新聞販売店に選挙候補者のポスター、店主が選挙カーの運転手に、販売現場から内部告発が相次ぐ
渡邉恒雄氏が安倍首相と会食を繰り返している実態に象徴されるように、新聞関係者と政界の癒着は、もはやジャーナリズム企業の資質を問われるほど進んでいる。が、癒着の現象は、新聞発行本社サイドだけではなく、新聞販売の世界にも見られる。それが「内部告発」のかたちで外部へもれるようになった。
販売店の業界団体・日販協(厳密には日販協政治連盟)から、高市早苗議員ら自民党議員に政治献金が行われている問題は繰り返し報じてきたが、選挙運動に販売店が組織的に動員させられているとの告発が、メディア黒書にあった。
◇販売店が選挙応援
この販売店は、廃業を機として内情が外部へもれたようだ。情報提供者によると、この店は元々は安本浩二(仮名)氏が経営していたが、安本氏が保守系の地方議員になったのを機に、経営権を譲渡した。ところが新店主は販売店経営の素人だった。そこで安本氏が自らの人脈を使い、有能な人材を販売店へ送り込んだという。その結果、販売店が自民党の応援部隊本部のように変質してしまった。
「選挙になると立候補者のポスターを、販売店の壁に何枚も貼っていました。そして、国政、県政、市政に関わらず、従業員たちは選挙活動に動員されていました。宣伝カーの運転手は、店長の仕事でした。新聞に入るチラシは、○○党のみです。何度もチラシを折り込みます。しかも、無料です。その後、安本氏も店主も亡くなりましたが、○○党の選挙活動を支援していました。東京新聞も扱っていましたが、これでは本来売れるはずの東京新聞もさっぱり売れなかったようです」
販売店が○○党の支部のようになっていたというのだ。
ちなみにこの店では、廃業に際しても、トラブルが発生したという。
◇給料の未払いも
「この新聞店で働いている従業員のうち、ひとりを除いて廃業を知らされていませんでした。仮引継ぎの前日になって、所長に詰め寄った者がいたのですが、彼に対しても「廃業はありえない」と嘘をついていたようです。それでも次の日に廃業が明るみに出たわけですが、社員のショックは大きかったようです。未払の給料を回収できるかどうかも不明な上に、将来に対する不安もあるでしょう。使い捨ての典型です」
従業員の待遇も劣悪だったという。
「給料が払えなくなり、専業たちはバイトを始めました。毎晩パチスロをしていた店長の中田(仮名)は、パチンコ屋の店員になりました。菊池(仮名)は家のローンがあるため複数のバイトをしています。千田(仮名)は、チラシのポスティングです。星野(仮名)はスナックでのバイトです」
新聞販売の現場は、すでに秩序が崩壊しはじめている。
いよいよ「押し紙」型のビジネスモデルの責任を問われる時が近づいている。