東京都議選にみる世論誘導の実態、自民と都民ファーストの対立構造はウソ、公明と都民ファーストの共闘は「反共シフト」
冒頭の図は、7月2日に投票が行われた東京都議選で各党が獲得した議席をイラストで現したのもである。NHK選挙WEBからの引用だ。
このイラストには、NHKによる世論誘導の意図が現れている。右側に「小池知事支持勢力」が配置され、左側にそれ以外の勢力が配置されている。そして自民党は、最も左側に配置されている。
この図を見る限り、都民ファーストの会と典型的な対立政党になっているのは、自民党ということになってしまう。しかし、結党の基盤にある思想・政策という観点からすれば、都民ファーストの会と自民党は極めて距離が近い。選挙期間中も、小池知事は自民党に党籍を置いたままだった。自民党は離党手続をしていなかった。
民新党の評価については難しいので、ここでは避ける。
改めて言うまでもなく、公明党は都民ファーストの会と路線を同じにしている。
こんなふうに考えると、今回の都議選で自民党は大敗したが、従来の保守路線を継続する勢力は、都民ファーストの会・自民党・公明党・維新・ネットということになる。改選前よりもはるかに強固な保守体制が構築されたのである。
◇第1次安倍内閣の下で防衛大臣になった小池
小池氏がどのような思想の持ち主かは、改めてここで詳しく述べる必要はないだろう。第1次安倍内閣の下で防衛大臣を務めたり、日本会議と親密な関係にあったり、憲法記念日をなくすことを提唱したことがある事実だけでも、彼女の思想を判断するには十分ではないだろうか。
2000年11月の憲法審査会では、「いったん現行憲法を停止する、廃止するその上で新しいものを作っていく」とまで発言している。
築地の問題では、豊洲移転を最優先している。しかし、オリンピック後に築地に戻すことは、困難というのが一般的な見方だ。政策的には、自民党とほとんど変わらない。
ただ、自民党都議と異なり、都民ファーストの会の議員は若手が多く、意欲があることだけは確かだろう。しかし、小池氏の下では、どれだけ独自性を発揮できるのか疑問だ。候補者を決める段階で、あまり自分の意見を表明しない「イエスマン」ばかりを選んだ可能性もある。
◇「反共シフト」の背景
公明党が都民ファーストの会と手を組み、その一方で中央政界では従来通り自民党と共闘している事実については、どう考えるべきなのだろうか。筆者は、今回の選挙にみられた両党の共闘は、「反共シフト」だったと見ている。当然、自民党も承知の上だったと推測する。
反自民の票を共産党に取られないためのシフトだった可能性が高い。
森友学園や加計学園の問題をスクープしたのは、しんぶん赤旗で、これらの問題を共産党は国会でも追及した。共産党は安倍政権にとってもっとも頭が痛い勢力なのだ。それゆに都議会で議席を増やすことを何とか阻止したかった。
その影響が全国に広がるのを恐れたのではないだろうか。
そこで公明党が主導する臨時の「反共シフト」が敷かれたのである。当然、選挙後も自民党と公明党の関係は変わらない。
事実、選挙期間中に公明新聞は、反共宣伝を展開した。たとえば6月22日付けの公明新聞は、「3つのKで分かる 共産党ってどんな党?」という特集を組んでいる。具体的には、
①汚い!(実績横取りのハイエナ政党)
②危険!オウムと同じ公安の調査対象
③(北朝鮮について)「危険ない」と的はずれな発言
このうち②については、別の機会に評論することになるかも知れないが、結論だけを言えば、公安警察が標的としている団体や個人がかならずしも暴力を肯定しているとは限らない。本当の民主主義の構築を目指す人々がターゲットになるケースの方がむしろ多い。
保守勢力が圧倒的に多数を占めた東京都議会。これから豊洲移転、利権オリンピックの開催、福祉の切り捨て、カジノの設置などが矢継ぎ早に進んでいくのではないか。
東京都民はまたもやメディアの世論誘導に騙されたのである。