1. 米大統領選挙、バイデン圧勝か?「不正選挙」と暴力というトランプのプロパガンダと戦略、既にベネズエラ、ボリビア、ニカラグアで失敗を実証済み

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米大統領選挙、バイデン圧勝か?「不正選挙」と暴力というトランプのプロパガンダと戦略、既にベネズエラ、ボリビア、ニカラグアで失敗を実証済み

NBCニュースとウオールストリートジャーナルは、米国大統領選の最新世論調査の結果を報じた。 それによるとバイデンが52%で、トランプが42%だった。米国大統領選挙の行方は、接戦というよりも、バイデンが圧勝する可能性が高い。

しかし、一部のメディアによると、トランプ陣営は、敗北した場合に不正選挙を理由に法廷闘争を開始する可能性が高いとも伝えている。選挙後の混乱の舞台となる可能性が高い大都市では、窓を板で覆って暴動に備える商店やレストランもあるという。銃を購入する市民も急増していると伝えている。

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日本のメディアは、ほとんど報じていないが、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアでも、大統領選のあとに混乱が起きている。これらの国々では、敗北した右派陣営が不正選挙を主張して混乱を引き起こした。トランプの戦略が、そのままラテンアメリカにも持ち込まれたのだ。

米国政府がみずからの「裏庭」に内政干渉してきたわけだから、ある意味では当然の光景だ。

その典型例がボリビアである。2019年の大統領選で、現職のモラレス大統領(左派)が勝利していながら、保守陣営が「不正選挙」を主張した。そのイニシアティブを取ったのは、米州機構(Organization of American States)だった。メディアを動員して「不正選挙」を大々的にPRし、モラレス大統領派と反政府勢力との対立をあおり、その混乱に乗じて、クーデターを起こしたのである。

幸いにモラレス大統領は、メキシコに亡命して難を逃れた。

日本のメディアは、クーデターの事実には一切ふれずに、混乱の中でモラレス大統領が亡命したとだけ伝えた。それから1年後に実施された再選挙では、モラレス大統領の後継者であるアルセ候補が圧勝した。モラレス大統領も、この7日に帰国する予定だという。

ちなみにクーデターでは、死者も出ており、アルセ新政権下で検証作業が行われる可能性が高い。

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2018年のベネズエラの大統領選後にも、メディアは大々的に「不正選挙」というプロパガンダをまき散らした。そして選挙候補ですらなかった親米派の国会議員が、みずからベネズエラ大統領を宣言したのである。ボリビアとよく似た手口である。

ニカラグアについてもメディアは、現在のオルテガ政権が不正選挙によって成立したというプロパガンダを拡散している。オルテガ政権が暴力によって反政府運動を弾圧していると報じている。

ニカラグアのケースで、反政府・市民運動を主導しているのは、MCI(movimiento civico de Junentude,青年市民運動)というグループである。この団体は、米国の民間団体NDI(National Democratic institite)に所属している。NDIの創始者がみずからニカラグアの反政府運動のコーディネーターを務めている。

このNDIをサポートしているのが、次の4団体である。

1、 The National Endowment for Democracy,(全米民主主義基金)

2、the United States Agency for International Development (アメリカ合衆国国際開発庁 )

3、 the U.S. Department of State (米国国防省)

4、 Consortium for Elections and Political Process Strengthening

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米国の対ラテンアメリカ戦略は、今世紀に入るころから急激に変化してきた。かつてはラテンアメリカで政変が起きると米国は、容赦なく軍事介入していた。あるいはCIAの策略でクーデターを起こした。具体例としては、1954年のグアテマラ、1959年のキューバ、1973年のチリ、1980年代の中米(ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ)への介入である。

しかし、1999年のベネズエラを皮切りに、ラテンアメリカに次々と左派政権が誕生すると、米国は軍事介入という伝統的な戦略が取れなくなった。いずれの政権も選挙により合法的に誕生した経緯があったからだ。社会進歩の中で、軍事介入を容認しない世論が生まれてきた結果である。

が、米国政府はラテンアメリカに権益を持つ多国籍企業を見捨てるわけにはいかない。そこで新たな戦略を打ち出してくる。それがトランプ政権の下で、急激に浮上してきた市民運動を買収する戦略である。資金面でも戦略面でも市民運動を支援することで、混乱を引き起こし、暴力を誘発し、政権を転覆させる戦略である。このような戦略に、国際的な人権擁護団体や米州機構などの公的機関をも巻き込んでいる。

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トランプ大統領は、米国の対ラテンアメリカの戦略と、まったく同じ戦略を、今度は米国内にも適用しようとしている。