プロの眼が見た博報堂事件、テレビ視聴率の改ざんをめぐりアスカコーポレーションが提起した42億円訴訟①
執筆者:本間龍(作家)
前回まで数回、(株)アスカが博報堂に対して起こしている約15億円の訴訟内容を検討してきた。訴状項目は15点にもなり、広告のプロがその内容を見れば、思わず首を傾げてしまうというか、残念ながらこれはかなり水増ししていることがすぐに分かってしまう程度のものがほとんどであった。
そこで今回はもう一件の訴訟である、TVCM(注:テレビコマーシャル)の過剰請求について述べてみたい。
こちらは総額で約42億円、前述の制作費関係とは金額が桁違いに大きいものだ。もしこれが裁判で認められるようなことがあれば、博報堂の信用に大変なダメージを与えるだろう。訴状内容は以下の2点に大別される。
A)視聴率偽装による不正請求
B)放送しなかった番組、CMの不正請求
検証が進む省庁と博報堂のビジネス、航空自衛隊は業務内容が不明な請求書を開示、経済産業省は開示を延期
【サマリー】博報堂事件の第2ステージは、省庁と博報堂の関係を検証する作業だ。博報堂が省庁に提出した見積書、契約書、請求書の情報開示請求を進めている。作業は順調に進んでいるが、内閣府、文部科学省に続いて、防衛省でも、検証点が輪郭を現わしてきた。
総務省からは博報堂へ調査事業で11億9300万円、多数の高額請求を戸田裕一社長名で繰り返す
メディア黒書では、博報堂事件を断続的に報じてきたが、実は情報公開制度とは別のルートから入手した資料もある。
たとえば総務省が実施している「統計調査の実施事業」と題するプロジェクトにみる出費である。このプロジェクトの事業概要は次のようになっている。
憲法改正国民投票におけるメディア規制の重要性、「改憲賛成プロパガンダ」の恐怖
執筆者:本間龍(作家)
10月24日に続き、今月12日に参議院議員会館において行われた「国民投票法のルール改善を進める会」に出席した。同会はジャーナリストの今井一氏が中心となり、国民投票法のメディア規制を検討しようと立ち上げられた会だ。
今井氏をはじめ、堀茂樹(慶大教授)、井上達夫(東大教授)、田島泰彦(上智大教授)、南部義典(元慶大講師)、宮本正樹(映画「第九条」監督)の各氏や桜井充参院議員も出席して議論を行なった。
そこで国民投票の運動やキャンペーンに費やせる金額に上限を設けるべく国民投票法を改正すべきという点で一致、年明けには各党議員に働きかけ、超党派の議員連盟を設立して法改正を目指すことになった。
内閣府に続いて文科省でも博報堂がらみの資金疑惑、 民主党の蓮舫氏らは事業仕分けで何をしていたのだろうか?
メディア黒書で既報したように文部科学省は、平成27年度と28年度に「日本人の海外留学促進事業」(総額で約1億6000万円)の計画の中で、合計4件のウエブサイト制作を発注している。受注したのは、博報堂、博報堂プロダクツ、バズルの3社である。
受注年度、受注社、受注額は次の通りである。
【平成27年度】
博報堂:1500万円
博報堂プロダクツ:170万円
パズル:160万円
【平成28年度】
博報堂:2100万円
これらの記述の裏付けは、行政事業レビューシートである。その実物も提示しておこう。
ビジネスジャーナルが内閣府と博報堂の疑惑を報道、タイトルは『内閣府、博報堂へのCM発注額を「黒塗り」…発注額と契約金額に30倍の乖離、見積書』
12月12日付けのビジネスジャーナルが、内閣府と博報堂の黒い金疑惑を暴いた黒薮執筆の記事を掲載した。これは、メディア黒書でも報じてきた問題で、新聞・テレビが凋落する状況のもと、裏舞台で発覚した疑獄事件である。
概要は次の通りである。2015年度のPR費として内閣府と博報堂は、年間で約6700万円の契約を結んだ。ところが請求額が新聞の公共広告分だけで20億円を超えていた。見積書は存在しない。どこから資金を調達したのかもよく分からない。
内閣府が博報堂へ支払ったテレビに関連するPR費に関しては、情報開示資料が黒塗りなので、明細はいうまでもなく、総額も分からない。
莫大な金額が、博報堂を通じて新聞社とテレビ局に流れている疑惑があるのだ。国策プロパガンダの謝礼なのか?
■ビジネスジャーナル:内閣府、博報堂へのCM発注額を「黒塗り」…発注額と契約金額に30倍の乖離、見積書
■メディア黒書の参考記事:内閣府は2015年度の広告費をどこから調達したのか、少なくとも5億200万円の出所が不明、新聞社にも疑惑、大疑獄事件の様相
博報堂から自民党へ政治献金、深まる文部科学省と博報堂の闇、本当に必要なのか4件のウエブサイトに制作費・約4000万円
博報堂から自民党の政治資金団体である国民政治協会へ政治献金が支払われていることが判明した。政治資金収支報告書によると、2015年度の6月20日に115万円が、2016年度の6月20日にやはり115万円が国民政治協会へ支払われている。
献金の目的は不明だが、国の省庁から博報堂に多量の仕事を発注している事実があり、今後、その仕事の中身を徹底検証する必要がある。その中には、内容が不透明なものも含まれている。
たとえば次に示すのは、文部科学省と博報堂との間で交わされた「日本人の海外留学促進事業」の契約書と請求書である。博報堂は約8000万円を請求しているが、請求明細が黒塗りになっているので、この8000万円を何に使ったのかまったく分からない。
そこで筆者が別ルートで取材したところ、この事業は、2013年(平成25年)から開始されていることが分かった。このうち2016年度は次のような金の使い方になっている。
元博報堂・作家の本間龍氏がアスカの「15億円訴訟」を分析する、得意先の企業を欺く愚行の連続②
元博報堂の社員で作家の本間龍氏に、2016年5月にアスカコーポレーションが博報堂に対して起こした「15億円訴訟」の訴状を分析・評論してもらった。広告の専門家による連載の2回目である。1回については、12月5日付けの記事。
執筆者:本間龍(作家)
引き続き、アスカの博報堂に対する15億円訴訟の項目を検証してみよう。再掲するが、アスカが博報堂に起こした訴状の詳細は以下の通り。
1 情報誌制作費 7億7900万の過剰請求
2 撮影費 2億6400万 〃
3 タレント出演料 1億6600万 〃
4 アフィリエイト 1億8700万 〃
5 通販番組制作費・編集費 1億4700万 〃
6 PR活動費 895万 〃
7 企画・メディアプランニング費 3000万 〃
8 TVCM費 5300万 〃
9 新聞広告費 1100万円 〃
10 雑誌広告費 1700万 〃
11 ラジオ広告制作費 60万 〃
12 イベント費 2400万 〃
13 テレビ放映休止後の放映料 9700万 〃
14 ホームページ制作費 1300万 〃
15 通販番組受付業務費 4200万 〃
前回は8のTVCM費までを解説したが、その他で非常にいい加減さが目立つのが、12の「イベント費」だ。アスカは08年から12年まで年一回、メディア関係取引先を招いて「互礼会」というイベントを開催していて、その実施を博報堂に任せていた。
博報堂は、その請求金額総計に対し「博報堂営業管理費」10%を請求していたにも関わらず、アスカ側の了解のないまま「企画制作進行費」なる別項目を立てて二重請求がなされていた、とアスカ側に指摘されている。
内閣府は2015年度の広告費をどこから調達したのか、少なくとも5億200万円の出所が不明、新聞社にも疑惑、大疑獄事件の様相
内閣府と広告代理店、それに新聞社に重大な疑惑がかかっている。
「平成27年度政府広報国内予算の執行状況」と題する内閣府の文書によると、2015年(平成27年)度における内閣府のメディア向け予算執行額は43億1500万円だった。ところが電通や博報堂など広告代理店各社が内閣府に請求した金額の合計は、筆者が『週刊金曜日』や『ZAITEN』に記事を書く際に集計したところ、予算執行額をはるかに上回る48億1700万円だった。両者の差異は、5億200万円である。
この5億200万円の中身は何か?このお金はどこから調達されたのか、出所が分からない。
これらの金は、広告代理店を通じて、新聞広告やテレビCMの費用として新聞社やテレビ局に流れ込んでいる。
問題が発覚した発端は、博報堂と内閣府の間で交わされた契約書の年間契約額が約6700万円しかないのに、博報堂が20億円を超える新聞広告代金を請求していた事実が発覚したことである。次に示すのがその証拠だ。