1. NHKが「押し紙」問題を報じた奇跡、「押し紙」は集団訴訟で解決を

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2020年06月02日 (火曜日)

NHKが「押し紙」問題を報じた奇跡、「押し紙」は集団訴訟で解決を

『週刊金曜日』(5月29日)が佐賀新聞の「押し紙」裁判で、佐賀新聞の独禁法違反が司法認定されたことを報じている。タイトルは、「佐賀新聞社の押し紙実態を裁判所が断罪、『販売店犠牲に収入増』認定」。執筆者は鹿児島大学の宮下正昭准教授である。

佐賀地裁が下した歴史的な判決を高く評価すると同時に、この事件をマスコミがどう扱ったかに言及している。テレビが初めて「押し紙」問題を取り上げたことを高く評価している。「押し紙」問題はテレビが絶対に扱わなかったテーマだった。例外的にコメンテーターが談話の中で言及したことはあるそうだが、「押し紙」裁判を取り上げたのは初めてである。

『週刊金曜日』の記事によると、「NHK佐賀放送局と県内唯一の地上波民法テレビ・佐賀テレビが報じた」という。

■NHKの報道

※佐賀テレビの画像はすでに削除されている。

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「押し紙」が最初に社会問題になったのは、1980年代である。滋賀県新聞販売労組の沢田治さんが、滋賀県選出の国会議員に接近して、85年までの5年間に15回の国会質問を実現させたのだ。質問に立ったのは、共産党、公明党、社会党だった。

この時代の「押し紙」報道は、『赤旗』、『潮』、それに統一協会の『世界日報』である。その後、『週刊文春』、『噂の真相』、『スキャンダル大戦争』などの雑誌が断続的に「押し紙」問題を取り上げはじめた。

2007年に福岡高裁で、読売の「押し紙」政策を認定する歴史的な判決が下された。

■真村裁判・福岡高裁判決

この判決を機として、週刊誌や月刊誌が一斉に「押し紙」報道をはじめた。『週刊ダイヤモンド』、『SAPIO』などが、「新聞没落」の特集を組み始めたのである。こうした流れ中で、2009年に『週刊新潮』が反「押し紙」キャンペーンを展開した。これに対して、読売は、わたしと新潮社に5500万円を金銭支払いを求める裁判を起こした。わたしに対しては、それ以前にも2件の裁判を起こしていた。

こうした裁判戦略の影響は大きく、「押し紙」問題の報道は下火になっていた。

しかし、右派系の人々が熱心に「押し紙」問題をクローズアップするようになる。右派系メディアの中心は、インターネットの動画である。佐賀新聞の事件では、ユーチューブに番組がアップされたほか、虎ノ門ニュースやチャンネル桜も判決を取り上げた。

◆◆◆
コロナウィルスの影響で、新聞の折込チラシが激減している。販売店は、もともとチラシ収入で経営の採算を合わせているので、このところ危機的な状況にある。ビジネスモデルそのものが成り立たなくなっているのだ。

当然、今後、「押し紙」裁判が増えるだろう。

わたしの取材体験から言えば、「押し紙」裁判は、集団で起こすと有利になる。新聞社の「押し紙」政策が、特定の販売店に対してだけのものではなくて、全販売店に対するものであることを裁判官に理解させやすくなるからだ。

集団訴訟によって和解解決した例としては、次のケースがある。

北国新聞、長崎新聞、南日本新聞、琉球新報。