2016年01月08日 (金曜日)
新聞ジャーナリズムを骨抜きにする国策-軽減税率問題、新聞社経営の「弱点」に付け込みメディアコントロール
新聞に対する消費税軽減税率の適用問題は、意外に盲点になっているが、政府による世論誘導の分かりやすい例である。表向きは消費者保護の観点から、軽減税率の適用を検討しているかのように見えるが、新聞人に軽減税率という特権を付与するこで恩を売り、新聞を世論誘導の道具として利用しようという意図が露骨だ。
◇飲み食いだけではない
安倍内閣の政策は、大別すると①新自由主義=構造改革と②軍事大国化の2本柱である。前者を象徴するのはTPPで、後者を象徴するのは特定秘密保護法と安保関連法、さらに憲法改正である。安倍内閣にとっては、これら2つの課題をいかに押し進めていくかが手腕のみせどころである。それは財界の要望でもある。
改めて言うまでもなく、政策を宣伝して国民の理解を得るためには、なるべく大きなメディアを味方につけなければならない。昨年、経済誌『ZAITEN』が、安倍首相と会食を重ねているマスコミ関係者のリストを公開したが、政府の戦略は新聞人らの接待だけにとどまらない。
■参考記事:安倍首相の応援団と化した日本のマスコミ、『ZAITEN』が首相とメシ食う人々を紹介
政府が新聞社を味方につけるために取引材料にしている最大のものは、新聞社経営を安定させるための諸政策である。それは新聞に対する軽減税率の適用にほかならない。厳密に言えば、再販制度もこの種の政策のひとつである。
◇消費税5%への軽減を要求
新聞に対する軽減税率の適用問題がどのように議論されてきたかを新聞・テレビは報じなかったので、多くの人々は、昨年の12月になって急遽適用が決まったかのような印象を持っているが、実はこの問題は、かなり古くから検討項目になってきた。しかも、新聞業界は、8%の維持ではなく、5%への引き下げを要求してきたのである。
安倍内閣は、この問題をペンディングにしながら、その一方で、新自由主義と軍事大国化を進めてきたのである。この間、政府を敵視することができない新聞人らは、基本的に政府の方針を後押ししてきた。もちろん、地方紙を中心に反安倍内閣の論調を取った社もあるが、その姿勢を一貫して維持することはなかった。新聞社の生命をかけて戦うことはなかった。
消費税問題や再販制度問題など新聞社経営の決定的な「弱点」を突かれるのを警戒したのではないだろうか?
◇政界と新聞業界の癒着
新聞販売店の同業組合である日販協(日本新聞販売協会)が発行する『日販協月報』には、はからずも政治家や官僚が新聞業界とどのようにかかわってきたかが、記録されている。結論を先に言えば、それは癒着である。
昨年7月に開かれた日販協の総会には、次の政治家が来賓として出席して、軽減税率問題をはじめ新聞社経営にかかわるテーマに言及している。
丹羽雄哉(自民党・元読売新聞記者)
高市早苗(自民党)
漆原良夫(公明党)
中川雅治(自民党)
柴山昌彦(自民党)
薗浦健太郎(自民党)
山谷えり子(自民党)祝電
北村経夫(自民党)代理
中川俊直(自民党・元日経新聞記者の息子)代理
総会における各人の発言は次の通りである。