右派が描く広義しばき隊のイメージは、「日本を代表する左派」、住民運動に大きなダメージ
「押し紙」問題に、小坪慎也氏ら右派系の人々と一緒に取り組むなかで興味深い事実を知った。右派系の人々の全員ではないにしろ、かなり多くの人々が差別に反対するカウンター運動に参加している層を左派と勘違いしているようだ。とりわけ広義しばき隊こそが、日本の左派の代表だと思っているらしい。
そのためにしばき隊を批判している筆者を右翼のシンパと勘違いしている人も少なくない。
なぜ、しばき隊を日本の左翼の代表と考えているひとが多いのか。
原因を探ってみるといくつか思い当たる。まず、第一に反差別といういかにも左派らしい方向性と、それを力で押し進めるスタイルが、古い時代のソ連や中国のイメージに重なるのだろう。
広義しばき隊を象徴する武器に、「釘バット」(写真)がある。実際、彼らのメンバーがM君暴行事件を起こして、裁判では2名が損害賠償を命じられた。
「釘バット」はアートだと主張している人もいるが、たとえアートであるにしろ「釘バット」が暴力の象徴であることには変わりない。
◇共産党によるしばき隊支援
広義しばき隊を左派だと思っている右派が多い第2の原因に、しばき隊に対する共産党のスタンスがある。少なくとも共産党は、数年前までは、左派の代表的な存在だった。左派としての輝かしい伝統もある。その共産党がしばき隊を応援したり、逆にしばき隊から選挙で支援を受けているわけだから、普通の市民感覚からすれば、しばき隊は左翼の実働部隊ということになる。
しかも、しばき隊を熱心に支援してきた神原元弁護士が、共産党との関係が近いとされる新日本出版や大月書店から著書を出している事実も重い。それが一層、しばき隊=左派のイメージを拡散しているようだ。
『しんぶん赤旗』と路線が近い日本ジャーナリスト会議の機関紙にも、広義しばき隊の幹部が寄稿している。
もっとも共産党の体質そのものが変質した可能性も否定できない。いまや共産党が社会主義を目指す政党なのかどうかも疑わしい。疑問が広がっている。確か1970年代には、民主連合政府を目指していたはずだが、小選挙区制の下で徐々に日和見主義に陥り、ここ数年で完全に変質した感がある。
民主集中制だから、中央が判断を誤ると、それが全体に波及する。
今はむしろ小沢一郎氏に近い。小沢氏を過信している。その小沢支持者の中にも、広義しばき隊の支持者が多いようだ。
しばき隊のようなグループを日本の左派の代表だと思わせる状況が広がることによって、健全な市民運動や住民運動を展開している人々は大きなダメージを受ける。
それを誰が最も喜んでいるのか、考えてみる必要があるだろう。