1. 格差化の進行、百貨店が好調な理由、アベノミックスで富裕層の市場が出現

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2015年06月24日 (水曜日)

格差化の進行、百貨店が好調な理由、アベノミックスで富裕層の市場が出現

共同通信社が20日と21日に行った世論調査は、安倍内閣の支持率47.4%(5月は49.9%)という数字を示した。また、朝日新聞がやはり20日と21日に行った調査によると、内閣支持率は39%(前回調査の5月16日、17日は、45%だった)だった。いずれも低落傾向が現れている。

もっともマスコミが権力構造に組み込まれている状況下で、メディア企業が実施している世論調査をどの程度まで信用してもいいのかという疑問は残るが。

これまで安倍内閣が高い支持率を維持してきた背景には、アベノミックスに対する幻想を抱いていた人々が多かった事情があるようだ。マスコミは、さかんに安倍政権下での景気回復をPRしているが、たとえそれが数字を裏付けとしたものであっても、それほど単純な評価ができるわけではない。

結論を先に言えば、アベノミックスにより富裕層の市場と庶民の市場が出現している。そして、これら2つの市場への分化が始まっている。マスコミが「好調」をPRしているのは、富裕層の市場であって、庶民の市場は、物価の高騰や消費税の影響などもあり、冷え込んでいるというのが実態のようだ。

◆2つの市場の出現

SankeiBiz に百貨店の好調ぶりを報じる次のような記事が掲載された。

 日本百貨店協会が19日発表した5月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比6.3%増と2カ月連続で前年を上回った。好天が続いたことで夏物衣料や化粧品などが好調だったほか、訪日外国人向けの売上高増も寄与した。増税の影響がなかった一昨年同月比でも1.8%増で、景気の回復基調を裏付ける結果となった。(6月20日)

この記事を読む限りでは、旅行者を含む不特定多数の客が百貨店に殺到して、売り上げが延びたような印象を受ける。経済は好調と言わんばかりである。しかし、経済に詳しいある上場企業の元役員は次のように話す。

「アベノミックスによる株高で、金持ちはさらに豊かになり、タクシーで百貨店へ行き、10万円、20万円といった高級なブランド品などを購入するようになっているんです。百貨店はそれだけで、採算があいます」

市場の2極化が典型的に進んでいるのが中国である。わたしはここ数年の間に、何度か中国を取材したが、百貨店に陳列されているブランド品は、日本の市場に出回っているものよりも高い傾向がある。その一方で、庶民が集まるマーケットにおける商品価格は、日本よりも格段に安い。

ちなみに日本を訪れる中国の富裕層のお金は、日本の百貨店にも流れ込んでいる。

さらに1980年代から90年代に新自由主義の実験場にされたラテンアメリカでも同じような実態-2つの市場の存在があった。高級な店が軒を連ねるライトに照らしだされた通りと、露天商がひしめく庶民の共同市場が共存していた。それはあたかも「繁栄」と「悲劇」の共存だった。

◆医療も2極化する

アベノミックスで富裕層の経済が活性化していることは紛れもない事実である。多国籍化した大企業は空前の利益を上げている。法人税を下げると同時に、成長産業に対しては、積極的な支援策を打ち出しているわけだから、ある意味では当たり前の結果である。

が、それによる富裕層の「繁栄」を理由に、国民全体の生活が相対的に向上したことにはならない。ジャーナリズムは、顕著になってきたこのような矛盾の構図をあぶりだすべきだが、アベノミックスにより景気が回復しているかのような幻想を振りまいている。

将来的には、医療や福祉の面でも、2極化が進む可能性が高い。「混合診療」の導入で、医療行為を市場化し、富裕層は最先端医療の恩恵にあずかり、それ以外の人は、普通の医療か、あるいは医療が受けられなくなる。

安倍内閣の支持率低下は、安保法制をめぐる国会運営に対する批判の声の反映だけではなく、水面下で進行している経済政策のトリックに多くの人々が気づき始めた結果ではないか。