1. 「押し紙」制度と折込媒体の水増し、新聞社の内部資料が示す虚像

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2025年09月02日 (火曜日)

「押し紙」制度と折込媒体の水増し、新聞社の内部資料が示す虚像

「押し紙」裁判における発行本社の主張は、もはやパターン化している。それはおおむね次のような内容である。新聞社は、販売店が注文した部数に応じて新聞を搬入しているにすぎず、販売店が実際に配達している部数は知らない。したがって残紙は押し売りの結果ではないので、損害賠償に応じる義務はない、というのである。

しかし、新聞社は販売店の実配部数を把握している。実際、最近の「押し紙」裁判では、厳密な意味での「押し紙」(押し売りが立証できる新聞部数)は存在しないとされる一方で、大量の新聞が残紙になっている事実は認定されるケースが多い。さらに、新聞社の中には、販売店が配達している実配部数を把握していることを示す内部資料を保有しているところもある。

たとえば、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、西日本新聞などがその例である。

【参考記事】朝日新聞の偽装部数は200万部(28%)、実売は10年で3割減って510万部に――2014年度、社内資料より判明

【参考記事】国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に

【シリーズ産経の残紙1】「反共メディア」の裏面、産経新聞の内部資料を入手、大阪府の広域における「押し紙」の実態を暴露、残紙率は28%

【参考記事】「押し紙」の決定的証拠、西日本新聞の内部資料を公開、佐賀県下の販売店ごとの「押し紙」部数が判明

◆「押し紙」の何が問題なのか?

新聞社は、日本ABC協会や広告代理店に自社の部数を報告している。その部数の中には「押し紙」も含まれている。その結果、折込媒体の配布部数が水増し状態になっている。

特に選挙公報などの公共の折込媒体は、ABC部数に準じて配布枚数を決める商慣行がある。そのため、新聞社が販売店の実配部数を知りながら水増しした部数を関係機関に報告する行為は、詐欺に該当する可能性が高い。

それにもかかわらず、誰もこの商慣行に苦言を呈さない。公的機関も黙認している。その黙認によって「押し紙」制度は維持され、新聞社が莫大な利益を得る構図が温存されているのである。

これでは新聞社として公権力に対峙できるはずがない。