2020年12月31日 (木曜日)

同時代を認識する困難、新聞・テレビの誤った歴史観

現代社会に生きている人々は、恐らくひとりの例外もなく、江戸時代が露骨な階級社会であった事実に異論を唱えないだろう。しかし、タイムマシンに乗り、200年前の世界へタイムスリップして、江戸の住民たちに対して、

「あなたはいま自分が残忍な階級社会に生きているという認識を持っていますか?」

と尋ねたら、だれも不可解な表情を浮かべるだろう。

だれ一人として、自分たちが武士に支配された理不尽な階級社会に生きているという認識は持っていないだろう。そのような意識が広範囲に存在すれば、江戸の社会制度は崩壊へ向かう。治安が維持できなくなる。

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2020年12月29日 (火曜日)

横浜副流煙裁判、反スラップ裁判、弁護士懲戒請求も必要

横浜副流煙裁判の被告・藤井将登さんが、来年早々に反スラップ裁判を起こす。原告には将登さんのほかに、妻の敦子さんも加わる。敦子さんが原告になるのは前訴の中で、非禁煙者であるにもかかわらず喫煙者として誹謗中傷されたからだ。

この事件は、将登さんが同じマンションの2階に住むAさん一家から、将登さんの副流煙が原因で、受動喫煙症に罹患したとして、4500万円の損害賠償を請求されたものである。しかし、第一審の横浜地裁も第二審の東京地裁も、Aさんらの請求を棄却した。第1審は、作田医師の医師法20条違反も認定した。

そこで藤井さん夫妻が反スラップ裁判を起こすことになった。しかし、この裁判は、Aさんらに対する反訴でも、Aさんの代理人・山田義雄弁護士親子に対する反訴ではない。Aさんら3人の診断書を作成した作田学・日本禁煙学会理事長を被告とした損害賠償裁判である。訴外者に対する反スラップ裁判なのだ。【続きはウェブマガジン】

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埼玉県秩父市で選挙公報の廃棄、2万6000世帯の地域で1万部水増し疑惑、問われる新聞協会の「教育の中に新聞を運動」(NIE)、過去に秩父市立大田中学校を指定校に

2019年4月7日に投票が行われた埼玉県議会選挙の選挙公報(新聞折り込みで配布)が、一部の地域で水増しされ、廃棄されていた疑惑が浮上した。

筆者ら取材チームが埼玉県秩父市における選挙公報の卸部数と、ABC部数(新聞の発行部数)を調査したところ、選挙公報の卸部数がABC部数を約1万部上回っていた。

詳細は次の通りである。

選挙公報の卸部数:24,000部(2019年4月)
ABC部数:14,969部(2020年4月)

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2020年12月23日 (水曜日)

楽天モバイル「広報部」、電磁波の安全性に関する質問に対するAIのような回答

読むたびにうんざりするのが企業の広報部が発行する文書である。企業が関係する事件を取材して記事化するとき、批判対象となる企業のコメントを求めるのがメディアの慣行になっており、それはそれで一応は理にかなっているので、わたしも批判対象になる企業の広報部を取材する。

すると、「質問を文書で提出してほしい」という決まり文句が返ってくる。そこで質問を送付する段取りとなる。

わたしは電磁波問題を取材している関係で、電話会社の広報部に質問することが多い。さすがに質問そのものを無視されることはあまりないが、回答を読むたびに、AIが作成した作文ではないかと違和感を感じる。担当者が自分の言葉で綴った回答は皆無に等しい。

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静岡県の広報紙『県民だより』、4万部水増し、各地で発覚する広報紙の「折り込み詐欺」

静岡県が県民の税金で制作して、新聞折込のかたちで配布している広報紙『県民だより』が、約4万部水増しされていることが分かった。

『県民だより』は月刊の定期刊行物で、静岡県は1回に付き約106万部を印刷している。

このうち新聞折込に割り当てられる枚数は、静岡県によると979,350部(2020年4月)である。これに対して、静岡県下における新聞の発行部数は、939,858部(2020年4月)である。

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2020年12月21日 (月曜日)

新聞業界から政界へ373万円の政治献金、菅義秀首相に10万円、山谷えりこ議員に30万円、消費税の軽減税率適用に対する「謝礼」の疑い

2020年11月に公表された2019年度の政治資金収支報告書で、日本新聞販売協会の政治連盟を通じて、新聞業界から政界へ373万円の政治献金が行われていることが分かった。内訳は、セミナー代として述べ24人に283万円が、寄附金として18人に90万円が割り当てられている。

このうちセミナー代の支払い先は、次の通りである。この中には、菅義秀首相への10万円の献金も含まれている。また、高市早苗議員に対して20万円が、山谷えりこ議員に対して30万円が贈られている。内訳は次の通りである。

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2020年12月19日 (土曜日)

多発する通信基地局の設置をめぐるトラブル、認識されはじめた5Gによる人体への影響、懸念される遺伝子毒性

電話会社が広範囲に通信基地局の設置を進めている状況の下で、電話会社と住民との間のトラブルが多発している。メディア黒書へも、この1週間だけで5件の相談があった。5Gの普及がはじまる前は、相談件数は月に数件だったが、このところ急増している。大半の係争は、楽天モバイルを相手にしたものである。

基地局の設置をめぐるトラブルが増えている現象を、肯定的に捉えれば、無線通信で使われる電磁波による人体影響が多くの人々に認識されはじめた証である。かつては電磁波の危険性とえば、変電所近辺や高圧電線の下の住宅に住む人々に癌や小児白血病が相対的に多いという疫学調査の結果を、一部の層が知っていた程度だったが、ここにきて5Gに使われる電磁波(マイクロ波とミリ波)による毒性について知る人が増えてきた。

これは裁判を起こしてでも解決しなければならない深刻な問題にほかならない。「予防原則」を理由にすれば訴訟の提起は可能だ。危険物に対する説明義務違反にも問えるのではないか。

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2020年12月18日 (金曜日)

福岡高裁で和解が成立、佐賀新聞の「押し紙」裁判、弁護団が声明を発表(全文を掲載)

佐賀新聞と元販売店主の間で争われていた「押し紙」裁判の控訴審で、和解が成立した。和解内容は公表されていない。

この裁判は、佐賀新聞の吉野ヶ里販売店の元店主・寺崎昭博さんが「押し紙」により損害を受けたとして、2016年に8186万円の損害賠償を求めたものである。第1審は、寺崎さんが勝訴した。佐賀地裁は、佐賀新聞社による「押し紙」が独禁法に違反すると認定し、同社に対して約1066万円の支払いを命じた。

これに対して原告・被告の双方が控訴した。第1審における寺崎さん側の請求額が高額だったことに加えて、控訴審では佐賀新聞社が和解を希望したことから推測すると、和解金額は高額になったと推測される。

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2020年12月16日 (水曜日)

朝霞市がKDDI基地局の土地賃借料を360円(月額)とした根拠、時系列ノート㉘

 埼玉県朝霞市の(市立)城山公園の敷地内に、KDDIが通信基地局を設置した問題の続報である。筆者は、この通信基地局が占める土地の賃借料が年間4300円(月々に約360円)であることを問題にしてきた。賃借料の相場が、年間で60万円から90万円程度であるからだ。

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2020年12月14日 (月曜日)

野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

筆者は、産経新聞「押し紙」裁判の判決(東京地裁、野村武範裁判長)を入手した。本稿では、判決内容を紹介しよう。また、判決文の全文を公開する。

既報したように、この裁判で東京地裁の野村裁判長は、「押し紙」による損害賠償を求めた原告(元販売店主)の請求を棄却した。筆者がこの判決を読んだ限りでは、野村裁判長が原告を敗訴させることを最初から決めていたことを伺わせる内容になっている。判決文の論理に極端な破綻がみうけられるからだ。

この倫理の破綻を捉えるためには、あらかじめ文書類における達意とは何かを理解しておかなければならない。それは単純な原理だ。

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2020年12月13日 (日曜日)

横浜副流煙裁判を支援する会のウェブサイトがスタート、裁判をジャーナリズムの土俵に乗せる

横浜副流煙裁判の元被告・藤井将登さんと妻の敦子さんを支援する会(代表・ 石岡淑道)のウエブサイトが完成した。次のURLでアクセスできる。

https://atsukofujii.com/

事件は藤井さんの勝訴が確定したのを受けて次のステージへ進む。年明けにも、藤井さんは、作田学医師を被告とする損害賠償裁判を起こす。

【事件の概要】
この裁判は、藤井さんが自室の音楽室(密封された防音構造)で吸っていた1日に2,3本程度の煙草の副流煙が、2階に住むAさん一家の健康を害したとして、Aさん一家が4500万円を請求した事件である。Aさん一家は、藤井さんの副流煙によって「受動喫煙症」、化学物質過敏症、癌に罹患(りかん)したと主張した。

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2020年12月12日 (土曜日)

故意に「差別者」をつくる愚、表現の自由をめぐる部落解放同盟との論争

(本稿は、『紙の爆弾』(12月号)からの転載である。)

言論・表現にかかわる事件の行方は、文筆を仕事とする者にとっては職業の生死にかかわる。

菅義偉内閣が誕生してのち、言論と差別にかかわる2つの事件が浮上した。ひとつは首相が、日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した件である。もうひとつは、自民党の杉田水脈議員が、「女性はいくらでもウソをつける」と発言したとされる件である。杉田議員は「差別者」として、Change.org上で13万人から糾弾され、野党からは辞職要求を突きつけられた。後述するように、この事件はなぜか自民党サイドが報道機関にリークして、発覚させた経緯がある。

ここ数年、言論や表現に対する視線が厳しくなっている。国会で閣僚が言葉を滑らせて、野党から謝罪を要求される事件が続発し、もはや予定原稿なしに言葉を発することが議員生命を危うくしかねない状況が生まれている。国会ではヘイトスピーチ規制法が成立し、川崎市では、それに連動して差別的な表現に刑事罰を課す条例が全会一致で可決した。

こうした時代に、今度はルポライター・昼間たかし氏が『紙の爆弾』誌上で使った「士農工商ルポライター家業」という表現が、論争のリングに上がろうとしている。

部落解放同盟は、これまでも「士農工商」の後に職業をつけたレトリック(修飾方法)に対して繰り返し苦言を呈してきた。 たとえば筒井康隆氏による「士農工商SF屋」という表現である。阿久悠糾による「士農工商(注:広告)代理店」という表現である。さらに『差別用語を見直す』(江上茂著、花伝社)によると、芸能人、印刷屋、予備校生、アナウンサー、AB型、お笑い屋、百貨店、研究所、編集者などの例があるという。

部落解放同盟は、このレトリックが差別を助長するという考えに立って『紙の爆弾』に釈明を求めてきたのである。

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滋賀県の広報紙『滋賀プラスワン』、7万部を水増し、新聞発行部数・39万部に対して広報紙・46万部を提供、背景に「押し紙」

新聞に折り込まれて配布される地方自治体の広報紙が水増されているケースが次々と発覚している。

滋賀県が発行する広報紙『滋賀プラスワン』を筆者が調査したところ、滋賀県全域のABC部数(新聞の発行部数)が392,586部(4月の部数)しかないのに、滋賀県当局が464,000部の『滋賀プラスワン』(最新号)を提供していることが分かった。71,414部が水増しになっている。

配達中に折込媒体が破損する「事故」に備えて、通常、卸部数の2%程度は予備紙として認められているが、それに相当する部数は9280部しかない。この部数を差し引くとしても、大幅な水増し状態になっている。

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22万部、埼玉県の広報紙水増し問題、広告代理店を訪問、「折込詐欺」の2つの類型

新聞に折り込むかたちで配布されている埼玉県の広報紙『彩の国だより』が、約22万部水増しされている問題を取材するために、わたしは12月9日、午後、さいたま市にある広告代理店、埼玉県折込広告事業協同組合を訪ねた。JR高崎線の上尾駅で電車を降り、道路地図を頼りに広告代理店へ向かった。

このあたりは東京のベッドタウンで、大小の積み木を無秩序宇に散りばめたような民家の群れが延々と広がっている。もともと農業地帯だったらしく、入り組んだ旧道や農道をそのままアスファルトで舗装し、それに沿って住宅を並べたような印象がある。緑とコンクリートが点在する近代的な生活空間というよりも、衣食住だけを目的とした古びた簡易宿泊所の連なりを連想させる。

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大阪府の広報紙『府政だより』を毎日新聞社系の印刷会社が印刷、請負先の代理店は福岡市のホープオフセット共同企業体、新聞折込部数については情報公開請求中

大阪府の広報紙『府政だより』を毎日新聞社系の印刷会社である(株)高速オフセットが請け負っていることが分かった。高速オフセットは、1986年に「毎日新聞社とその関連会社の出資により設立された」。■出典

社長の橋本伸一氏は、毎日グループホールディングスの取締役でもある。■出典
地方自治体の広報紙の印刷が、新聞社系企業の収入源のひとつになっている実態が明らかになった。

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埼玉県の広報紙『彩の国だより』、22万部水増し、税金の無駄遣い?住民監査請求へ

税金で制作されている埼玉県の広報紙『彩の国だより』が、配布されることなく約22万部も捨てられている疑惑が浮上した。疑惑の裏付けは次の通りである。

12月1日、筆者は埼玉県庁に対して、『彩の国だより』に関する問い合わせを行った。その結果、次の事実が判明した。

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2020年12月07日 (月曜日)

『紙の爆弾』最新号、喫煙を理由とした高額請求の横行、「日本禁煙学会が関与した巨額訴訟の行方」

本日(7日)発売の『紙の爆弾』が、「日本禁煙学会が関与した巨額訴訟の行方」と題するルポを掲載している。筆者は、黒薮である。

既報してきたように、この事件は自宅の密閉した部屋で吸った1日に2,3本の煙草が、隣人(同じマンションの2階)の健康を害したかどうかが争われた。原告家族は、隣人の藤井将登さんの副流煙が原因で、「受動喫煙症」(化学物質過敏症の一種)に罹患したとして4500万円の「お金」を請求したが、横浜地裁裁は請求を棄却した。東京高裁も、一審被告の控訴を棄却した。

ちなみに原告のひとりに約25年の喫煙歴があったことが、審理の中で判明した。

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【全文公開】「ストップ詐欺被害」、新聞(「押し紙」)と一緒に廃棄される地方自治体の公共広告、税金の無駄遣い

住民が負担する税金で制作された地方自治体の広報紙(新聞折込で配布)が水増しされているケースが次々と発覚している。先週の「メディア黒書」では、千葉県流山市と船橋市のケースを取り上げた。【全文を公開】

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前最高裁事務総局長の今崎幸彦氏と元読売新聞論説委員の桝井成夫氏、新聞人と裁判官の関係はどうあるべきなのか?

10年ほど前から注視しているテーマのひとつに、新聞社と裁判所の関係がある。両者は、特別な関係にあるのか、それとも独立した関係にあるのかというテーマである。かりに事件や人を裁くただならぬ特権を付与された裁判官が、特定の組織や個人と特別な関係を持った場合、人脈が幅を利かせている日本社会では、裁判の公平性が保てなくなる可能性が高い。それゆえにわたしは、これを重大なテーマと考えたのである。

2009年2月、読売新聞がわたしを名誉毀損で提訴した。メディア黒書の記事で社会的な評価を低下させられたという理由で2200万円の「金銭」を請求してきたのだ。読売の代理人として登場したのは、喜田村洋一・自由人権協会理事だった。

◆◆
この裁判で筆者と弁護団は、第1審のさいたま地裁、第2審の東京高裁で勝訴した。いずれの裁判所も読売の請求を棄却したのである。しかし、読売は最高裁に上告(厳密には、判例を根拠とした上告受理申立て)した。【続きはウエブマガジン】

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千葉県船橋市でも広報紙の水増し疑惑、広報紙の販売店向け卸部数がABC部数を1万3600部上回る、最大で約3万5000部の水増し

地方自治体の広報紙を広告代理店が水増ししている問題が次々と浮上している。千葉県の流山市でこの問題が発覚したのを機に、筆者は、同県の船橋市を調査した。過去に同市の販売店主から告発を受けたことがあるからだ。

調査の結果、これら2つの自治体でも、広報紙が水増しされている疑惑が判明した。改めて言うまでもなく、水増しの原因は残紙(広義の「押し紙」)である。新聞社のビジネスモデルそのものにある。

参考記事「販売店が読売新聞社を提訴、独禁法の特殊指定について」 : 企業法務ナビ (corporate-legal.jp)

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2020年12月03日 (木曜日)

「電磁波からいのちを守る全国ネット」が楽天モバイルに公開質問状を送付、「マイクロ波に遺伝子毒性がないと考える理由は?」

「電磁波からいのちを守る全国ネット」の運営委員会は、2日、楽天モバイルに対して公開質問状を送付した。

筆者も運営委員を務めている「全国ネット」は、5Gの普及に反対する住民運動や個人を支援している。だれもが直面しかねな重大問題であるからだ。

実際、このところ通信基地局の設置をめぐるトラブルが急増している。「全国ネット」に対して、ほとんど毎日のように、全国から相談が寄せられている。

今回、楽天モバイルに対して公開質問状を送付した理由は、特に楽天に対する苦情が多いからだ。苦情の8割を占める。次がKDDI。

質問内容は次の通りである。(青文字は、筆者による解説) (PDFはここから)

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千葉県流山市で広報紙の大幅な水増し、約3万7000の新聞発行部数に対して約5万5000部を供給

千葉県流山市が発行する『広報ながれやま』が大幅に水増しされていることが分かった。同市の市議からの情報提供に基づいて、筆者が調査したところ、新聞の発行部数が全市で36、836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されていることが分かった。約2万部が水増し状態になっている。

かりに販売店に残紙があれば、水増し部数はさらに増える。「押し紙」が1部たりとも存在しなくても、大幅な水増し状態になっている。ただ、同市によると販売店がポスティングしている部数が約2000部ある。それを差し置いても、大幅な水増しになっている。

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2020年12月01日 (火曜日)

【臨時ニュース】東京地裁が元店主の請求を棄却、産経新聞「押し紙」裁判

【臨時ニュース】産経新聞「押し紙」で東京地裁は、12月1日、原告の請求を棄却する判決を下した。詳細については、後日報告する。

筆者個人の感想を言えば大きな敗因のひとつは、訴訟をジャーナリズムの土俵に乗せ切れなかったことである。メディア企業を被告とする権力構造の崩壊につながりかねない裁判では、報道により世論を動かさなくては勝ち目がないことがはっきりした。今回、それを痛感した。

原告の主張に一貫した論理と正義があるかどうか以前の問題として、筆者が楽観視していたために報道が消極的になった。今後、「押し紙」報道を強化していきたい。

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2020年11月30日 (月曜日)

明日、12月1日に産経新聞「押し紙」裁判の判決、2つの注目点

 

東京地裁は、明日(12月1日)に、産経新聞を被告とする「押し紙」裁判の判決を言い渡す。判決の日時、場所は次の通りである。

日時:12月1日 13:10分

場所:東京地裁806号法廷

メディア黒書は、判決結果を夕方に速報する。

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2020年11月29日 (日曜日)

読売は年間で59万部減、朝日は42万部減、2020年10月度のABC部数、「押し紙」についての公取委の見解を紹介、

最新のABC部数(2020年10月度)が明らかになった。それによると前年同月に比べて、朝日新聞は約42万部の減部数、毎日新聞は約26万部の減部数、読売新聞は約59万部の減部数となった。中央紙5紙の前年同月差は、総計で約163万部の減部数となった。

インターネットでニュースを視聴する層と新聞でニュースを読む層の乖離は、ほぼ完了している可能性が高く、ここ数年のABC部数の減部数分は、新聞社と販売店が残紙を排除した結果とみるのが妥当だ。実配部数も減っているが、それよりも政策的に残紙を減らしたことが大幅な部数減につながった可能性高い。

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2020年11月28日 (土曜日)

楽天の基地局設置をめぐるトラブル相談が急増

楽天による基地局設置をめぐって、「電磁波からいのちを守る全国ネット」への相談が急増している。この1週間だけで新規相談が3件あった。

通信基地局が一旦設置されると、基地局周辺に住む住民は、半永久的にマイクロ波に被曝することになる。マンションの最上階に基地局が設置された場合、天井を隔てた基地局直下の住民は、低周波の影響も受けることにもなりかねない。

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2020年11月27日 (金曜日)

公正取引委員会を電話取材、「押し紙」問題を調査しない理由は?、「日本経済新聞の販売店主が本社ビル内で自殺した事件を知っているか?」、ユーチューブで音声を公開

公正取引委員会を電話取材した。先方の担当者がわたしに対して、折り返しの確認電話で、身元を調べた上で実施した取材なので、公正取引委員会の公式見解といえる。主要な質問は、次の通りである(ユーチューブの拡散は自由。音声と内容の加工は禁止。)

公取委の命令系統はどうなっているのか?

公取委が「押し紙」問題に対処しない理由はなにか?

公取委は、過去に「押し紙」の調査をしたことがあるか?

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新潟日報の新聞の「学割」問題、新潟日報と公取委の見解、「新聞特殊指定に抵触しない」、新聞協会は見解を回避、再販制度は実質的に崩壊②

新潟日報が実施している学生を対象とした新聞の割引販売は、独禁法の新聞特殊指定に違反しているのか?この問題について、新潟日報、日本新聞協会、公正取引委員会の見解を得たので紹介する。

◆◆
25日付けのメディア黒書では、わたしは自分の見解を表明した。明らかに新聞特殊指定に違反しているというのがわたしの見解だ。念のために新聞特殊指定の該当箇所を引用しておこう。

1 日刊新聞(以下「新聞」という。)の発行を業とする者(以下「発行業者」という。)が、直接であると間接であるとを問わず、地域又は相手方により、異なる定価を付し、又は定価を割り引いて新聞を販売すること。ただし、学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであることその他正当かつ合理的な理由をもってするこれらの行為については、この限りでない。

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新潟日報が公然と新聞の割引販売、購読料3400円が2000円に、独禁法の新聞特殊指定に抵触の可能性①

新潟日報が独禁法の新聞特殊指定で禁止されている新聞の割引販売を公然と行っていることが判明した。購読料3400円の「朝刊単体」を2000円に、4300円の「朝夕刊のセット版」を2500円に割り引きする「学割」制度を導入して、運用している。

しかし、新聞特殊指定は、次のように新聞の割引販売を厳密に禁止している。

1 日刊新聞(以下「新聞」という。)の発行を業とする者(以下「発行業者」という。)が、直接であると間接であるとを問わず、地域又は相手方により、異なる定価を付し、又は定価を割り引いて新聞を販売すること。ただし、学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであることその他正当かつ合理的な理由をもってするこれらの行為については、この限りでない。

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2020年11月23日 (月曜日)

「押し紙」にメスが入らない理由、権力構造の歯車としての新聞・テレビ

「押し紙」問題の取材をはじめて23年。しかし、取材歴が長いことを逆説的にみると、23年も告発を続けて、ほとんど何の成果も得られていないことは大問題だ。新聞関係者は、「押し紙」を指摘されようが、折込チラシを水増しを指摘されようが、違法な新聞販売を指摘されようが、外国籍の配達員を酷使しようが、なんのお咎めも受けない。

佐賀地裁の「押し紙」裁判で、裁判所が「押し紙」政策を認定しても、新聞業界は相変わらず「押し紙」を続けている。この厚顔ぶりには恐れいる。こうした状況が延々と続いている背景に、新聞社・テレビ局が権力構造の歯車に組み込まれている事情がある。

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渡邉恒雄氏の死に際して、次から次へと追悼記事が掲載されている。ここまで夥しく提灯記事が現れるとさすがに吐き気...

西日本新聞福岡地裁押し紙敗訴判決のお知らせ―モラル崩壊の元凶 ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月25日 昨日(24...

西日本新聞押し紙訴訟判決とオスプレイ搭乗記事の掲載について―モ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・ 江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月20日 11月28日(木...

関東地区新聞労連役員会における意見発表について -モラル崩壊の...

福岡・佐賀押し紙弁護団・ 江 上 武 幸 (2024年「令和6年」12月19日) 去る11月29日(金...

動画で見る「押し紙」回収の現場

「押し紙」の回収現場を撮影した画像を紹介しよう。新聞社は、回収されている新聞は、「押し紙」ではないと主張して...

「押し紙」関連資料の閲覧制限、問われる弁護士の職業倫理、黒塗り...

「押し紙」裁判を取材するなかで、わたしは裁判書面に目を通す機会に接してきた。弁護士から直接書面を入手したり、...

「香害、すなわち化学物質過敏症」の誤り、1月に2つの判決、横浜...

別稿・事件の概要 来年2025年の1月に、横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が下される。詳細は次...

国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発...

インターネットのポータルサイトにニュースが溢れている。衆院選挙後の政界の動きから大谷翔平選手の活躍まで話題が...

モラル崩壊の元凶 ―押し紙― 西日本新聞押し紙訴訟判決期日決...

2024年10月15 (文責)福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士江上武幸 第1 はじめに  西日本新聞...

訴状を公開、毎日新聞の「押し紙」裁判、約1億2000万円を請求...

福岡・佐賀押し紙弁護団は、10月1日、毎日新聞の元店主Aさんが大阪地裁へ提起した「押し紙」裁判の訴状(9月2...

「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、...

読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」とい...

モラル崩壊の元凶-押し紙- 毎日新聞押し紙裁判提訴のお知らせ

福岡・佐賀押し紙弁護団  弁護士 江上武幸(文責) 2024年(令和6年)9月20日 兵庫県で毎日新聞販...

「香害」をめぐる診断と議論、メディアに氾濫する誇張された被害の...

柔軟剤や煙草など、広義の「香害」をどう診断するかをめぐる議論が沸騰している。日本では、「香害」による体の不調...

―モラル崩壊の元凶、「押し紙」― 西日本新聞・押し紙訴訟の報...

福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責) 去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさ...

西日本新聞「押し紙」裁判、証人尋問で残紙部数を把握した機密資料...

長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡...

7月2日に尋問、西日本新聞の「押し紙」裁判、福岡地裁で、「4・...

西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、次のスケジュールで実施される。 場所;福岡地裁 903...

国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサ...

『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している...