、裁判所はそれを認定してきた。広告主がうける被害という視点が欠落している結果にほかならない。

たとえば販売店に新聞を2000部搬入し、実際に配達していた部数が1200部とすれば、800部が過剰になる。しかし、新聞社がこの800部を「押し売り」をした事実を販売店が立証できなければ、「押し紙」とはみなされない。「押し紙」は1部も存在しないということになる。

新聞人は、この種の新聞を「残紙」、あるいは「積み紙」と呼んでいる。最近では、「予備紙」と言うようにもなっている。口が裂けても「押し紙」とは言わない。

次に示すのは、2009年に読売が提起した名誉毀損裁判(被告は、新潮社と黒薮)で、読売の宮本友丘副社長が、自社には1部の「押し紙」も存在しないと断言した証言である。

それゆえにわたしが読売の名誉を毀損したとする論理であるが、証言の中で宮本氏が言及している「押し紙」とは、「押し売り」の証拠がある新聞のことである。それゆえに「押し紙」は、過去にも現在も、1部たりとも存在しないと胸を張って断言したのである。

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2014年03月14日 (金曜日)

経済同友会の提言から読み解く、改憲=海外派兵の隠された目的 多国籍企業の防衛部隊としての自衛隊

安倍内閣が憲法9条の「改正」へと突き進んでいる中で、これに反対する勢力が繰り返し使っている表現のひとつに、「戦争が出来る国」がある。

この表現は、安倍内閣が憲法9条を「改正」して、日本を戦争が出来る国にしようとしているという文脈の中で使われている。

わたしは憲法9条の「改正」には反対だが、それとは別に、「戦争が出来る国」という表現は非常に分かりにくいと感じている。大半の人は、ピンとこない。と、いうのも社会通念からして、戦争を好む人はほとんどいないからだ。

なぜ、安倍内閣が憲法9条を改正して「戦争が出来る国」にしようとしているのか、説得力のある説明が不可欠だ。さもなければ、論理が飛躍していると思われる。

◇企業の海外進出と派兵の関係  

結論を先に言えば、安倍内閣が日本を「戦争が出来る国」にしたがっている背景には、ビジネスに国境がなくなった事情がある。それに加えて、世界的な規模で住民のパワーが台頭し、多国籍企業が進出先で営利を貪ることが、倫理的に許されなくなってきた事情がある。

こうした状況の下で、日本の多国籍企業を政変から防衛するために、安倍内閣は軍隊を派遣できる体制を構築する必要性に迫られているのだ。

しかも、多国籍企業の防衛を米国を中心とした同盟国で分担する体制を整えようというのが、オバマや安倍の目論見である。

わたしがこんなふうに自衛隊の「国際化」の背景を解釈するようになったのは、1980年代から90年代にかけてメキシコと中米諸国を取材した時期である。多国籍企業と軍隊の関係を直接観察する機会があったからだ。

たとえば中米のホンジュラス。ホンジュラスのカリブ海沿岸には米国の果実会社(Dole社など)の農園が広がっている。ここで収穫されたバナナやパイナップルは、港から船で米国へ運ばれる。豊かな農作物を前に、現地住民は飢えている。先進国の繁栄と、第3世界の悲劇が共存しているのだ。

これらの農園には、農園警備隊(Guardia de hacienda)と呼ばれる特別の部隊が配備されている。もちろん農園警備隊は、米軍の所属ではないが、ホンジュラスは米軍の対ニカラグア戦略のプラットホームであり、バックに米軍がいたことは間違いない。

拙著『バイクに乗ったコロンブス』(現代企画室)のあとがきで、海外派兵と多国籍企業の関係を概略しているので、紹介しておきたい。

90年代に入ってから、頻繁に耳にするようになった2つの言葉がある。企業の「海外進出」と、自衛隊の「海外派兵」である。この両者、国際化の中での日本の対応という観点を除いては、あたかもまったく関係がないかのような論理が大勢を占めているが、メキシコと中米の取材を通して、私はこの2つが密接に関連しているという確信を得た。

つまり、企業の海外進出にともなう治安部隊の派兵という性質が海外派兵にあること。あるいは企業の用心棒としての自衛隊の海外での活動の必要性が、海外派兵推進の根底にあるということ。それは、海外で政変が起きて企業が危機に直面したとき、軍事力を駆使して「治安の回復」をはかることを意味している。

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2014年03月13日 (木曜日)

中米エルサルバドルの大統領選、FMLNが僅差でリード、投票結果の再集計へ、ラテンアメリカで進む構造改革=新自由主義からの脱皮

9日に行われた中米エルサルバドルの大統領選挙の決戦投票は、選挙管理委員会が公式に勝者を宣言できない状態になっている。決戦投票は、左派のFMLN(ファラブンド・マルチ民族解放戦線)のサルバドル・サンチェス・セレン氏と、右派のノルマン・キハノ(元サンサルバドル市長)の間で行われた。

得票率は、サンチェス・セレン氏が50・11%、対立候補のノルマン・キハノ氏が49.89%の僅少差だった。このために選挙管理委員会は、開票結果を再検証している。

ただ、10日付けのNew York Timesは、サンチェス・セレン氏のリードが覆ることはないだろう、との選挙管理委員会の談話を伝えている。

FMLNは2009年の大統領選で初めて勝利したが、この時のマウリシオ・フネス大統領は、ジャーナリストでFMLNのメンバーではなかった。今回、出馬したセレン氏は、内戦(1980年?92年)を戦ったFMLNのメンバーである。

◇塗りかわる政治勢力図

かつてラテンアメリカといえば、コスタリカのような少数の例外を除くと、概して軍部の勢力が極めて強い地域だった。多国籍企業の利権を守るために、米軍による軍事介入が頻繁に繰り返されてきた地域である。

ところが1998年のベネズエラ革命を機に、次々と左派の政権が誕生するようになった。しかも、かつてのように米軍による軍事介入も、ほとんどできなくなっている。

政治手法も、旧来の社会主義国とは異なり、議会制民主主義を重視しながら、徐々に福祉国家をめざす柔軟路線を取っている。

次に示すのは、カリブ海諸国を除くラテンアメリカ(スペイン語圏・ポルトガル語圏)における大統領名と政治傾向である。赤文字の大統領が、左派、または中道左派を示す。

メキシコ:エンリケ・ペーニャ・ニエト

ホンジュラス:フアン・オルランド・エルナンデス

グアテマラ:オットー・ペレス・モリーナ

エルサルバドル:マウリシオ・フネス?

ニカラグア:ダニエル・オルテガ

コスタリカ:ラウラ・チンチージャ

パナマ:リカルド・マルティネリ

コロンビア:フアン・マヌエル・サントス

ベネズエラ:ニコラス・マドゥロ?

ペルー:オジャンタ・ウマラ

エクアドル:ラファエル・ コレア

チリ:ミチェル・バチェレ 

アルゼンチン:クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル 

ボリビア:フアン・エボ・モラレス・アイマ 

パラグアイ:オラシオ・マヌエル・カルテス・ハラ

ウルグアイ:ホセ・ムヒカ

ブラジル:ジルマ・ヴァナ・ルセフ

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2014年03月12日 (水曜日)

最高裁、野村総合研究所へ「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で約6400万円

裁判員制度で使われた出費を検証したところ、野村総合研究所が最高裁に対して、「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で、約6400万円の支払を求めていたことが分かった。請求書の日付は、2009年3月31日。裁判員制度がはじまるひと月まえである。

請求書には、最高裁の受領印があり、実際に請求金額が支払われた可能性が高い。請求書のPDFは次の通りである。

■野村総合研究所の請求書PDF

◇NTTデータに2億4300万円

MEDIA KOKUSYOで既報したように、(株)NTTデータに対しては、裁判員候補者名簿管理システムの開発と保守名目で2億4300万円を支出していた事実もある。(厳密には、NTTデータが請求)。

■請求書(裁判員候補者名簿管理システムの開発)

■請求書(裁判員候補者名簿管理システム開発のアプリケーション保守)?

不自然に高い金額である。相場は700万円ぐらいである。

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2014年03月11日 (火曜日)

読売・渡邉会長、「無読者層が(東京23区で)約5割に」  読売のABC部数が1ヶ月で24万部減、朝日と日経は「部数整理」へ

新聞社が発行する新聞部数を公式に示す数字は、日本ABC協会が毎月公表するABC部数である。これは発行(印刷)部数を表す数字であるから、実際に新聞販売店が配達している部数との間に差異があるが、一般的には実配部数として受け止められている。もちろん広告主も、ABC部数=実配部数という前提で、広告代理店と広告(紙面広告、折込チラシ)価格の交渉を行ってきた。

ところがこのところ(と、いっても数年前から)、ABC部数と実配部数の間にかなりの差異があることを、新聞経営者が認めざるを得ない状況が生まれている。

ABC部数と実配部数の差異は、「押し紙」(偽装部数)として、少なくとも1970年代から水面下の大問題になってきたが、新聞人はこの事実を認めようとはしなかった。たとえ両者に差異があることを認めても、それは販売店の責任で、「自分たちはあずかり知らぬこと」という態度を貫いてきた。

日本の裁判所も、このような新聞社の見解を全面的に合意してきた。公取委もほとんどこの問題で指導に乗り出したことはない。

そのために販売店主が、「押し紙」問題をいくら内部告発しても、新聞社は聞く耳を持たなかった。それはちょうど電車の中で携帯電話を耳にあて、声高に話しているならず者を注意しても、「わが権利」とばかりに、平然と喋り続ける光景に類似している。

が、ここに来て、読売の渡邉恒雄会長までが新聞があまり購読されていない実態を認めはじめている。「押し紙」の存在を全面否定しても、少なくとも新聞離れが広がっている事実は否定できなくなっているのだ。

◇読売・渡邉会長「無読者層が(東京23区で)約5割に」

渡邉恒雄氏は、今年の1月6日に、読売新聞東京本社で開かれた賀詞交換会で次のように発言している。業界紙の記事を引用してみよう。

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2014年03月10日 (月曜日)

毎日新聞・蛍ヶ池販売所、搬入された新聞の70%が「押し紙」、裏付け資料6年分を全面公開

新聞に対する軽減税率の導入をめぐり賛否両論が広がっている。わたし自身は、消費税率のアップそのものを中止するべきだという考えである。したがって、この問題は議論するに値しない。あえていえば適用に反対だ。理由としては、次の点があげられる。

新聞業界が公称部数を偽っている事実(「押し紙」問題)がある。

読売が、裁判により七つ森書館等に対して裁判攻勢をかけている事実がある。 言論機関として恥ずべき行為である。

新聞業界から政界へ政治献金を支出している。

紙の新聞が必需品ではなくなっている。

販売店に公的な支援をほどこすのであれば、むしろ公取委などに介入してもらい、「押し紙(新聞の偽装部数)」を全面禁止する方が、経営改善につながる。

◇「押し紙」の検証を避けて新聞の再生はありえない

新聞に対する軽減税率について考える大前提として、新聞社経営の実態を検証しなければならない。その際に、避けて通ることができない最大の問題が、「押し紙」問題である。公称部数を偽っている問題である。これをタブー視すると、新聞社経営の客観的な実態がみえなくなる。

わたしがこれまで取材した「押し紙」のケースで、最も多量の「押し紙」を負担していたのは、毎日新聞豊中販売所と蛍池販売所(いずれも大阪府)である。これら2店では、2007年6月の廃業時で、搬入される新聞の約70%が「押し紙」だった。信じがたい数字であるが、公式の記録が残っているので公開しよう。

これら2店を経営していたのは、高屋肇氏(故人)である。

高屋氏は、2007年に現役を退いた後、自店における「押し紙」の実態を公表した。それによると退職した2007年6月時点における「押し紙」(偽装部数)は、次のとおりだった。

【蛍ケ池】

搬入部数: 2320部

実配部数:  695部

「押し紙」: 1625部

【豊中販売所】

搬入部数: 1780部

実配部数:  453部

「押し紙」: 1327部

2001年から2007年まで(注:2002年は除く)の各月ごとの詳細データは、次の通りである。PDFで紹介しよう。

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2014年03月07日 (金曜日)

新聞業界が新聞に対する軽減税率求め大規模な政界工作、289の地方議会から安倍首相宛の意見書

新聞に対する軽減税率の適用を求めて、日本新聞販売協会(日販協)が、地方議会を巻き込んだ大掛かりな政界工作を進めていることがわかった。地方議会に「新聞への消費税の軽減税率適用を求める意見書」を採択させ、それを安倍首相に送付させているのだ。

地方議員との交渉で使う意見書の例文には、「内閣総理大臣 安倍晋三様」の記述まである。これまでに採択した地方議会は全国で289にのぼった。その一方で安倍首相や高市・自民党政調会長など、160人余の国会議員に対し政治献金を支出。

新聞協会が定めた新聞倫理綱領には、新聞は公正な言論を守るために「あらゆる勢力からの干渉を排するとともに、利用されないよう自戒しなければならない」。メディア対策に余念がない安倍政権のもと、政界との癒着を深めながら公正・中立な報道を貫けるのか。新聞が報道できない、軽減税率問題をめぐる自らの陳情活動の実態を追った。

【続きはMyNewsJapan】

【写真】読売新聞東京本社の新社屋

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2014年03月06日 (木曜日)

新聞協会が内閣府で「広告営業」 広告予算44億から65億円へ 財務省公共広告にみる「謎」の実態

業界紙の報道によると、日本新聞協会広告委員会の手塚泰彦委員長は、昨年の12月、内閣府に対して「政府広報における新聞広告ご活用のお願い」と題する文書を手渡したという。「これは新年度予算で政府広報予算が増額される見通しとなったことから、改めて新聞広告の特性を説明し、利用拡大を求めた」ものである。

2014年度の広報予算は65億円。昨年度の44億円から大幅に増えている。これを機に手塚委員長が、大口広告主に対して広告営業を行ったのである。

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2014年03月05日 (水曜日)

読売・江崎法務室長による著作権裁判6周年 「反訴」は最高裁で、喜田村弁護士に対する懲戒請求は日弁連で継続

読売新聞西部本社の江崎徹志法務室長が、わたしに対して著作権裁判を起こして6年が過ぎた。先月25日は、提訴6周年である。読売が提訴した目的が何だったのか、わたしは今も検証を続けている。

周知のように、この裁判は既にわたしの勝訴が確定している。地裁、高裁、最高裁とすべてわたしの勝訴だった。勝訴を受けて現在、わたしは2つの「戦後処理」を行っている。

まず第一は、江崎氏と読売に対する損害賠償請求訴訟である。しかし、残念ながら地裁、高裁ではわたしの訴えは認められず、現在は最高裁で裁判を継続している。読売は、やはり裁判にはめっぽう強い。

「戦後処理」の第二は、江崎氏の代理人を務めた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求の申し立てである。これは、現在、日弁連が審理している。

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2014年03月04日 (火曜日)

神田警察署が三角さんを釈放 『警察白書』に見る警察権力の拡大 スパイ活動の対象は・・・・

警視庁神田警察署に拘留されていた出版人・三角忠さんが、3月3日に釈放された。これにともない同日の午後3時から予定されていた勾留理由開示公判は中止となった。

三角さんは昨年の11月にJR水道橋駅で駅員とのトラブルに巻き込まれ、それを理由に3ヶ月後の先月20日、逮捕された。三角さんを支援している救援センターによると、24日以降は取り調べも行われなかった。

■参照:救援センターの抗議声明

この事件の背景には、安倍政権が導入を進めている構造改革=新自由主義がもたらしている貧困や格差社会に萌芽した社会運動を取り締まるための戦略があるようだ。警察権力の拡大である。秘密保護法の運用へ向けた流れと同じ脈絡の中で起きた事件といえる。

実際、構造改革=新自由主義の浸透と、国策としての警察権力の拡大を裏付ける客観的なデータも存在している。2013年度の『警察白書』である。同白書によると、2001年から2012年までの間に、都道府県警察の地方警察官の人員は、2万8266人も増えている。

現在の定員は、28万5867人

白書によると、これは自然増ではなくて、「増員を行ってきた」結果である。

2001年は、構造改革=新自由主義の「本丸」、小泉内閣がスタートした年である。?? しかし、日本の構造改革が本格的に始まったのは、それ以前の1996年、橋本内閣の成立時である。

ところが橋本首相は、大店法の廃止など、ドラスチックな規制緩和を進めた結果、国民の反発をかった。そのために橋本内閣に続く小渕内閣、森内閣の時代は、構造改革=新自由主義の導入にもたついた。むしろ民主党の方が、急進的な構造改革=新自由主義の導入を主張したのである。

そんな時、森喜朗首相に代わり、自民党の「救世主」として登場し、一気に構造改革=新自由主義を導入したのが小泉首相だった。

本来、構造改革=新自由主義の政策は、?規制緩和、?公共サービスの縮小など、「小さな政府」の実現、?法人税の減税と、消費税のアップ、?成長産業に対する公的支援の拡大、?大企業のブレインの育成、?「観念論」教育の徹底、?多国籍企業のための海外派兵体制の構築、などを柱としている。

これらの方針の背景には、国境なき時代に、非正規社員の拡大など国民を半ば奴隷化し、その一方で「治安」を維持し、大企業の国際競争力を高める狙いがある。

このうち?「小さな政府」を目指すのは、無駄な出費をなくすことで大企業の税負担を軽減することが目的である。同じ脈絡から、医療や福祉の切り捨ても行われる。省庁も再編してスリム化し、無駄な財政支出を抑制する。

公務員の人員削減の典型例として分かりやすいのは、国会議員の定数削減である。国民に対して、「国会議員みずから無駄を省いていきます」と意思表示することで、さらに公共機関全体のリストラを目論んでいるのだ。

もっとも、議員定数を減らしたり、参議院を廃止する程度では、財政支出の抑制も「焼け石に水」である。定数削減の本当の目的は、国民の参政権を縮小して、共産党と社民党を国会から排除することにある。

こうした流れからすれば、警察組織のリストラも必然的に断行されてもおかしくはないはずだが、実際は、警官の数に関しては、ここ10年の間に約3万人も増えているのだ。なぜ、増員が必要になるのか。

既に述べたように、構造改革=新自由主義の「前進」で拡大している社会矛盾が爆発するのを、警察の力で食い止める必要に迫られているからではないだろうか。

三角さんの逮捕も、このような脈絡から検証する必要がありそうだ。今後、出版人を狙った同じような「嫌がらせ」が繰り返される可能性が高い。

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2014年03月03日 (月曜日)

国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」は、本当に信頼できるのか?

フランスに本部がある国境なき記者団が、2014年度の「報道の自由度ランキング」を発表した。

1位から20位までのランキングの中に、欧州と北欧の17カ国がランクインしている。

主なランキングは次の通りである。

1位:フィンランド

2位:オランダ

3位:ノルウェー

4位:ルクセンブルグ

5位:アンドラ

1位から5位は、前年のランキングそのままである。

46位:アメリカ合衆国

59位:日本

125位:グアテマラ

■全ランキング

新聞の印刷部数やHPへのアクセス、それに視聴率など、客観的に数値で測定できるものにランキングをつけるのであれば、それなりに有意義な情報になるが、果たして「言論の自由度」といった抽象的で、個人の主観に依存する要素が多いものを序列化できるのだろうか?疑問が多い。

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2014年02月28日 (金曜日)

警視庁神田警察署が編集者を逮捕 警察「暴走」の背景に新自由主義の破綻

編集者の三角忠さんが、20日に逮捕された。三角さんは、三一書房を退職したあと、編集工房・朔を経営し、精力的に社会問題を世に問う本を出版してきた。

また、救援連絡センター運営委員やユニオン東京合同副委員長などを務め、 秘密保護法に反対する運動にも熱心に取り組んできた。

27日の午前中、わたしは出版関係の友人たちと、三角さんが拘留されている警視庁神田警察署を訪れた。三角さんへの面談を申し入れると、面談者を3人に、面談時間を20分に限定した上で許可が下りた。面談には、このような条件が付けられる。しかも、1日に1回の面談に限られている。

神田署の接見室は6畳ほどの無機質な空間だ。透明なガラス壁で中央部が仕切られ、ガラス隔の両サイドに、それぞれ椅子が3脚設置されている。接見室に窓はなく、冷たいLDEの光が壁に反射している。

三角さんは、中央の椅子に腰を下ろし、われわれを待っていた。後ろには、警官が椅子に腰掛け、長い脚をだらしなく前方に伸ばして「監視」している。

三角さんの顔には疲れが現れていたが、話してみると、言葉はごく普通だった。

刑事事件の取材は、かならず「被害者」と「被疑者」の双方から、事情を聞き取らなければならない。逮捕の経緯を知るために、わたしは三角さんが所属する救援連絡センターから資料をもらい、関係者から話を聞いた。

一方、「被害者」の取材については、「被害者」の勤務先であるJR東日本に取材を申し入れた。しかし、同社は、電話をたらいまわしにしたあげく、取材を断ってきた。唯一、社員が口にした主張は、「暴力に対しては毅然として対処します」というものだった。

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