訴権の濫用を問う横浜副流煙裁判、和解が決裂、東京高裁
東京高裁が和解を提案していた横浜副流煙事件(控訴審)は、被控訴人(作田学医師ら4人)が、和解を拒否したために、8月20日に判決が言い渡されることになった。控訴人(藤井敦子さんら2名)は、作田氏が作成した診断書に瑕疵があったことを認める内容の和解案を提案していた。
◆訴権の濫用
既報してきたようにこの裁判は、藤井さんらが、前訴の勝訴を受けて、起こした反スラップ裁判である。藤井さんの夫・将登さんが吸う煙草の副流煙で健康を害したとして、隣人家族3人が4518万円の金銭支払いを求めて起こした裁判が、訴権の濫用に該当するとして起こした訴訟である。
前訴の中で、最も大きな争点となったのは、作田医師が原告3人のために交付した診断書である。そこには「受動喫煙症」という病名が付されていたが、診断のプロセスに重大な疑惑があることが次々と判明した。
たとえば作田医師がトラブルの現場を確認することなく、患者の訴えを鵜呑みにして、一方的に将登さんを副流煙の発生源と事実摘示したことである。また、原告のひとりに約25年の喫煙歴があった事実である。さらに別の原告については、診察することなく、診断書を交付した事実である。
面識すらなかったのである。この点に関して原審は、医師法20条違反を認定した。
つまり事実的根拠に乏しい診断書を、根拠として4518万円の高額訴訟を起こしたのである。しかも、提訴した後も作田医師は、5通もの意見書を作成して将登さんを批判するなど、一貫して原告3人を支援し続けた。
作田医師が交付した診断書には前提事実に根拠が乏しく、しかも、それを自覚していた可能性が高い。作田医師が理事長を務めていた日本禁煙学会は、訴訟提起も推奨しており、藤井さんのケースは、訴権の濫用に該当する可能性がある。
8月20日に下される判決内容とはかかわりなく、不当裁判に対して「反訴」することは、スラップを防止する上で重要である。