1. 携帯電話の普及にともない増え続ける癌患者の増加、背景にマイクロ波が連動した複合汚染の可能性

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2015年05月04日 (月曜日)

携帯電話の普及にともない増え続ける癌患者の増加、背景にマイクロ波が連動した複合汚染の可能性

国立がん研究センターが4月28日に発表した今年の「予測がん罹患数」は、982,100例(男性560,300例、女性421,800例)で、前年予想よりも約10万件増えた。原因として、同センターは、「高齢化とがん登録精度の向上が要因と考えられます。」と述べている。が、重要な原因はそれ以外にもある。

厚生省のデータによると、日本における癌患者の年次推移は、1996年から急激に増えて、以後、ゆるやかな増加傾向にある。

まったく指摘されていないが、これに連動するように上昇曲線を描いているのが、携帯電話の普及率である。総務省が公表しているデータ「移動体通信(携帯電話・PHS)の年度別人口普及率と契約数の推移」によると、携帯電話の普及率は、次のように上昇している。

1990年:  0.6%
1995年:  9.6%
2000年: 56.0%
2005年: 73.3%
2010年: 88.5%
2013年:101.7%

癌患者の増加を示す曲線と類似している。
携帯電話の普及率が増えると、それに伴い携帯基地局が増える。そこからは24時間、通信に使うマイクロ波が放射されるので、周辺の住民は否応なしに被曝することになる。

携帯電話の普及が始まったころは、マイクロ波に遺伝子毒性があることはほとんど指摘されていなかったが、その後、疫学調査などで、両者の関係が指摘されるようになった。そして2011年にWHOの外郭団体である国際癌研究機関がマイクロ波に発癌性がある可能性を認定した。

しかし、この時点では、特に都市部で携帯基地局が林立する状況が生まれていて、撤去自体が難しい状況になっていた。携帯基地局の撤去を求める裁判も提起されているが、いずれにも電話会社が勝訴して、撤去には至っていない。

もちろん携帯電話と携帯基地局が増えたことだけが、癌が増えた原因ではないが、重要な要素であることは疑いない。

◆ドイツの疫学調査

参考までに、ドイツとブラジルで行われた疫学調査の結果を紹介しておこう。

まず、最初に紹介するのは、ドイツの医師団たちが、1993年から2004年までの期間に、特定の団体から資金提供を受けずにナイラ市で行った疫学調査である。対象は、調査期間中に住所を変更しなかった約1000人の通院患者。マイクロ波の発生源である基地局は2局。最初の基地局は、93年に設置され、その後、97年に別の基地局が設置された。

医師たちは被験者の患者を、基地局から400メートル以内に住んでいるグループ(仮にA地区)と、400メートルよりも外側に住んでいるグループ(3地区)に分類した。そして2つの地区の発癌率を比較したのである。その結果、次のことが明らかになった。

最初の5年については、癌の発症率に大きな違いはなかったが、99年から04の5年間でA地区の住民の発症率が、B地区に比べて3.38倍になった。

しかも、発癌の年齢も低くなっている。たとえば乳癌の平均発症年齢は、A地区が50.8歳で、B地区は69.9歳だった。約20歳も早い。ちなみにドイツ全体の平均は、63歳である。

◆ブラジルの疫学調査

最近の疫学調査としては、2011年にブラジルのミナス・ジェライス州大学が発表したものがある。この調査でも、携帯基地局の周辺に住んでいる住民の癌による死亡率が、それ以外の地域の住民の癌による死亡率に比べて高い傾向があることが分かった。

リサーチの目的は、癌と携帯電磁波の因果関係を疫学的に調査することである。基礎データとして使われたのは、次の資料である。

1、市が管理している癌による死亡データ。

2、国の電波局が保管している携帯基地局のデータ。

3、国勢調査のデータ。

2006年12月までに、ミナス・ジェライス州大学があるベロオリゾンテ市では、856の基地局が設置された。(電磁波の密度は、最大で40.78μW/cm2。最小で0.04μW/cm2。)

1996年から2006年までに癌で死亡したと確認できたのは、7191人。1998年の約780人については、死亡時の住所が確認できなかったので、調査の対象外とした。

癌による死亡率は、基地局から500メートル以内の地域では、1万人当たり34.76人だった。他の地域では、この数字よりも減少する。

癌による死亡率(累積)が最も高かったのは、中央・南区の1000人あたり5.83人だった。ここには市全体の基地局の39・6%(2006年)が集中していた。

逆に最も低かったのは、バレイロ区の1000人あたり2.05人だった。 この地区の基地局は、全体の5.37%。ちなみに基地局の密集率が、バレイロ区よりも低い区も存在した。

◆複合汚染の視点

複合汚染というのは、汚染物質の相互作用が、相乗的な汚染をもたらすことである。マイクロ波と発癌の関係を考える際にも、複合汚染の視点が不可欠に
なる。

その複合汚染とはなにか?

分かりやすい例としては、子宮頸(けい)癌の発症に関する説がある。子宮頸癌の原因がHPV(ヒト・パピローマ・ウィルス)の感染であることはよく知らているが、HPVに「感染した人全員がかならず子宮頸癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされて、DNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発癌リスクが高くなる」(利部輝雄著『性感染症』)のである。

地球上には数え切れない環境因子が存在する。事実、米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)が登録する新しい化学物質の数は、一日で優に1万件を超える。こうした状況の下では、複合の因子が連鎖したときに人体に及ぼす影響を検証することは極めて難しい。

人体はひとそれぞれに外界から異なった影響を受けており、厳密に言えば外界の変化に応じて、身体も変化している。静止状態にはならない。ひとつの変化が次の変化を引き起こす運動の法則が働いているのだ。従って体質も個々人により微妙に異なる。同じ強度のマイクロ波に被曝しても、人によりリアクションが異なるゆえんにほかならない。

研究室での動物実験の結果は、必要以上に過信すべきではない。参考になっても、絶対的なものではない。と、いうのも実験装置の中の環境と、実際の環境は異なるだけではなくて、モルモットと人間の体質も異なっているからだ。と、なれば何を最も重視すべきなのだろうか。

それは実際に住民の間に健康被害が広がっている事実である。それが、公害に対峙する原点だ。その意味では、携帯基地局の周辺で、健康被害が発生している事実を指摘した疫学調査の結果は極めて大切な意味を持つ。疫学調査で公害の医学的な根拠を特定できるわけではないが、公害の対策を取るうえで、最も重視すべき要素にほかならない。