湯水のように国家予算を博報堂へ流し込む恐るべきシステム、年間で25億円に、博報堂へ「天下り」の実態(3)
内閣府から少なくとも2人の国家公務員が博報堂に再就職(広義の天下り)していることが分かっている。
既報したように次の2氏である。()内は退職時の地位だ。
■阪本和道氏(審議官)
■田幸大輔氏(広報室参事官補佐・広報戦略推進官)
なお、内閣府は、田幸氏について、「田幸氏は内閣府ではなく、内閣官房の所属なので、無関係」と話している。内閣官房というのは、内閣総理大臣の直属機関である。そうであるなら、より問題は重大だ。
その一方で、内閣府の裁量で湯水のように国家予算を博報堂に流し込める仕組みになっているプロジェクト「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務」が、2012年度から進行してきた事実がある。このシステムで内閣府が博報堂に支払った金額の合計は、2015年度を例に引くと、25億円を超える。
しかも、おかしなことに巨額の国家予算の支出に際して、内閣府は博報堂からアドバイスを受け、新聞広告やテレビCMの制作などで発生する費用とは別に、「構想費」という名目の費用も支出しているのだ。次に示すのが、構想費の年度別変遷だ。
2012年度:約3980万円
2013年度:約4640万円
2014年度:約6670万円
2015年度:約6700万円
年々、構想費が高くなっているのも極めて不自然だ。内閣府は事情を説明すべきだろう。
筆者が「構想費」について内閣府に説明を求めたところ、博報堂とはほとんど毎日打ち合わせを行いアドバイスを受けていた旨の説明があった。しかし、その日当が10万円で、365日、休みなくミーティングを開いたとしても、3650万円にしかならない。誰が見ても、不自然なお金が支払われているのだ。
ちなみに博報堂が内閣府に提出している請求書には、日付が入っていない。書面は、恐らくエクセルである。正規の会計システムに則した書面とは言えない。これについて博報堂のあすさ監査法人は、特に問題ないとしている。一方、博報堂DYホールディングスが上場している東証については、現在、書面で調査を求めている。
◇内閣府に対する情報公開請求
こうした状況の下で、メディア黒書への匿名通報で、2名の天下りが発覚したのだ。裏付けもある。両者とも広報業務に携わった職歴がある。
そこで筆者は、内閣府に対して次の情報公開請求を行った。
元内閣府職員の次の人物の内閣府内での職務歴を示す全資料。
阪本和道氏。田幸大輔氏。
開示が行われない場合は、異議申し立て、訴訟という段取りになるだろう。訴訟もジャーナリズム活動の「知らせる」という観点からすれば効果的な手段である。
◇再就職等監視委員会の調査依頼
一方、阪本氏に関しては、再就職等監視委員会に調査の申し立てを行った。次の内容である。
【引用】
2016年1月に内閣府から博報堂へ再就職された阪本和道氏について、調査を求めます。阪本氏が内閣府大臣官房長であった12年、内閣府と博報堂の間で「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務」と題する新しい政府広報の制度が構築され、この年から15年度まで、博報堂が連続してこの業務を請け負っております。
この制度の下で内閣府の裁量により、新聞広告やテレビCMの制作や配信、あるいは放送業務を発注することができます。その結果、15年度だけで約25億円もの国家予算が見積書による精査を経ることなく博報堂へ供給されてました。
この制度が設けられた12年当時に阪本氏が内閣府大臣官房長として、内閣府の広報に携わっていたことは、筆者にあてた「開示決定等の期限の延長について」(府広第533号 平成24年11月7日)などでも明らかになっています。博報堂はその後も、「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務」を請け負い、阪本氏が博報堂へ再就職した16年1月も、この業務は進行中でした。
従って国家公務員法の106条に抵触している可能性があり、調査していただくように求めます。
これに対して再就職等監視委員会から次のような返答があった。
2017年2月6日11:43着信「情報」拝読いたしました。
当委員会の調査事務への御理解・御協力ありがとうございます。
国家公務員法の再就職等規制に規定されているのは、
1 現職職員による他の職員・元職員の再就職依頼・情報提供等規制
2 現職職員による利害関係企業等への求職活動規制
3 再就職者(元職員)による元の職場への働きかけ規制
の3つの規制です。
もし具体的な規制違反行為に関する情報(担当・氏名・時期など)がありましたら、お願いいたします。
この回答を読んで、読者は何を感じるだろうか。「1」から「3」に該当しなければ、「天下り」ではありませんと言っているのではないだろうか。調査するように依頼しているのに、証拠を提出しなければ調査しないと言っているのだ。
官庁からの「天下り」がなくならない原因がこのあたりにあるのではないか。マスコミは、このあたりをもっと厳しく指摘すべきだろう。
【写真】博報堂・戸田裕一社長