パナソニックから最高裁事務総局へ裁判員制度をめぐり8億円超の日付のない請求書、NTTデータからは1億円超、日立は今後調査
裁判員制度の構築と運営に関連して、竹﨑博允(写真)・最高裁長官の時代、パナソニックから最高裁事務総局に対し、2009年から2012年までの間に、約8億8600万円の請求が行われていたことが分かった。しかも、請求書の多くに日付がない。当然、竹﨑長官への疑惑が浮上する。
請求書の備考欄に「19年度分」と記されていながら、用度課の受領印が「22・3・15」となっているものもある。だれが見ても不自然だ。
この資料を公表した理由は次の通りである。
◇前近代的な「報告事件」の実態
「報告事件」と呼ばれる裁判の存在が、最近、元大阪高等裁判所判事で弁護士の生田暉雄氏ら、元裁判官らの著書や証言で明らかになっている。
これは最高裁事務総局が暗黙のうちに判決の方向付けをする事件を意味する。「報告事件」に指定されると事件の担当書記官が、裁判の経過を最高裁事務総局に報告する。そして国策にそぐわない判決がでそうな雲行きになると、人事権を行使して判事を交代させるなどし、判決の結果を方向づけてしまうという。
こうした状況の下では、当然、裏取引の温床ができてしまう。経済力ある大企業、あるいは記者クラブなどを通じて司法当局との親密な関係を維持している大メディアなどが、裁判の当事者となった場合、「報告事件」に指定される可能性がある。
たとえば宮崎県延岡市の住民がKDDI基地局の撤去を求めた裁判は、「報告事件」に指定されていた可能性が極めて高い。この裁判で、宮崎地裁は電磁波による健康被害を認定したが、なぜか基地局の撤去については、住民の請求を退けた。
健康被害を認めながら、基地局の撤去は認めないとなれば、論理の矛盾が生じる。当然、原告住民も支援者も、高裁では逆転できると確信した。
ところが福岡高裁宮崎支部で控訴審がはじまってまもなく、あるひとりの判事が赴任してきて、裁判長交代のかたちで、この裁判の裁判長になった。田中一郎判事である。過去に熊本地裁で2件、福岡地裁で1件、携帯基地局の撤去を求める裁判の裁判長を務めて、いずれも住民を敗訴させた人物である。
田中判事が福岡高裁宮崎支部に赴任してきて、延岡訴訟の裁判長に就任した時点で、住民たちは敗訴を確信した。
◇小沢検察審査会の疑惑
ほかにも明らかに報告事件の可能性が高い裁判をわたしは複数知っている。これが最高裁事務総局を取材するようになったきっかけだが、その中で、最高裁事務総局が金銭に対して極めてルーズな体質であることが分かってきた。
たとえば小沢一郎検察審査会は架空であった強い疑惑がある。当然、支出されていた関連費用がどこへ流れたのかという問題がある。これに関しては、筆者が『紙の爆弾』に書いた次の記事を参考にしてほしい。
最高裁事務総局の腐敗が進めば、司法制度そのものが崩壊してしまう。腐敗が進行する前に、客観的な裏付けのある疑惑を公開するのがジャーナリズムの役割である。竹崎時代の疑惑とはいえ、放置できない。
ちなみに、パナソニックは携帯電話のメーカーでもあることを忘れてはいけない。また、携帯基地局を設置しているNTTの関連会社NTTデータからも1億円を超える日付のない請求書が提出されている。同じく携帯電話のメーカー・日立に関しては、今後、調査する。