1. 西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決(敗訴)のお知らせ -モラル崩壊の元凶 押し紙-

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2025年07月09日 (水曜日)

西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決(敗訴)のお知らせ -モラル崩壊の元凶 押し紙-

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士江上武幸(文責)2025年(令和7年)7月8日(火)

去る7月3日(木)に、長崎県西日本新聞販売店の押し紙訴訟の福岡高裁判決が言い渡されました。地裁判決に続き販売店の敗訴判決でした。(なお、福岡地裁の佐賀県西日本新聞販売店の押し紙訴訟の判決言い渡し期日は、9月9日(火)午後1時10分に指定されています。)

この二つの裁判については折々に投稿させて頂いていますので、今回の高裁判決と併せて御覧ください。

新聞社は販売店に押し紙を仕入れさせるためには仕入れ代金を補填する必要があります。その方法のひとつが折込広告収入を増やすことです。もう一つは、補助金を支給することです。失われた30年といわれる日本社会全体の活力の低下とネット社会の普及という時代の変化により新聞自体が必要されなくなってきています。昭和40~50年代に押し紙を解消した熊本日日新聞社や新潟日報社などと違い、押し紙に頼って経営を続けてきた新聞社は、今更、押し紙を完全になくすことはできず深刻な経営不安を抱えているように思われます。

そういう時代のなか、私どもが西日本新聞社の押し紙裁判は勝訴の見込みが十分あると判断したのは、西日本新聞社の押し紙政策があまりにも無防備だったからです。

西日本新聞社は原告の折込広告収入を増やすために、4月と10月に他の月より200部多い部数を供給しました。そうすることで年間を通じて200部分多い折込広告収入を得られるように措置していたのです。これは、新聞社主導による明らかな折込広告料の詐欺です。ABC部数も4月と10月の部数が公表されますので紙面広告料の詐欺に問われる可能性もあります。

新聞社が詐欺行為の批判を受けないようにするには、販売店の実配数は知らないことにしておく必要があります。販売店の実配数を知っていることがわかれば、折込広告料の詐欺の教唆あるいは販売店との共同正犯の罪を問われるからです。
その結果、折込広告主が新聞社に広告料の返還を求めるような事態が生まれれば、新聞業界は収拾のつかない大変混乱に見舞われることになります。

ところで、西日本新聞社は販売店の実配数は知らないと主張しておきながら、実際は、販売店毎の実配数を記載した表を作成し、その表が外部に漏れないように本社の金庫で厳重に管理していることがわかりました。

何故、そのことがわかったかといいますと、私たちは販売店の実配数と送付部数を記載した地区部数表をあらかじめ入手していたからです。その表を、西日本新聞社が販売店の実配数を知っている証拠として提出したところ、西日本新聞社は実配数は重大な営業秘密なので、第三者の閲覧を禁止するよう裁判所に求めました。つまり、販売店の実配数は知らないとのそれまでの主張が虚偽であることを認めざるを得なくなったのです。まさに、墓穴を掘ったのです。

もう一つは、販売店の注文は電話で受け付けていると主張していた点です。
公正取委員会は、平成9年の北國新聞社の押し紙事件を機に、新聞社に対し注文部数に疑義が生じないように注文方法を改善することを求めました。そのためと思われますが、西日本新聞社も販売店に注文部数を記入した注文表をFAXするよう指示していました。しかし、実際に供給する部数は部数表に記載された部数とは違っていましたので、電話による注文を主張せざるを得なかったと思われます。
幸い、佐賀県販売店が電話の会話を録音していましたので、販売店が電話で部数を注文しているとの西日本新聞社の主張が虚偽であることの証拠として、その録音データーを裁判所に提出しました。

私どもは、西日本新聞社が虚偽の主張をしていることを、証拠に基づき明らかにすることができましたので、裁判所が西日本新聞社を勝訴させるとは夢にも思っていませんでした。

高裁の不当判決を受けると最高裁に上告すべきか否か判断に悩むのですが、私は押し紙裁判については最高裁の判断は求めるべきではないと考えています。というのも、押し紙裁判では、販売店よりの訴訟指揮をすすめてくれていた裁判官が新聞社よりの訴訟指揮をする裁判官に突然交代させられるなど、最高裁事務総局の意図によると思われる不可思議な裁判官の移動が頻繁に行われてきたからです。全国には新聞社を問わず押し紙裁判を提起したいと考えておられる販売店経営者とそれを支援する弁護士が多数おられます。
本件裁判で最高裁に上告して却下された場合、今後の押し紙裁判の提訴が事実上難しくなることが予想されますので、そのような事態は避けたいと考えている。

30年もの長期におよぶ劣悪な政治のために国民の生活が困窮しつづけています。このような時代状況を背景に司法に対する国民の期待は大きくなる一方だと考えられます。新聞業界の押し紙問題についても、司法の力でなんとか解決すべきであると考える裁判官が多数現れてくれることを望んでいます。
皆様方のご支援・ご協力のほどを、引き続きよろしくお願いします。