1. 統一教会の霊感商法による被害額は35年間で1237億円、「押し紙」による不正金額は3兆2620億円、公権力が新聞社を保護する理由

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2025年03月27日 (木曜日)

統一教会の霊感商法による被害額は35年間で1237億円、「押し紙」による不正金額は3兆2620億円、公権力が新聞社を保護する理由

東京地裁は25日、統一教会に対して解散を命じた。このカルト集団が不正に集めた資金は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、35年間で1237億円になる。しかし、それをもってして日本の司法制度が正常に機能しているとまでは言えない。と、いうのもおそらくは最高裁事務総局の指示で意図的に、介入を避けている事件が他にもあるからだ。

その代表格が「押し紙」問題である。霊感商法による1237億円に対して、「押し紙」が生む不正資金は、筆者の試算によると35年換算で3兆2620億円になる。「押し紙」商法は、その規模と悪質性では、統一教会のカルト商法と比較にならない。

3兆2620億円の裏付けについては、『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)に詳しいが、概要は次の通りである。2021年度の全国の朝刊発行部数は約2590万部だった。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と仮定する。また、新聞1部の卸代金を月額1500円と仮定する。「押し紙」による販売収入は、次の計算式で導きだせる。

518万部×1500円×12カ月=年間932億円

霊感商法による35年間の被害額と比較するために、「押し紙」の不正金額・年間932億円を35倍すると、3兆2620億円になる。

ただし、「押し紙」20%の仮定は控え目に設定した数字である。最近の「押し紙」裁判では、多いケースになると40%から50%が「押し紙」になっている。また、新聞の卸価格1500円も過少に見積もっている。さらに「押し紙」によるABC部数のかさ上げにより、上昇する紙面広告の価格は考慮していない。

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戦前から戦中にかけての新聞は、新聞用紙の配給制度により、公権力の監視下におかれた。新聞用紙の配給を受けなければ、経営が成り立たないから、真実が報道できなかったのである。記者が無能だったから、とんでもない報道を続けたのではなく、用紙の配給制度という客観的な装置があっからそうせざるを得なかったのである。

戦後、この配給制度を代用したのが、「押し紙」制度である。仮に「押し紙」制度に公権力がメスを入れると、新聞社は大幅な減益となり、予算そのものを見直す必用に迫られる。公権力はこの点に着目して、新聞社の「押し紙」制度を保護しているのである。記者の職能が劣るから、真っ当なジャーナリズムを実戦できないのではない。「押し紙」制度という客観的な原因があるのだ。

とりわけ1999年の新聞特殊指定の改訂後は、公権力と新聞の癒着が露骨になった。この問題については、次の記事に詳しい。公正取引委員会と新聞協会が、「押し紙」をなくす方向で話を続けたはすが、逆に「押し紙」を容認する方向性で、特殊指定の改訂が行われたのだ。当時の公取委員長・根来泰周(冒頭写真)は、なぜか退任後にプロ野球のコミッショナーに就任している。

【参考記事】1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策略」

写真出典:デーリスポーツ