1. 偽装部数(押し紙)も消費税の課税対象 新聞協会が新聞に軽減税率の適用を求める本当の理由

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2013年01月17日 (木曜日)

偽装部数(押し紙)も消費税の課税対象 新聞協会が新聞に軽減税率の適用を求める本当の理由

消費税の軽減税率の対象商品に新聞を加えるべきか否かの議論が活発化している。軽減税率というのは、特定の商品に対して消費税率を軽減する際の税率を意味している。これまで生鮮食料品などの生活必需品のほか、新聞が対象候補にあがっている。

日本新聞協会は、新聞に対する軽減税率の導入を求めて、次のような声明を発表している。

 新聞は、国の内外で日々起きる広範なニュースや情報を正確に報道し、多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与しています。 ?  民主主義の主役は国民です。その国民が正しい判断を下すには、政治や経済、社会など、さまざまな分野の情報を手軽に入手できる環境が重要です。欧州各国では、民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞、書籍、雑誌にゼロ税率や軽減税率を適用し、消費者が知識を得る負担を軽くしています。「知識には課税せず」「新聞には最低の税率を適用すべし」という認識は、欧米諸国でほぼ共通しています。

?  また、近年、いわゆる文字離れ、活字離れによってリテラシー(読み書き能力、教養や常識)の低下が問題となっています。国や社会に対する国民の関心の低下が懸念される状況です。国民のリテラシーが衰えていくことは、国の文化政策としても好ましいことではありません。知識への課税強化は確実に「国のちから」(文化力)の低下をもたらし、わが国の国際競争力を衰退させる恐れがあります。

?  先に新聞協会が実施した調査では、8割を超える国民が軽減税率の導入を求め、そのうち4分の3が新聞や書籍にも軽減税率を適用するよう望んでいます。戸別配達制度により、わが国の新聞普及率は世界でもまれな高い水準にあります。今後も国民がより少ない負担で、全国どこでも多様な新聞を容易に購読できる環境を維持していくことは、民主主義と文化の健全な発展に不可欠です。

?  新聞協会は新聞に軽減税率を適用するよう求めます。あわせて、国民に知識、教養を普及する役割を果たしている書籍、雑誌、電子媒体についても軽減税率を適用するのが望ましいと考えております。

この問題を考える際に、まず、考慮しなければならないのは、偽装部数(「押し紙」)の問題である。意外に見落としがちな視点は、偽装部数も消費税の課税対象になるという点である。その額がどの程度になるのかは、正確なシミュレーションが必要なので、この場では避けるが、偽装率(「押し紙」率)を低く見積もって全体の2割としても、莫大な金額になる。(実際には、偽装率が4割、5割の社もある)。

従って偽装部数を排除すれば、軽減税率を適用する必要はない。少なくとも日本新聞協会は、偽装部数の実態調査をして、偽装部数を排除すべきだろう。 「そんなものは1部も存在しない」などと主張すべき時ではない。

◇副次的な第2の大問題??

偽装部数が存在するので、これに消費税を課せられると、新聞業界は大変な打撃を受ける。このような状況のもとで、副次的な第2の大問題が生じる。

それは新聞が安倍内閣を批判できなくなる可能性が極めて高いということである。批判できないどころか、安倍内閣が進めようとしている構造改革と軍事大国化への道を、メディアが支援することにもなりかねない。

事実、先日に読売新聞の紙面にリチャード・リー・アーミテージが登場して、日本は米国に追随すべきだと言わんばかりの主張を展開している。

実は、新聞が公権力に偽装部数の「汚点」を握られて、政府の前にひれ伏した歴史は過去にもある。再販撤廃問題が最初に浮上した1990年代の後半である。再販制度は堅持されたが、当時の自民党新聞販売懇話会の会長・小渕恵三が首相の座に付き、矢継ぎ早に、新ガイドライン、住民基本台帳法、通信傍受法、それに国旗・国家法などを成立させたのである。こうして構造改革を推進していったのである。

これに対して新聞ジャーナリズムは、何の抵抗もしなかった。

消費税の軽減税率の問題でも、新聞は同じ過ちを繰り返す可能性が高い。安倍内閣の世論誘導部隊になるだろう。

なお、安倍内閣の2人の閣僚、山本一太と高市早苗に対しては、新聞業界から政治献金が贈られている。特に山本に対しては、5年間で献金が3000万円にも達している。(敬称略)