来年1月に東京地裁で毎日新聞「押し紙」裁判の尋問、店主が約6000万円の損害賠償請求、問われる新聞人のパワハラ
新聞販売店の元店主A氏が毎日新聞社に対して起こしている「押し紙」裁判の本人尋問が、来年の1月25日に東京地裁で開かれることが分かった。だれでも傍聴できる。A氏が毎日新聞社に請求している賠償額は約6000万円。和解には応じない方針のようだ。
筆者の手元にある内部資料をもとに、たとえば2015年8月ごろの取引実態を検証すると、A氏が購読契約を結んでいた読者は473人しかいなかったのに、毎日新聞社は約1573部の新聞(卸部数)を一方的に搬入していた。その結果、約1100部が過剰になっていた。毎日新聞社はこの部数についても、新聞の卸代金を徴収していたのである。「押し売り」行為である。
これにより発生した損害のうち、A氏は約6000万円の賠償を求めている。
この裁判の特徴は、A氏が周到な準備を重ねた上で提訴に踏み切ったことである。
A氏が店主になったのは、2012年。開業した当初から、「押し紙」があった。そこで「押し紙」行為を中止するように繰り返し申し入れた。しかし、毎日新聞はA氏の要求には従わず、過剰な新聞の搬入を延々と続けたのである。その結果、店舗が「押し紙」の海になった。
怒ったA氏は、毎日新聞の担当員との会話を全て録音して保存するようになった。会話記録の量は膨大で、それだけでも、新聞人による新聞の「押し売り」やパワハラを立証することができる。
◇なぜ、密室裁判なのか?
A氏は毎日新聞との取引を中止した後、2016年に裁判に踏み切った。ところが、裁判所は「弁論準備」の名目で、公開法廷を開かなかった。弁論準備の名目で密室で行ったのである。が、これはルール違反である。
意外に知られていないが、裁判は公開することが原則になっている。憲法82条は次のように述べている。
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
なぜ、密室で行われてきたのかは不明だが、政治的な配慮が行われた可能性が高い。日本全国のほとんどの新聞販売店には、「押し紙」があり、これを排除すると、新聞社の経営が成り立たなくなる。その結果、権力を持ち、新聞社と癒着している勢力は、新聞を世論誘導の道具として使うことができなくなる。こうした配慮から、裁判所は「押し紙」裁判では、少数の例外的ケースを除いて、常に新聞社を勝訴させてきた。
しかし、A氏の裁判は、録音記録の量が極めて多く、しかも、新聞人のパワハラ的な言動が記録されている。場合によっては、インターネットでの公開に踏み切る可能性もある。司法がおかしくなって来た時代だけで、A氏も裁判内容の全面公開を希望している。
なお、尋問が行われる法廷番号は、現時点では未定である。分かりしだいにメディア黒書で告知する。
■■「押し紙」とは?
「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して、搬入する新聞のうち、配達されないまま回収される新聞のことである。たとえば2000部しか配達していない販売店に3000部を搬入すると、過剰になった1000部が「押し紙」である。偽装部数ともいう。
ただし、予備紙(配達中の破損などに備えて余分に確保しておく新聞で、通常は、搬入部数の2%)は、「押し紙」に含まれない。
公正取引委員会の見解は、実際に配達する新聞の部数に予備紙をプラスした部数が、正常な新聞販売店経営に必要な部数であって、それを超えた部数は、機械的にすべて「押し紙」と定義している。新聞社は、「押し紙」についても、卸代金を徴収する。
【動画】「押し紙」の回収。本記事とは関係ありません。