1. 読売の残紙とABC部数、「押し紙」であろうが残紙であろうが不正の温床に

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2020年09月01日 (火曜日)

読売の残紙とABC部数、「押し紙」であろうが残紙であろうが不正の温床に

既報したようにYC門前駅前(読売新聞・販売店)の元店主が、8月7日に、「押し紙」の損害賠償を求める裁判を起こした。読売が店舗の残紙が「押し紙」であるとは認めていないので、本稿では単純に残紙という言葉を採用するが、その割合は、搬入部数の約5割にも達していた。

しかも、読者数が変動していたにもかかわらず、搬入(供給)部数は一定にロックされていた。

■訴状

■「押し■訴状紙」一覧

裁判では、当然、これらの残紙が「押し紙」なのか、それとも予備紙なのかという点がひとつの争点になると思われるが、ジャーナリズムの観点からいえば、別の問題もある。仮に店舗に残っていた残紙が予備紙だとすれば、読売新聞社は免責されるのだろうか?

と、言うのも残紙はABC部数に反映される制度になっているので、ABC部数と実配部数に乖離があることを知らない広告主が、紙面広告や新聞折込をPR媒体として採用した場合、PR戦略を誤るリスクが高くなるからだ。広告主との関係で、残紙問題を問題をとらえると、公序良俗に違反する問題なのである。

また、このようなABC部数の実態が公になると、広告媒体としての新聞の信用が失墜して、新聞社も販売店もクライアントを失うことになりかねない。いわば過剰な部数を発生させることは自殺行為に等しい。

◆◆
以下、読売新聞における過去の残紙の実例と実態を紹介しておこう。いずれも訴訟になったケースである。裁判所は、残紙が「押し紙」であると認定していないが、大量の新聞が余っていたことは紛れのない事実である。

《YC大牟田明治》2007年10月ごろ)
搬入部数:約2400部
残紙:920部

《YC大牟田中央》(2007年10月ごろ)
搬入部数:約2520部
残紙:900部

《YC久留米文化センター前》(2007年11月)
搬入部数:2010部
残紙:997部

《YC久留米中央》(1996年の開業時)
搬入部数:2235部
残紙:405部

《YC小笹》(1998年5月の開業時)
搬入部数:2330部
残紙:946部
※半年後に残紙率は10%程度に下がっている。

 ※YC大牟田明治とYC大牟田中央は途中で訴訟を取り下げ、その後、廃業した。

YC久留米中央は和解した。YC久留米文化センター前とYC小笹は、判決を受けたが敗訴した。裁判所は、これらの販売店における残紙の性質が「押し紙」ではないと判断したのである。

◆◆
比較的新しいデータもある。次に示すのは、YC蟹江(愛知県)の実態である。これも極端に残紙が多い例である。

《YC蟹江》2010年3月の開業時
搬入部数:304部
残紙:128部

搬入された部数の42%が残紙になっていた。ただ、この販売店の店主は、その後、営業努力を重ねて、実配部数を大幅に増やしている。
さらに最新の例として、冒頭で紹介したYC大門駅(広島県)の残紙に言及しよう。2017年1月の部数内訳と、その1年後の2018年1月の部数内訳である。

《YC大門駅》2017年1月
搬入部数:2280部
残紙:1106部

《YC大門駅》2018年1月
搬入部数:2280部
残紙:1066部

◆◆◆
参考までに「押し紙」は存在しない主張してきた読売の論法を紹介しておこう。読売の宮本友丘専務(当時)が、「押し紙」裁判(被告・新潮社、黒薮)の法廷で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)である。喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に答えるかたちで、宮本氏は次のように証言した

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

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しかし、真村訴訟の福岡高裁判決は、読売新聞の「押し紙」を認定している。次の判例である。補足として参考文書も紹介しておこう。

真村裁判・福岡高裁判決

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

 

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