2013年08月05日 (月曜日)

公共事業は諸悪の根源? 長良川河口堰に見る官僚の際限ないウソ

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

参院選で自民が圧勝しました。アベノミックス効果なのでしょう。でも、消費者物価が0.4%上がったとはいえ、中身は円安でエネルギー価格が上昇。電気・ガス料金に跳ね返っただけです。給料が上がらず、公共料金の高騰では、ますます家計はひっ迫します。

自民の選挙を支えたのは、既得権益を持つ強大な利権組織です。これから彼らは、大手を振って見返りを要求するでしょう。自民の多くの議員の言動を聞いても、これまで大借金を溜めてきたことや、原発を安全策を怠ったまま推進してきたことにも真摯な反省はありません。高市早苗政調会長の発言が、その典型です。

結果、消費税を上げても、また税収は既得権益層を潤す公共事業に注ぎ込まれます。家計が潤ってこそ、人々に買う意欲が芽生え、デフレ脱却の好循環が生まれます。でも、とてもそうなりそうにありません。来年の今頃、ますます物価は上がり、需要は落ち込む消費税不況に見舞われるのではないかと、私は恐れています。

そうならないためには、公共事業の大盤振る舞いをまず止めることです。官僚利権を排し、規制緩和で民間活力を強め、この国の経済を復活させる以外にないのです。

これまで3回にわたりこの欄で、多額の税金を注ぎ込み、官僚・政治家が利権目当てに進める大型公共事業の内実がいかなるものだったのか、私が解明しながら朝日が記事を止めたことで、読者・世間の皆さんに伝えることが出来なかった長良川河口堰事業の「真実」について書いてきました。今回はその4回目です。今回も、前回までのおさらいから始めます。

(参考:毎秒7500トンが流れた時のシミュレーション水位)

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2013年08月01日 (木曜日)

最高裁が受け付ける事件は年間で4000件超、3小法廷で処理できるのか? 

「最高裁判所における訴訟事件の状況」と題する最高裁による報告書によると、2010年度に受け付けた上告事件は2036件、上告受理事件は2485件である。

上告は、高裁の判決内容が日本国憲法の趣旨に合致していないと判断した時などに行うことができる。上告受理申立は、高裁の判決内容が既に存在する判例と乖離していると判断したときに行うことができる。

上告事件と上告受理申立の件数の総計は、2010年度の場合、4521件である。

周知のように最高裁には小法廷と大法廷があり、大半の事件は小法廷で処理される。小法廷は、第1から第3に分かれて、それぞれに4名から5名の判事が配属されている。

最高裁が1年間に受け付ける事件数が4000件を超え、小法廷の数はたったの3つ。読者はこれらの数字を前に、疑問を感じないだろうか。次の計算式で導きだされる数字は興味深い。

 4000件÷3=1333件

単純に計算するとひとつの小法廷が年間に1000件を優に超える事件を処理することになる。それぞれの事件について膨大なファイルが存在し、しかも、裁判はひとの人生を左右するわけだから、「速読」するわけにもいかない。ひとつひとつの記述を慎重に検証していかなければならない。それが最高裁判事という公務員の役割である。

しかし、常識的に考えて、最高裁に上告(あるいは、上告受理)された事件が、綿密に検証されているとは思えない。第一に、物理的に不可能ではないか。大半の事件が、判事の「めくら印」で終結している可能性が高い。

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2013年07月31日 (水曜日)

最高裁、木村元昭裁判官が判決で言及した資料・情報の公開を拒否 証人尋問を実施せずに訴外者を誹謗中傷

最高裁に対する情報公開請求についての連載・第2回。下記の請求に対して、7月25日付で回答があったので紹介する。

請求内容は次の通りである。

上告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、貴裁判所が2013年6月18日に、上告を棄却することで認定した福岡高裁判例(平成23年[ネ]第390号)について。 同判決の中に、上告人真村と彼の代理人弁護士らが「黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白」(33項)という記載がある。ここで言及している「情報」「資料」に該当する証拠をすべて公開せよ

請求を申し立てた背景を説明する前に、最高裁からの回答を、下記に示す。

(最高裁からの回答=ここをクリック)

◆判決文で訴外者を誹謗中傷  

本サイトで頻繁に取り上げている真村裁判(第2次)の判決の中で、福岡高裁の木村元昭裁判官が、訴外の立場にあるわたしのジャーナリズム活動を誹謗中傷したことである。真村裁判は2008年7月、読売がYC広川の店主・真村久三さんを一方的に解任したのをうけて、真村さんが地位保全を求めた裁判である。木村裁判官は、真村さんの解任理由のひとつとして、わたしのジャーナリズム活動を「幇助」したことをあげた。

ちなみに裁判のプロセスの中で、わたし対する証人尋問は行われていない。尋問を行わずに訴外の立場にある者の行為に対して、実名で断定的な認定を行ったのである。

繰り返しになるが、問題となっている判決の記述を再度引用しておこう。(既に熟知されている読者は、スキップしてください)

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)??

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。?

?? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。?

判決内容を予約すると、次のようになる。

? ?黒薮は、「押し紙」についての記事を執筆しているが、「押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由があると認めるに足りる証拠もない」。

?それゆえに真村さんや真村さんの弁護団が黒薮の取材に協力したことは、黒薮の名誉毀損的なジャーナリズム活動を「幇助」したことになる。

?それは読売の名誉と信用を害するものである。

?従って真村さんを解任する理由として正当である。

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2013年07月29日 (月曜日)

最高裁、真村裁判の関連資料を公開できず プロセスカードの存在も疑問 検証作業を経ずに判決を下した可能性も

最高裁に対して行った情報公開請求に対する回答があった。そこで2回に渡って回答内容を検討したい。第1回目は、6月26日付けで行った次の情報公開請求に対する回答を取り上げる。

結論を先に言うと、最高裁は情報開示請求を拒否した。わたしからの請求内容は次の通りである。

上告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、2013年6月18日に、上告を棄却するに至る手続き、議論などのプロセスの内容を示す全文書を公開せよ。

回答は次の通りだった。

(回答=ここをクリック)?

文中の上告人・真村久三とは、YC広川(読売新聞販売店)の元店主・真村久三さんである。

◆検証期間は7カ月  

真村さんは2001年に読売から、店主としての地位を解任されそうになり、地位保全の仮処分を申し立てた。その後、本訴を提起。2006年9月に地裁で勝訴判決を受けた。さらに2007年6月に高裁でも勝訴する。同年12月には、最高裁が読売の上告(受理申立て)を棄却して判決が確定した。

ところがその7カ月後の2008年7月に、読売は真村さん経営のYC広川を一方的につぶした。そこで真村さんは再び、地位を保全するために仮処分を申し立てると同時に、本訴を起こした。これが第2次真村訴訟である。

まず、仮処分の申し立ては、1審から4審(最高裁への特別抗告)まで真村さんの勝訴だった。ところが不思議なことに本訴では、真村さんが敗訴。高裁と最高裁も、それぞれ下級審の判決を認定して、2013年に真村さんの敗訴が確定した。

第2次真村訴訟を検証するに際しては、次の大前提をおさえておかなければならない。

1、2007年12月に第1次真村訴訟が最高裁で決着して、真村さんの地位保全が確定したわけだから、第2次訴訟で審理の対象になるのは、2008年1月(厳密に言えば、最高裁判決の翌日)から、店主を解任された7月末までの7ヶ月の間である。この7ケ月の間に、店主解任が正当化されるような重大な「不祥事」を起こしたか否かという点である

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2013年07月25日 (木曜日)

「押し紙」(新聞の偽装部数)問題の背景にある意外なメディア・コントロールの手口

新聞の偽装部数(「押し紙」)や「折り込め詐欺」(折込チラシの水増し、あるいは「中抜き」)の何が問われるべきなのだろうか?新聞の商取引に不正な金銭がからんでいることは、誰にでもわかる。

しかし、商取引の諸問題とは別次元で、見過ごされがちな、もう一つの問題がある。結論を先に言えば、新聞の「闇」が、政府、警察、公取委といった権力の中枢にいる人々によるメディア・コントロールの恰好の道具になっている可能性である。

仮に次のような状況を想定してほしい。現在、憲法改正が国民的な関心を集めている。改憲に踏み切りたい政府に対して、(実際にはあり得ないが)中央紙が護憲のキャンペーンを展開しはじめたとする。

これに対して政府は警察庁に働きかけて、「押し紙」問題と「折り込め詐欺」を刑事事件として扱うように指示した。この点が新聞社の最大の泣き所であるからだ。

かりに日本全国の新聞社がかかえる「押し紙」が3割と仮定する。この場合、 公権力が「押し紙」を摘発すれば、単純に計算して、新聞社の販売収入は3割減る。さらに紙面広告の媒体価値を決めるさいに考慮される新聞の公称部数も、「押し紙」の排除に伴って減数されるわけだから、広告収入も激減する。

そうなるとバブル崩壊のような現象が起こりかねない。「押し紙」の存在を前提とした予算規模で行ってきた新聞社経営が不可能のなる。

このような構図を逆説的に考えると、公権力は、新聞ジャーナリズムをコントロールするために、「押し紙」や「折り込め詐欺」を故意に放置しているともいえる。ここに日本の新聞ジャーナリズムが徹底した権力批判ができない本当の原因があるのだ。

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2013年07月24日 (水曜日)

チラシを140枚発注したのに、販売店にはたった98万枚、折込チラシの「中抜き」問題で被害情報収集の窓口がオープン

メディア黒書に匿名でブログが送られてきた。情報提供を呼びかける内容である。内容を確認したところ、事実関係に誤りはないので、読者に紹介することにした。

http://alpha-trend.info/

ブログの中で批判の対象になっているのは、アルファトレンドという広告代理店である。

この会社は読売広告社の元社員が設立した会社で、事業内容のひとつに新聞に折り込むチラシの営業がある。しかし、新聞販売店へのチラシの運搬・搬入作業は、他の広告代理店にゆだねているようだ。

匿名ブログの「被害者1」と「被害者2」で紹介されている被害のケースでは、次のようなルートで、発注・受注したチラシを新聞販売店に搬入している。その過程で「不正行為」が行われていたのだ。

1、アルファトレンド(チラシの受注)

2、マーケティング読宣(チラシの印刷等)

3、読宣(販売店へのチラシの搬入)

「1」から「3」で示すように、チラシの発注・受注から、販売店へ搬入するまでに3つの広告代理店が業務を担当した。これらのプロセスで何が行われたのだろうか?

【黒薮注】ただし、このケースで裁判所は、マーケティング読宣と読宣は潔白であると判断している。最下流のアルファトレンドの責任が問われたのである。

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2013年07月22日 (月曜日)

ベネッセの携帯基地局問題で地元住民らがブログを開設、高齢者に対する侮辱に怒り

東京都目黒区でベネッセが経営する老人ホーム「グランダ八雲」の屋上にNTTドコモが携帯基地局を設置する計画が持ち上がり、それに反対する住民らが運動を広げるためのブログを立ち上げた。次のサイトである。

 ■グランダ八雲目黒(老人ホーム)にドコモが携帯基地局を建設、入居者から反対の声!!

既報したように「グランダ八雲」の地権者は、日本マクドナルドの元オーナー藤田商店である。藤田商店のビルを借りて、ベネッセが老人ホームを経営していたところ、屋上に基地局が設置されることになったのである。

つまり目黒区八雲の基地局問題には、日本を代表するベネッセ、NTTドコモ、藤田商店とう3企業がからんでいることになる。

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2013年07月19日 (金曜日)

ニカラグア革命34周年  1984年の取材と2008年の裁判による取材中止

中米のニカラグアは、7月19日、34回目の革命記念日を迎える。1979年の7月17日の明け方、独裁者ソモサが、自家用ジェットでマイアミへ亡命した。その2日後の19日、FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)が首都マナグアに入城して新生ニカラグアが誕生した 。

わたしが最初にニカラグアを取材したのは1985年で、最後に取材したのは1995年である。2008年に取材を予定していたところ、読売新聞社(渡邊恒雄主筆兼新聞文化賞受賞者)から3件の裁判を仕掛けられて、取材は中止に追い込まれた。同じ出版人から、このような妨害を受けるとは、夢にも思わなかった。

すでに18年もニカラグアの土を踏んでいないわけだから、わたしにはもはや現在のこの国について語る資格はない。せいぜいラテンアメリカから発信させるニュースを紹介するのが精いっぱいだ。

それにもかかわらずニカラグアは、わたしの原点である。わたしがルポルタージュを書こうと思って対象にした最初の国であるからだ。

取材といっても、公式のルートで取材先を紹介してもらい、それに沿ってインタビューをしたわけではない。わたしは公式の会見で発せられる言葉をほとんど信用していない。初対面の記者に対して、会見者がいきなり真実を語ることは、まずありえないからだ。

バイアスがかかっていると考えて間違いない。特に心に傷を負った人の中には、コミュニケーションの手段をみずから断ってしまうことも珍しくない。会見者の話はステレオタイプのことが多い。

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2013年07月18日 (木曜日)

携帯基地局の撤去を求める三潴(みずま)裁判では、 住民を工事妨害で裁判所に引っ張り出した過去 NTTドコモの手口

NTTドコモは、過去に住民との間にどのようなトラブルを起こしてきたのだろうか?福岡県の三潴(みずま)町(現在は、久留米市に編入されている)のケースを紹介しよう。

三潴町の生岩地区で、NTTドコモによる基地局を設置計画が発覚したのは、1999月である。現地の人々は、住民運動を組織して、反対署名に乗り出した。同時に別の候補地を探す作業にも着手した。

両者は延々と話し合いを重ねた。?? 2001年5月に、ドコモは工事現場に重機を持ち込んだ。?? 結局、双方が納得できる結論には至らなかった。

『隠された携帯基地局公害』(緑風出版)は、NTTドコモが工事を再開したころの様子について次のような重要な事実を記録している。

工事再開が告げられ、当日は、ドコモは約30人の作業員、ガードマン、カメラマン等を引き連れて工事に来て住民を写真・ビデオを撮りまくって1時間ほどで早々に引き上げていった。

問題はドコモが次に取った行動である。同書によると、

2001年の師走の12月26日、突然裁判所から2002年1月9日に出頭命令が届き、ドコモから工事妨害で訴えられていたことが判明。弁護士事務所は正月休みに入っており、やっと1月7日に馬奈木昭雄弁護士に代理人を引き受けて頂いた。ドコモの姑息で卑劣な手口を知って住民の結束が固まり、2002以降、ドコモを告発した裁判を開始した。

このところSLAPP(訴訟を起こすことで、経済的にも精神的にも住民運動体を追い詰め、言論や集会結社の自由を抑圧する戦略。小泉内閣主導の司法制度改革の時代に浮上してきた。)が流行しているが、2001年ごろには、すでにそれに類似した事件が起こっていたのである。

結論を先に言えば、この裁判は住民側の敗訴だった。本サイトで既に述べたように、結審の日に裁判官が交代した。新任の田中哲郎裁判官は、三潴訴訟よりも先に結審した裁判で、住民を敗訴させた人物である。その田中裁判官は、三潴訴訟でも、住民を敗訴させたのである。

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2013年07月17日 (水曜日)

目黒区八雲の基地局問題が再燃 ベネッセの老人ホームの上に携帯基地局 NTTドコモの手口

このところ下火になっていた携帯電話基地局の設置を巡る電話会社と住民の間のトラブルが再燃している。

今年の2月、わたしはMNJ(マイニュースジャパン)に「NTTドコモがベネッセ経営の高級老人ホームに携帯基地局設置を計画、生活破壊リスク負わされる入居者と周辺住民」? と、題する記事を掲載した。

これは東京都目黒区でベネッセが経営する老人ホーム「グランダ八雲・目黒」の屋上にNTTドコモが携帯電話の基地局を設置する計画が浮上し、住民たちが反対運動に乗り出したことを伝えたものだった。

確かに老人になると、若年層と比較して、電磁波による人体影響(遺伝子毒性)は少ない傾向にあるらしい。(ただし心臓ペースメーカを使用している人は別)。だからと言って老人ホームの屋上に基地局を設置するのは、非常識ではないかとの声が上がった。企業コンプライアンスが問題になったのである。

住民らが署名を集めて、NTTドコモに提出したところ、設置計画は一時的にストップした。ベネッセは、基地局の設置は認めない方針に転換したようだ。 少なくとも住民に対しては、そんなふうに説明したという。

しかし、ベネッセはホームを経営しているとはいえ、ビルの地権者ではない。地権者は、日本マクドナルドの元オーナーである藤田商店である。そのために藤田商店とNTTドコモが、計画を進める可能性があった。

7月に入ってNTTドコモが、住民たちにお盆明けに設置工事を再開すると通知してきた。

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2013年07月15日 (月曜日)

長良川河口堰に見る官僚の際限ないウソ  公共事業は諸悪の根源

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

参院選の投票日が近付いてきました。私はもう、投票所に足を運ぶ気力さえありません。「利権政治を変える」のが、民主だったはずです。でも、既得権益を持つ団体や労組に媚びを売りました。

そこをしたたかな官僚に取り込まれ、この有様です。維新も官僚と対決するよりも、憲法改正にご執心では、今の惨状は最初から予想されました。結果、ブーメランで元祖利権政治の自民一党支配に戻るなら、ここ何十年、国民と野党政治家は何を学んだかです。

責任は幻想を振りまき、失望させた民主、維新にもあります。でも、何より有権者である国民が政治家任せで、自ら定見を持たずに政策を検証して来なかったことにあると思います。

G8でも、日本の財政再建が急務であると、釘を刺されました。国際社会の方が、この国の現状を余程客観的に見ています。足元を見れば、「異次元の金融緩和」との振れ込みにかかわらず、長期の国債金利は高止まりしています。このまま金利が上がり続ければ、巨額の借金を抱えるこの国は沈没しかありません。

問題は、溜まり溜まった官僚・政治家の腐敗により肥満化した財務体質からいかに脱却し、強靭な筋肉質にこの国を変えられるかです。「国土強靭化」などと称して、自民の進める公共事業の大盤振る舞いなど、もってのほかです。

財政再建のために増税が不可避なら、官も身を切る。私は「強靭化」という「肥満化法案」ではなく、増税するなら、増税分と同額の政策経費削減を義務づける法案を提案します。つまり、1兆円増税するなら、これまでの予算からも1兆円削る法案です。それなら2兆円の財政改善効果が生まれ、改革が加速します。そんな法案作ってくれる党があれば、私は喜んで投票所に行きます。

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2013年07月12日 (金曜日)

受験体制と深刻な社会病理、裁判官の人事異動と不可解な判決 第2次真村裁判と木村元昭裁判官

「木を見て森を見ない」とは、物事の本質を見極める代わりに、枝葉末節の部分を取り上げて、それを全体像とみなす論法である。いわゆる揚げ足取りである。真村裁判では、さまざまな面で、「木を見て森を見ない」現象が観察できる。

たとえば真村事件の本質は何かという問題である。本サイトで繰り返し説明してきたように、事件の発端は2001年に読売が真村さんに対して、営業・配達区の一部を返上するように求めたことである。

新聞は再販商品であるから、各販売店の営業・配達区は厳密に区割りされている。そのために店主になるに際しては、前任者にお金を支払って営業・配達区を買い取る。真村さんも、販売店開業の準備資金を含めると1000万円を優に超える額を投資している。

従って読売の申し入れを断る権利がある。真村さんはそれを行使したに過ぎない。しかも、真村さんが申し入れを受け入れた場合、返上された営業・配達区は、地元の有力店主の弟が経営するYCへ譲渡される予定になっていたという。

理不尽な要求を断ったところ、「改廃」カードを突き付けられ、やむなく裁判所へ訴えたのである。これが真村事件の本質である。

ところが裁判の結果は、1次裁判では完全勝訴したが、2次裁判で敗訴したあげく、約3600万円の間接強制金返済を読売から迫られ、自宅兼事務所を仮差押えされる状態になっている。これだけでも異常なことである。

真村さんに謝罪して、慰謝料を支払うのは、読売の側ではなだろうか?

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2013年07月11日 (木曜日)

憲法21条を無視した恐ろしい判決、裁判官の人事異動と不可解な判決?第2次真村裁判と木村元昭裁判官?

【10日付け記事の続編】

木村元昭裁判官が判決の中で示した真村久三さんの店主解任理由を順を追って整理すると次のようになる。

1、読売新聞販売店には「押し紙」が存在しない。

2、それにもかかわらず真村と彼の弁護団は、黒薮が書く「記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら」情報提供を行った。ただし、具体的にどのような情報を提供したのかは、明記されていない。また、何月何日付のどの記事を指しているのかも不明。

3、真村と弁護団は、「黒薮の上記記事等(?)の掲載を幇助した」わけだから、「その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害する」。

4、従って読売が、黒薮を「幇助」した真村を失職させる「正当理由の一事情として考慮し得る」。

念のために、再度、木村元昭裁判官が執筆した判決の問題部分を引用しておこう。

被控訴人(読売)の指摘する黒薮の記事等には、別件訴訟における控訴人(真村)の主張のほか、被控訴人(読売)が、販売店に押し紙を押し付け、それが大きな問題となっていることなどが記載されているが、押し紙の事実を認めるに足りる証拠はなく、控訴人(真村)及び黒薮において、押し紙の存在が事実であると信じるにつき正当な理由がると認めるに足りる証拠もない(かえって、控訴人は、平成13年には、現実には読者が存在しない26区という架空の配達区域を設けていたところ、これを被控訴人[読売]も了解していたと認めるに足りる証拠はない。)。

そうすると、控訴人において、被控訴人による違法不当な行為の存在を指摘することが容認される場合があるとしても、本件は、これに当たらないというべきである。?? そして、控訴人(真村)や控訴人代理人(江上弁護士ら)が、上記のような記事の執筆に利用されることを認識、容認しながら、黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助したというべきであるから、たとえ控訴人自身が、押し紙等の批判をウェブサイト等を通じて行ったものではないとしても、その情報や資料の提供自体が、被控訴人の名誉又は信用を害するというべきであり、本件販売店契約の更新拒絶における正当理由の一事情として考慮し得る 。

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しばき隊による大学院生暴行事件、加害者が取材していた作家を提訴

添付した写真は、2014年12月の深夜に、大阪北新地で40分に渡って殴る蹴るの暴行を受けた大学院生(当時)の...

読売新聞「押し紙」裁判、判決日を3月28日に急遽変更、不自然な...

大阪高裁は、3月7日に予定していた読売新聞(大阪)を被告とする「押し紙」裁判の判決日を、急遽延期した。新しく...

市民運動の外圧に屈した『週刊金曜日』、タブーなき編集方針はどこ...

次の記事は、『紙の爆弾』(2023年10月号)に掲載した記事のネットでの再掲載である。原題は、「週刊金曜日 ...

台湾の蔡英文総統と全米民主主義基金(NED)のずぶずぶの関係、...

米国の外交政策を考えるときに、欠くことができない視点がある。それは全米民主主義基金(NED = Nation...

化学物質過敏症の診断をめぐる新しい流れ、一定の割合で精神疾患

化学物質過敏症がクローズアップされるようになっている。化学物質過敏症は、文字どおり、ある種の化学物質を体内に...

横浜副流煙裁判を描いた映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立...

映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立映画賞(London Independent Film Award)...

市民運動に対するタブー 『週刊金曜日』と『人権と利権』の書籍広...

株式会社金曜日の植村隆社長が鹿砦社の『人権と利権』に「差別本」のレッテルを張った事件からひと月が過ぎた。7月...

多発する携帯電話の基地局設置をめぐるトラブル、楽天モバイル、人...

携帯電話の基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルが絶えない。この1年間で、わたしは40~50件の相談を受...

ジャニー喜多川のパワハラ、報道のタイミングが25年遅れた 

ジャニー喜多川の性癖が引き起こしたパワハラにようやくマスコミの光があたった。とはいえ報道のタイミングがあまり...

新刊の『新聞と公権力の暗部』-(「押し紙」問題とメディアコント...

新刊の『新聞と公権力の暗部』-(「押し紙」問題とメディアコントロール)《鹿砦社》の書店販売が開始された。 ...

「押し紙」驚愕の実態 新聞社不正収入35年で3兆円以上、統一教...

◆「押し紙」による不正収入は年間932億円規模 田所 実態として日本には5大紙を含め地方紙もたくさんあ...

【転載】「日本では、主要メディアと政府との距離が非常に近い」─...

情報には国境がなく、知ろうとする意思さえあれば、名も知れぬ国の天気や画像や中継動画までをも確認することができ...

ウィキリークスの創立者ジュリアン・アサンジをめぐる問題、言論弾...

ウィキリークスの創立者ジュリアン・アサンジをめぐる問題、言論弾圧という西側諸国の汚点 黒薮哲哉 ウィキ...

新聞業界から政界へ政治献金598万円、103人の政治家へ「お小...

昨年の11月に総務省が公開した2021年度の政治資金収支報告書によると、新聞業界は政界に対して、総額で598...

原告準備書面(2)(3)、藤井敦子陳述書の公開、日赤医療センタ...

横浜副流煙裁判の「反訴」で原告が裁判所へ提出した3件の書面を公開しよう。3件の書面は、事件の核心をずばり突い...

毎日新聞社長室へ公開質問状、「押し紙」問題についての見解、販売...

企業には広報部とか、広報室と呼ばれる部門がある。筆者のようなルポライターが、記事を公表するにあたって、取材対...