1. 遺伝子毒性が指摘されている携帯電話の電磁波(1)、基地局周辺の住民は無差別に1日24時間被曝

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2015年04月27日 (月曜日)

遺伝子毒性が指摘されている携帯電話の電磁波(1)、基地局周辺の住民は無差別に1日24時間被曝

  電磁波は肉眼で確認することもできなければ、臭覚を働かせて感じ取ることもできない。また、電磁波を被曝しても、体に痛みが走るわけではない。それはちょうど病院でレントゲン撮影を受けても、苦痛を伴わないのと同じ原理である。

 が、それが電磁波=安全ということではない。むしろ電磁波の牙(きば)は見えにくく、無自覚のうちに肉体を蝕んでいくところに、恐ろしさがあるのだ。それを隠して携帯ビジネスに走るのは、「死の商人」の態度と評するいがいに表現のしようがない。

 改めて言うまでもなく、日常生活の中でもっとも身近に潜む電磁波問題とは、携帯電話・スマートフォン・無線PCの電磁波(以下、マイクロ波)である。とはいえ、これらの通信機器と電磁波について考える時、2つの観点を考慮する必要がある。

 まず、第1に通信機器そのものから発せられるマイクロ波である。携帯電話やスマートフォンの使用者が脳腫瘍になるリスクが高いことは、ほぼ定説となっている。頭部に通信機器を接近させて使うからだ。

 日本のマスコミは、この問題をほとんど報じないが、欧米では当たり前に報道され、携帯電話がもたらす脳腫瘍のリスクは、常識として住民の間に定着している。

  第2に問題になるのは、これらの通信機器を機能せさるためにのシステムである基地局から発せられるマイクロ波の危険性である。特に問題になるのは、通信機器と脳腫瘍の問題ではなくて、むしろこちらの方である。

 と、いうのもリスクを承知の上で通信機器などを使うかどうかは、自己責任の要素が強いからだ。携帯電話を使い続けて脳腫瘍になっても、ある意味では、自業自得である。

 しかし、基地局問題には別の側面がある。基地局が設置されてしまえば、その近隣に住む人々は無差別に、1日に24時間、マイクロ波を被曝し続けることになるからだ。携帯電話を使わない幼児までも被曝する。

 確かに基地局からのマイクロ波は、相対的には微弱だが、5年間、あるいは10年間、さらには20年間といった長期に渡って被曝した場合、どのような人体影響が現れるのかは、まだよく分かっていない。ドイツやブラジルで行われた疫学調査では、基地局周辺の住民が癌になる割合が飛躍的に高いことが分かっている。

 日本でも基地局周辺で鼻血やめまいなどの健康被害が多発して、裁判になったケースもある。

◆電磁波とは何か?

 そもそも電磁波とは何だろうか。最低限必要な範囲で、電磁波の正体を説明しておこう。

 電磁波の「電」とは電気のことである。その電気が空間に放たれたものが電波である。しかし、電気や電波には、その影響が及ぶ領域がある。炎に手を近づけていくと、熱を感じる領域があるように、電気や電波にも、影響が及ぶ範囲がある。この領域を「電場」という。

  電波は、われわれの生活に利便性をもたらした。携帯電話で通話できるのも、携帯電話の末端と携帯基地局が電波で結ばれるからにほかならない。

  ただ、電波による交信で欠くことができないものがある。それはアンテナである。電波はアンテナから発せられ、アンテナで受け止められる。それゆえに携帯電話の普及には、携帯基地局の設置が絶対的に必要になるのだ。

  次に電磁波の「磁」について考えてみよう。「磁」は何を意味するのだろうか。「磁」とは磁気、あるいは磁場を意味する。磁石が鉄を引き寄せることは周知であるが、その際に働く吸引力が「磁気」で、磁気が及ぶ範囲のことを「磁場」という。

 電流が流れると、その周りには「電場」と「磁場」が発生する。電磁波とは、電気によって生じる「電場」と「磁場」を伴った波のことである。あるいは電波の形状と性質をより厳密に描写した言葉ということになる。

 従って単純に電磁波=電波と理解しても許容範囲である。枝葉末節にこだわりすぎて、物事を複雑に解釈すると、かえって電磁波問題を理解する妨げになりかねない。

 電磁波問題とは、人体が電磁波(電波)を被曝し続けたときに生じる被害を公害の観点から指摘することである。広義に捉えれば、電磁波による人体影響だけではなく、生態系への影響も電磁波問題の範疇(はんちゅう)に入る。

◆原発のガンマ線から携帯電話のマイクロ波まで

 電磁波はエネルギーが低いものでは、家電機器などから漏れる「低周波電磁波」がある。また高いものでは、レントゲンのエックス線や原発のガンマ線など、さまざまな種類がある。従来は、ガンマ線やエックス線などエネルギーが高いものについては、遺伝子に対する毒性があると考えられてきたが、最近では全ての電磁波に毒性があるという見解が主流になってきた。

  このあたりの事情について、電磁波研究の第一人者である荻野晃也博士は、『携帯電話基地局の真実』の中で次のように述べている。

 「これらの電磁波のうちで、原爆の被爆者・被曝者などの研究から、『電離放射線(黒薮注:電離放射線とは、ガンマ線やX線を指す。詳しくは後述する。)が特に発癌の危険性が高い』と思われてきたのです。ところが、最近の研究の進展で『電磁波全体が危険な可能性』があり、『共通した遺伝的毒性を示す』と考えられるようになってきたのが、現在の『電磁波問題』の本質だといってよいでしょう」

 また、北里大学の名誉教授・宮田幹夫氏らがまとめた『生体と電磁波』にも、次のような記述がある。

「エックス線もガンマ線も電磁波である。人工の電磁波に比べてエネルギーが非常に大きいため、物質への浸透性が強く、生体へのダメージも非常に大きい。しかし、極低周波から超高周波まで、人工電磁波も生体へのダメージは大きく、身近にある場合は障害を生じる。放射線と電磁波はメカニズムが異なるが、同じように体内にフリーラジカルを生産し、DNAを破損してがんの原因を作る点では、同じような環境汚染源としてみることができる」
                              
  広島と長崎に投下された原爆の影響で、癌や白血病が増えたこともあって、かねてからガンマ線と癌の関係は定説となってきたが、実はマイクロ波など他の種類の電磁波でも、遺伝子に対する毒性が指摘され始めているのである。

  従って原発のガンマ線は危険だが、携帯電話のマイクロ波は安全とする考えは完全に間違っている。むしろ後者の方が、日本の津津浦々まで闖入(ちんにゅう)しているのである。