1. 電磁波や化学物質など新世代公害の透明な牙(きば)、水面下で広がる被害とマスコミの重い責任

携帯電話の基地局問題に関連する記事

2018年08月27日 (月曜日)

電磁波や化学物質など新世代公害の透明な牙(きば)、水面下で広がる被害とマスコミの重い責任

新世紀公害が水面下で急激に広がっている。静岡県に別荘マンションを持つ理学博士のAさんが言う。

「わたしが知らないうちに、マンションの理事会が電気会社から要請を受け、スマートメータ(電磁波による遠隔操作による電気料金の計測器)の設置を受け入れていました。電磁波によるリスクがあることを理事たちにいくら説明しても、電磁波が何であるかすらも分かっていません」

Aさんは筆者が取材対象にしている研究者である。

「前には、携帯電話の基地局を屋上に設置したいという電話会社の要請を理事会が受け入れてしまいました」

実際、Aさんの別荘マンションに携帯電話の基地局は設置され、今もそのままだという。Aさんは、初歩的で常識的な科学の知識を大半の住民が知らない事実を前に、絶望的な気持ちになるという。無知の恐ろしさを痛感している。

かつて公害といえば、工場排水が引き起こす中毒であったり、工場煤煙が原因の喘息など、誰の目にも見える被害だったが、新世代の公害は、意識的にその実体を学習しなければ認識できない。被害が浮上する時期も分からない。ここに問題の深刻さが潜んでいるのだ。

 

◆電磁波問題の浮上

電磁波問題が本格的に公害として浮上してきたのは、1980年代である。送電線からもれる超低周波電磁波と小児白血病の関係が米国で指摘され、その後の研究により、疫学的にそれが立証された。

1990年度になって携帯電話が普及してくると、無線通信に使われるマイクロ波による人体影響が問題になってきた。ドイツやイスラエル、それにブラジルなどで行われた疫学調査によると、基地局周辺に住む住民の間で、癌の発症率が相対的に高いことが明らかになった。そして2011年に、WHOの外郭団体である世界癌研究機関はマイクロ波に発癌性がある可能性を認定した。

 

【参考記事】帯電話のマイクロ波と発ガンの関係、ドイツやブラジルの疫学調査で危険性が顕著に、問題多い日本の安全基準

 

LEDで使われているブルーライト(電磁波の一種で、可視光線)による人体影響も既に定説となっている。ブルーライトは人工の太陽光に近いので、夜間にPCやスマホを見ていると、脳が夜を昼と勘違いして、睡眠障害を起こしたりする。

また、失明につながる加齢黄斑変性症の原因であることも確定している。

今日では、送電線の低周波電磁波から、原発のガンマ線など極めてエネルギーが高い電磁波(放射線)まで、遺伝子を破壊するメカニズムがあることが定説となっている。日本では、原発は危険で、携帯電話は安全だと思っているひとが多いが、これは間違っている。

 

◆あふれる化学物質

化学物質による人体影響についても、実は深刻な公害の土壌が広がっているが、大半の人は、それを認識していない。米国のCAS(ケミカル・アブストラクト・サービス)が登録する化学物質の数は、1日で優に1万件を超えるという。その大半は、安全性の検証が追いつかない。

1990年代の後半に埼玉県所沢市でゴミ焼却場のダイオキシンが大問題になり、それを機に、化学物質の脅威が話題になった。しかし、数年後には、何もなかったかのように忘れられた。

ちなみに電磁波や化学物質など新世代公害を考えるとき、複合汚染の視点を持たなくてはならない。特定の化学物質やウィルスに汚染されている状態で、電磁波などを受けると、健康被害のリスクがより高くなるのだ。

たとえば子宮頸癌の原因がHPV(ヒト・パピローマ・ウィルス)の感染であることはよく知られているが、「感染した人全員がかならず子宮頸癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされて、DNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発癌リスクが高くなる」(利部輝雄著『性感染症』)のである。

 

◆死の商人

新世代の公害は、意識的に学習しなけば認識できない。日本の場合、メディアがそれをほとんど報じないので、水面下で公害がかなり広がっている可能性が高い。それが若い人の癌の発症率を引き上げているのではないか。

ソフトバンクの孫正義などは、重い罪を犯しているのである。