1. 司法制度改革の開始から10余年、SLAPP、高額訴訟、虚偽の事実を前提とした裁判の多発、背景に訴訟のビジネス化

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2012年12月03日 (月曜日)

司法制度改革の開始から10余年、SLAPP、高額訴訟、虚偽の事実を前提とした裁判の多発、背景に訴訟のビジネス化

2001年6月、司法制度審議会が提出した意見書に基づいて、司法制度改革が始まった。小泉内閣に司法制度改革推進本部が設置された。イニシアチブを取ったのは、次の国会議員である。

本部長:小泉純一郎(内閣総理大臣)

副本部長:福田康夫(内閣官房長官)、森山眞弓(法務大臣)、

本部長補佐:安倍晋三(内閣官房副長官)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)

人事構成を見れば分かるように、司法制度改革は自民党のメンバーを中心に押し進められてきたのだ。

それから10年。現在の司法界には、さまざまな問題が吹き出している。代表的なものとしては、SLAPPの多発、高額訴訟の多発、虚偽の事実を前提に提訴して弁護士報酬をかせぐ手口の多発などである。

結論を先に言えば、わたしは司法制度改革は、弊害の方がはるかに大きいと思う。訴訟をビジネス化した。もちろん、まだ良心的な弁護士も多いが、金さえ払えば誰の弁護でも引き受ける金銭感覚が欠落した者も増えている。

司法制度改革は、米国からの外圧によって推進されたという説も有力だ。たとえば、『拒否できない日本』(関岡英之著・文春新書)は、このような視点から書かれた本だ。同書によると、米国政府は「年次改革要望書」で司法改革についての方向性も示していたという。

たしかにアメリカは高額訴訟の国である。が、米国にはSLAPPを禁止する法律も存在する。この点が日本とは違う。一方、日本ではSLAPPの概念すらない。類似したものとしては、訴権の濫用があるが、これはめったに適応されない。

(例外的な例としては、加藤新太郎裁判官(東京地裁)が、被告・池田大作氏に適用したことがある。)

SLAPPを厳しく罰すれば、司法制度改革で増えた弁護士が収入の道を断たれるリスクがあるからだ。日弁連がこの問題に沈黙しているゆえんではないだろうか。

◇虚偽の事実を前提とした裁判  

虚偽の事実を前提とした訴訟とは、具体的にどのようなものを言うのだろうか。最も分かりやすい例は、読売の江崎法務室長がわたしに仕掛けた著作権裁判である。

(参考:12月12日に福岡高裁の大法廷で本人尋問、対読売の「反訴」裁判 )

さらにレコード会社31社が作曲家の穂口雄右氏にしかけた2億3000万円を請求する訴訟も、検証が必要だ。この裁判は、穂口雄右氏が経営するミュージックゲート社が提供するYOUTUBE上の楽曲などを対象としたファイル転換サービス(移動通信機器での視聴を可能にする)が、著作権違反にあたるとして起こされたものである。

訴状でレコード会社側は、証拠ファイルが1万個を超えると述べていた。ところが実際に提出できた証拠ファイルは、150個に満たなかった。訴状に明記した記述に裏付けがあるのか、という疑問が生じている。まだ、事実関係が確定したわけではないが、さらなる検証が求められる。

もちろん請求額は、証拠ファイル1万個を前提に見積もられている。

この他にも明らかに弁護士が作文したと思われる嘘の陳述書が提出される例が後を断たない。

このような陳述書は、文体と作文のパターンを見れば見当がつく。たとえばわたしの手元に、店主がいかに無能であるかを綴った新聞販売店の従業員たちによる陳述書がある。これらを読み比べると、同じ文体、同じパターンで書かれていることが多い。

新聞社の記者や弁護士が作成した嘘の記述の可能性がある。

なぜ、嘘の証拠を提出してまで、裁判を起こすのだろうか?訴訟をビジネスとして位置づけている結果ではないだろうか。が、嘘の証拠を提出して、それが暴露された時は、弁護士の側が懲戒請求などのリスクに晒されることになる。

ちなみに最も勝率の高い裁判は、名誉毀損裁判である。SLAPPと名誉毀損裁判がむつび付くゆえんにほかならない。