1. 佐賀新聞と販売店の係争、販売店が勝訴、地位保全を認める、背景に典型的な「押し紙」事件

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2018年04月02日 (月曜日)

佐賀新聞と販売店の係争、販売店が勝訴、地位保全を認める、背景に典型的な「押し紙」事件

佐賀新聞の販売店主が、店主としての地位保全を求めた仮処分申立事件で、佐賀地裁は、3月29日、店主の申し立てを認める決定を下した。この係争の背景には、「押し紙」問題があり、関係者の注目を集めていた。販売店訴訟で全国的に販売店が勝訴する流れが生まれはじめているなか、今回の販売店勝訴はそれに拍車をかけそうだ。

この事件の発端は、平成28年4月にさかのぼる。店主が佐賀新聞社に対して提出が義務づけられている報告書に、「仕入れ部数2550部お願いします」と記載した。つまり新聞の注文部数が2550部であることを、店主が書面で公式に申し入れたのである。

これに対して佐賀新聞は、店主の要望を拒否。前月と同様の搬入部数2980部を搬入する旨を通知した。そして実際に、2980部を搬入したのである。

この時点で、差異の430部が「押し紙」となった。これを仕入れ価格に換算すると、約86万円(月額)になる。店主は、この86万円の納金を拒否した。

4月以降も佐賀新聞は、店主が発注した搬入部数を認めず、「押し紙」を続けた。店主の方も、「押し紙」に相当する仕入れ代金については、支払いを拒否した。そして平成28年12月の時点で、「押し紙」部数に相当する未払い金は、約705万円に膨れあがった。

もちろんこうした状態に至るまでの間、店主は佐賀新聞に対して繰り返し減紙を申し入れていた。しかし、佐賀新聞は、店主との間に年間の部数目標を定めていることなどを理由に、強引に「押し紙」政策を続けた。そしてあげくの果て、平成28年12月14日に、販売店との商契約を打ち切る旨(契約の更新拒否)を通知したのである。

そこで店主は、地位保全の仮処分を申し立てた。佐賀地裁は、販売店の申し立てを認めた。ただし、地位保全の期間は1年に限定された。

その1年の期間が終了する前の平成29年12月、佐賀新聞は再び販売店との商契約を更新しない旨を伝えた。そこで販売店側は、再び地位保全の仮処分を申し立て、今回それが認められたのである。期間は1年。

◇独禁法の新聞特殊指定に抵触

店主の地位が保全された最大の理由は、過剰になっていた新聞が実質的に「押し紙」と認定されたからである。店主は、繰り返し新聞の搬入部数を減らすように申し入れていた。つまり「押し紙」を断った明確な証拠があったのだ。

また、独禁法の特殊指定によると、新聞販売業における「注文部数」とは、実配部数に予備紙(通常は、搬入部数の2%とされる)を加えた数字を意味しており、佐賀新聞がこのルールに違反して、年間の目標部数(ノルマ)を定めていたことも大きな要因だ。

ちなみに新聞販売店と新聞社の契約は、通常、3年から5年の期間で契約を自動的に更新する慣行がある。佐賀新聞の場合は、3年ごとの契約更新だった。従って契約期間が終了すれば、佐賀新聞は契約を更新しない自由もあるが、
店主が明らかな不祥事でも起こさない限り、なかなか契約更新の拒否は認められない。新聞販売業は家業の側面が強いからだ。

そのために新聞社が常套手段として持ち出してくる理由は、新聞部数の虚偽報告により、信頼関係が破壊されたというものである。次の読売の判例のように。

■ 真村裁判福岡高裁判決(読売)

また、「積み紙」を理由に契約更新を拒否することも多い。「積み紙」とは、折込広告の水増しを意図して、販売店が自主的に注文する新聞部数のことである。

佐賀新聞のケースでは、店主が減部数を繰り返し要求していたので、「積み紙」と認定される余地はなかった。

今後、公正取引委員会の対応が注目される。

◇朝日新聞が「押し紙」報道

なお、今回の判決については、朝日新聞が報道した。

3月31日付け、朝日新聞の記事