1. 日本の新聞社を巨大企業へ牽引した2大政策が完全に破綻、「押し紙」と高額景品使用

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2019年05月09日 (木曜日)

日本の新聞社を巨大企業へ牽引した2大政策が完全に破綻、「押し紙」と高額景品使用

周知のように日本の新聞社の発行部数の多さは、世界でも群を抜いている。世界新聞協会(WAN-World Association of Newspaper)が、公表しているランキング(2016年)によると、日本から4社が10位以内にランクインしている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞である。

発行部数の多さは日本の新聞社の際だった特徴といえよう。しかし、なぜ、日本の新聞社だけが怪物のように巨大化したのだろうか。わたしはその要因は3点あると考えている。

①戸別宅配制度
②高価な景品を使った新聞拡販
③「押し紙」政策

わたしは、新聞販売の仕組みを世界規模で取材したことはないので断言が出来ないが、少なくとも第3者を通じて蓄積してきた情報によれば、①の戸別配達制度を持つ国はあるが、②と③を制度として持っている国は、日本だけのようだ。

◇「押し紙」政策の限界

ところがいま①②③が崩壊の危機に直面している。

「押し紙」についていえば、各地で「押し紙」裁判が多発して、販売店が勝訴する事例が次々と生まれている。毎日新聞の「押し紙」裁判では、推定になるが、毎日新聞社が販売店に3500万円を支払ったケースもある。裁判所が、「押し紙」
を公序良俗に反するとみなしはじめているのだ。これが新聞社が不利になってきた要因である。

ちなみにこれまでの「押し紙」裁判では、新聞社が販売店に新聞の押し売りをした証拠があるか否かが勝敗の分かれ目になってきたが、この判断基準にも変化の兆しが現れている。販売店経営に必要な部数、つまり実配部数に予備紙を加えた部数を超える新聞は、すべて「押し紙」とみなす解釈が説得力を持ちはじめているのだ。これが独禁法の新聞特殊指定の忠実な解釈である。

これまで新聞社は、残紙はすべて予備紙という主張をしてきたが、残紙は古紙回収業者の手で廃棄されており、予備紙としての実態がない。残紙は、すべて「押し紙」とする司法判断が明確に輪郭を現すのはまじかといえよう。

◇景品表示法

高価な景品の使用についても、新聞社に赤信号が点滅している。去る3月19日に、消費生活センターが、高価な景品使用が景品表示法に違反するとして、産経新聞社に対して、措置命令を下したのだ。これにより産経だけではなく、全新聞社がこれまで採用してきた高価景品を使った新聞拡販ができなくなった。

景品表示法では、新聞拡販の際の景品を、最高でも6カ月分の購読料の8%と定めている。この規定に則すると、中央紙の場合、景品の上限は1800円程度になる。ところが実際は、ビール5箱など1万円を超える景品が出回っている。テレビや自転車も景品として使われる。

しかも、こうした「戦略」は最近に始まったことではなく、1990年代から実施されてきたのである。それが慣行になってしまい、行政指導が下ることもなかった。ところが、既に述べたように3月に、産経に対して、高額景品禁止の命令が下されたのだ。

◇インターネットメディア

新聞業界は、これまで採用してきた成長のビジネスモデルを完全に失ったのだ。この状態を、「役所」の側から逆説的に見れば、「広報部」として新聞社の利用価値がなくなったということでもある。実配部数が激減して、新聞社は崩壊寸前まで来ており、切り捨てる方針に踏み出したということである。

が、問題は、次世代のメディアである。インターネットメディアの質が相対的に悪い上に、今後、新聞に代わる「政府広報」に変質するリスクもあるからだ。メディア企業では、雇用されている記者がいるので、経営を優先せざるを得ない。インターネット広告が増えれば、ジャーナリズムの要素が消えていくのは間違いない。

日本のメディア界は、解決していかなければならない課題が山積している。