1. 朝日、読売、日経と裁判所の関係を検証する最高裁に対する情報公開 回答期限の60日延長を通知 

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2013年08月28日 (水曜日)

朝日、読売、日経と裁判所の関係を検証する最高裁に対する情報公開 回答期限の60日延長を通知 

今年の5月24日付けで、最高裁に対して申し立てた情報公開に対する回答が届いた。「文書の探索及び精査に時間を要しているため」、2カ月程度の回答期限延長を通知する内容だった。6月26日にも、回答延期の回答を受けているので、今回で2度目の延長である。

(参考:最高裁からの回答文書=ここをクリック)

情報公開の請求内容は、読売新聞社、朝日新聞社、それに日本経済新聞社が上告人、または被上告人になった裁判(最高裁)の判決を示す文書を過去10年に渡って開示するように求めたものである。

巨大メディアに対して日本の司法当局は、特別な配慮をしているのではないかという疑惑をかなり多くの人々が抱いており、その真相を確かめようというのが、今回の情報公開の意図である。

◆謎だらけの真村訴訟

たとえば奇妙な判決の典型のひとつとして、読売に対してYC広川(読売新聞広川販売店)の店主・真村久三さんが、2002年に起こした地位保全裁判がある。この裁判の発端は、2001年に読売が真村さんの配達地区の一部を返上するように求めたことである。返上させた上で読売は、この地区の営業権を、ボス的な人物(スナックでの暴力行為で逮捕歴あり)の弟に移譲する予定にしていた。

真村さんは、読売の申し出を拒否した。これに対して、読売は真村さんに対して強制廃業をちらつかせ、最後には、真村さんの店を「飼い殺し」にする策に出た。販売局員の訪店も中止した。

裁判は真村さんの勝訴だった。地裁、高裁と勝ち進み2007年に最高裁で勝訴が確定したのである。

ところがその7ケ月の2008年7月、読売は真村さんとの商取引を一方的に打ち切った。新聞の供給をストップしたのである。そこで真村さんは、再び地位保全裁判を起こした。俗にこの裁判は、第2次真村裁判と呼ばれている。

第2次真村裁判の審理対象になったのは、第1次裁判の判決が確定して真村さんの地位が確定してから、真村さんが解任されるまでの7ケ月の間である。この期間に解任が正当とみなされるような不祥事を真村さんが起こしたか否かという点が争点になった。経営者として極めて優秀な真村さんに、失職に値するような不祥事があるはずがなかった。

ところが裁判所は読売による強制廃業を正当と判断し、真村氏を敗訴させたのである。その主要な理由のひとつが、黒薮の取材を受けるなど、ジャーナリズム活動を「幇助」したという奇妙なものだった。福岡高裁も、最高裁も、それそれ下級審の判決を認定した。

参考までに、判決文とその主旨を紹介しておこう。

◆取材に応じたらクビ

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)?

?? そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。 ? ??

そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。??

判決内容を予約すると、次のようになる。

?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。

?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。

?それは読売の名誉と信用を害するものである。

?従って真村さんを解任する理由として正当である。

◆真村さん提供の資料とは???

真村さんらがわたしに提供したと認定された情報が具体的に何を指しているのか、判然としないので、わたしは裁判官(地裁)に質問状を出して問い合わせたが回答はなかった。最高裁に対しては、情報公開制度を通じて、真村さんがわたしに提供したと認定した情報を開示するように求めたが、これも拒否された。

従って真村さんの解雇理由の原因とされている情報提供の中味は、わたし自身も把握できていない。判決に嘘を記した可能性を疑っているゆえんにほかならない。

ちなみにわたしの推測になるが、真村さんが提供した資料というのは、第2次裁判の審理の対象外の期間である第1次裁判の時期に、真村さんが裁判所に提出した訴状や準備書面のことではないかと思う。1次裁判の検証期間と2次裁判の検証期間を、裁判官が混同して、第2次裁判の間に真村さんがわたしに情報を提供したものと勘違いし、それを前提に判決を下した可能性がある。

ちなみに、たとえ2次裁判の期間に真村さんが、準備書面など裁判関連の情報を提供していたとしても、これらの資料はすべて裁判所の閲覧室で公開されているものである。従ってそのことをもって、解雇理由にはならない。

さらに問題なのは、わたし本人に対する事実検証の作業を裁判所が怠っている点である。わたしは真村裁判に関しては訴外者である。当事者ではない。従って判決の中で、わたしの行動を事実認定するのであれば、それに先立って、法廷に呼び出して、事実関係について尋問すべきだった。

その作業を怠って判決の中で、事実を誤認し、第3者の名誉を毀損したのである。さらに最高裁は、この判決を認定して、真村さんの敗訴を確定したのである。

◆裁判をインターネットで公開

この裁判に象徴されるように、大新聞に対する裁判所の判決には、極めて不透明な部分がある。そこで朝日、読売、日経がかかわった上告審の結果を、10年前までさかのぼって開示するように求めたのである。

ちなみに第2次真村裁判の判決の中で、わたしが名誉を毀損された問題については、時効になる前に個人訴訟を起こして、審理のプロセスをインターネットで公開する対抗策を検討中だ。裁判の勝敗よりも、審理の内容を公衆に問いたい。

改めて言うまでもなく、真村さんがメディアから取材を受けて、自分の意見を述べる権利は、憲法21条が保障している。新聞社の「押し紙」を批判しても、それが解任理由としては認められない。