1. 1年半で朝日は67万部、読売は72万部の減部数、2015年6月のABC部数

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2015年08月07日 (金曜日)

1年半で朝日は67万部、読売は72万部の減部数、2015年6月のABC部数

【サマリー】2014年1月から2015年6月の1年半における新聞のABC 部数の推移を調べたところ、朝日が約67万部、読売が約72万部の部数を減らしていることが分かった。これに対して産経は約1万部増やしている。

 しかし、新聞のABC部数には「押し紙」が含まれている場合があるので、実際にどの程度の新聞が配達されているのかは不透明のままだ。「押し紙」は独禁法に抵触し、公権力がこれを逆手に取れば、暗黙のうちに新聞紙面をコントロールできる。

2015年6月時点における主要紙のABC部数は、次の通りである。

【2015年6月】
朝日新聞:6,790,953部
読売新聞:9,108,078部
毎日新聞:3,249,928部
日経新聞:2,739,027部
産経新聞:1,604,115部

■2015年6月のABC部数

これらの数字を1年半前、つまり2014年1月の数字に比較してみると、中央紙のうち産経は部数を増やしているが、他紙は部数の低落傾向から脱却できていないことが分かる。

読売は1年半で約72万部を減らし、朝日は67万部を減らしたことになる。両社の減部数は、約139万部にもなる。これは関東圏でいえば、東京新聞2社と上毛新聞社を失ったに等しい。

【朝日新聞】
2014年1月:7,461,786部
2015年6月:6,790,953部
差異     :  670,833部

【読売新聞】
2014年1月:9,825,985部
2015年6月:9,108,078部
差異     :  717,907部

【毎日新聞】
2014年1月:3,356,507部
2015年6月:3,249,928部
差異     :  106,579部

【日経新聞】
2014年1月:2,761,699部
2015年6月:2,739,027部
差異     :   22,672部

【産経新聞】
2014年1月:1,593,075部
2015年6月:1,604,115部
11,040部

【中央5紙を除く日刊紙】
2014年2月:16,073,597部
2015年6月:15,439,934部
 差異     :   633,663部

◇「押し紙」とメディアコントロール

しかし、これらの数字は販売店が実際に配達している部数(実配部数) を正しく反映しているとは限らない。日本の新聞業界には、「押し紙」制度が慣行として定着しているからだ。

「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して実配部数を超える新聞部数を搬入するために発生する過剰部数を意味する。「押し紙」は卸代金の請求対象になる。当然、実際には配達・販売されていなくても、販売収入として経理処理される。そのために粉飾決算の疑惑も指摘されてきた。

新聞人の中には新聞ばなれの時代においても、自社だけは経営が好調だと、機会があるごとに自慢話をしている者もいるが、粉飾問題を考慮した場合、実際の経営実態を反映していない可能性が高い。

新聞人は「押し紙」も堂々と販売収入として計上しているので、「押し紙」が多い新聞社は、経営が好調に見えても内情は別だ。

「押し紙」は独禁法で禁止されており、これを逆手に取れば公権力は新聞紙面を暗黙のうちにコントロールできる。公権力に批判的な紙面づくりを展開する新聞社は、「押し紙」問題で摘発されるリスクが高くなるからだ。