読売の検索結果

2026年04月14日 (火曜日)

2月度のABC部数、読売の凋落に歯止めかからず、年間で約39万部減、読売西部本社の全部数に匹敵

2026年2月度の新聞のABC部数が明らかになった。それによると、読売新聞は年間で約39万部の大幅な減部となった。読売西部本社の2月のABC部数が、約39万部だから、西部本社の部数をすべて失ったに等しい。凋落傾向には歯止めがかかっていない。

朝日新聞は約16万部の減部、さらに毎日新聞は約19万部の減部となった。

毎日新聞の2月度のABC部数は約110万部であり、年間減部は約19万部だから、読売新聞よりも減部率ははるかに高い。日経新聞は約11万部の減部、産経新聞も5万部程度を失っている。

詳細は次の通りである。

朝日:3,118,265(162,875)
毎日:1,108,806(188,772)
読売:5,212,170(389,059)
日経:1,220,389(107,038)
産経:761,322(49,945)

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周知のように、日本ABC協会が公表しているABC部数には「押し紙」が含まれており、実際に販売店が配達している部数は、それよりもはるかに少ない。

「押し紙」とは、広義には新聞社が販売店にノルマとして買い取りを強制した新聞を意味する。厳密に独占禁止法の新聞特殊指定の定義に当てはめれば、新聞販売店が真に「必要としている部数」(読者総数に2%の予備紙を加えた部数)を超えて新聞社が搬入した部数を指す。

読売新聞の代理人である喜田村洋一・自由人権協会代表理事は、この20年ほどの間、「押し紙」の定義は前者であると主張し、「読売には1部も『押し紙』は存在しない」と法廷などで公言してきた。しかし、販売店の店舗に配達されない新聞が山積みになっているのは紛れもない事実である。

これらの新聞もABC部数に含まれ、それが紙面広告の価格に影響する以上、見解を改め、自己批判すべきだろう。この記事の写真が示す実態を、喜田村弁護士と裁判所はどのように説明するのだろうか。

2026年04月06日 (月曜日)

【報道と人権8】武富士から読売まで、メディアを被告とする高額訴訟、その背景に何があるのか?

真村訴訟に端を発した一連の事件について記述すれば、際限がない。連載「報道と人権」で7回にわたって取り上げた裁判のほかにも、さまざまな裁判が派生して起きている。

しかも、真村事件に関連したほとんどの裁判で、喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として登場した。喜田村弁護士は、法廷が開かれるたびに東京から福岡へ足を運んだ。その情熱は並大抵ではない。

筆者は、護憲派の自由人権協会を代表する人物が、改憲派の読売に対して誠心誠意を尽くし、「押し紙」は一部も存在しないと繰り返す姿に違和感を覚えた。喜田村弁護士がどのような思想と心情の持ち主なのか、好奇心を刺激された。

◆◆

喜田村弁護士は、過去にどのような裁判に関わってきたのだろうか。よく知られている例としては、1980年代に問題となった薬害エイズ事件がある。これは、加熱処理をしなかった血液凝固因子製剤を治療に使用したことにより、多数のHIV感染者やエイズ患者を生み出した事件である。

非加熱製剤によるHIV感染の薬害被害は世界的に発生したが、日本では全血友病患者の約4割にあたる1800人がHIVに感染し、そのうち700人以上が死亡したといわれている。

起訴されたのは、帝京大学医学部附属病院第一内科の責任者だった安部英、ミドリ十字の代表取締役であった松下廉蔵・須山忠和・川野武彦、そして厚生省官僚だった松村明仁である。

一審判決では、ミドリ十字の3人に実刑判決が、松村明仁に執行猶予付きの有罪判決が下されたが、安部は無罪だった。安部の代理人を務めたのが、喜田村弁護士と、はやり自由人権協会の弘中淳一郎弁護士である。

弘中弁護士は、消費者金融の武富士がフリーランス・ジャーナリストに高額訴訟を起こした際にも、武富士の代理人を務めた。巷では、弘中氏を「無罪請負人」と評価する声もあるが、同時に「訴訟ビジネス」ではないかという批判もある。裁判は、武富士の敗訴だった。

喜田村弁護士や弘中弁護士は、ロス疑惑事件の三浦和義氏を無罪に導いたことでもよく知られている。事件の詳細は省略するが、三浦は、事件後に米国領サイパンで殺人罪及び殺人の共謀罪の容疑で逮捕された。その後、1981年に獄中で自殺した。この事件は、日米で見解が異なり再検証が必要なのである。

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2025年に読売が経済誌『ZAITEN』を提訴した事件でも、喜田村弁護士が読売の代理人として登場している。現在の権力機構と新聞社を巨大でグレーな資金で結び付けている「押し紙」や、読売の販売政策について、喜田村洋一・自由人権協会代表理事が、法廷どのような見解を示すのか、注目したい。ジャーナリズムは、それを記録しておくべきだろう。(終)

2026年03月28日 (土曜日)

【報道と人権6】読売と喜田村洋一・自由人権協会代表理事らが、1年半の間に3件の裁判提起、約8000万円の金銭を請求

2009年7月、読売新聞は、筆者が『週刊新潮』(2009年6月11日号)に執筆した記事に対し、5500万円の金銭支払いを求める裁判を起こした。読売からの3件目の裁判である。

この裁判でも、やはり喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売の代理人として、裁判闘争の先頭に立った。

係争になった記事のタイトルは、「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る」であった。滋賀県のポスティング会社(チラシの全戸配布業者)が、大津市など滋賀県の主要都市を対象として実施した大規模な「押し紙」実態調査の結果を紹介したものである。

それによると、読売の「押し紙」率は18.4%であった。これは他社と比較するとかなり低い数字である。しかし筆者は、全国的に見れば30〜40%はある可能性を指摘した。さらに、「押し紙」による不正収入が、一社平均(朝日、読売、毎日、産経)で年間360億円程度になるとする試算も示した。

これに対し、喜田村弁護士は訴状の中で次のように指摘した。

「本件記事は、原告らが日本全国で発行する『読売新聞』の発行部数の30%〜40%は、実際には読者に販売されない『押し紙』であり、原告らは、これにより年間約360億円もの不正な収入をあげ、これ以外にも紙面広告の収入を不正に取得していると報じるものであるから、これが原告らの社会的評価を低下させることは明らかである。」

読売は、自社には1部の「押し紙」も存在しないと主張して、高額訴訟を提起したのである。

結論を先に言えば、この3件目の裁判は読売の勝訴となった。東京地裁は385万円の支払いを筆者と新潮社に命じ、控訴審でも読売が勝訴した。

その結果、読売には1部の「押し紙」も存在しないという見解が、司法判断として示されたことになる。

 

 

◆「読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません」

実際、東京地裁で行われた尋問においても、読売は自社に「押し紙」は一部も存在しないという主張を展開した。参考までに、宮本友丘専務(当時)が「押し紙」裁判の法廷で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言している。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

◆同業者からの言論抑圧

以上述べたように、読売と喜田村弁護士らは筆者に対し、2008年から2009年にかけての約1年半の間に3件の裁判を起こし、約8000万円の支払いを求めたのである。筆者は、3件の裁判に巻き込まれ、仕事の計画も大幅に変更せざるを得なかった。

元々、筆者はラテンアメリカの社会運動を取材をしていたのだが、2007年に真村訴訟で読売の「押し紙」政策が認定されたのを「押し紙」取材の到達的にして、原点に戻る予定だった。当時はラテンアメリカで次々と左派政権が誕生していた時代で、ニカラグア取材を計画していた。ところが、読売から裁判攻勢をかけられ、それが実現できなくなった。

出版人である同業者からこのような仕打ちを受け、しかも、その先頭に立った人物が人権擁護団体である自由人権協会を代表する人物である事実に、筆者は強い失望を覚えた。出版労連の支援はあったが、週刊誌や月刊誌は、読売の前で沈黙してしまった。「押し紙」を報じなくなったのだ。唯一の味方は書籍出版だった。

しかし、鬱蒼とした日々に追い込まれたのは筆者だけではなかった。販売店主としての地位を保全されたはずの真村久三さんの身の上にも、新たな災難が降りかかってきたのである。そして、その先頭に立ったのがはやり喜田村弁護士らであった。

すべて記録済みなので、順を追って紹介しよう。(続く)

2026年03月25日 (水曜日)

【報道と人権5】「窃盗」表現をめぐる法廷闘争、弁護士・喜田村らが起こした2件目の裁判、読売が最高裁で逆転勝訴

読売新聞の江崎徹志法務室長が筆者に対して著作権裁判を起こしてから、2週間後のことだった。筆者は自宅のポストに特別送達の通知が投函されているのを見つけた。そこで郵便局へ足を運び、封書を受け取った。封書には埼玉地裁の文字があった。開封すると、訴状が入っていた。

訴状の原告は、読売の江崎法務室長を含む読売の会社員3人で、1法人・3個人によるものだった。訴状を執筆したのは、喜田村洋一・自由人権協会代表理事である。請求額は2230万円で、この中には喜田村弁護士に対する弁護料200万円も含まれていた。最初に頭をよぎったのは、仮に敗訴すれば金銭面で破産に追い込まれるのではないかという不安だった。

◆「窃盗」という表現

読売が訴えたのは、真村裁判の福岡高裁判決が読売の「押し紙」政策を認定した後に発生したある事件について、筆者が「メディア黒書」に掲載した記事だった。

すでに述べたように、真村裁判の判例が確立した後、「押し紙」に苦しんでいたYCの店主らが、問題解決を求めて江上武幸弁護士に相談するようになった。

【連載4】で紹介したように、YC久留米文化センター前の平山春夫店主もその一人だった。平山さんの店では、江上弁護士に相談した時点で、搬入部数のおよそ50%が「押し紙」だった。

ところが、「押し紙」を排除して約3カ月後、読売は平山さんのYCを強制的に改廃した。しかもそのプロセスは強引で、江崎法務室長ら数人の読売関係者が事前連絡もなく平山さんの店を訪れ、本人の面前で改廃通知を読み上げ、契約を解除した。その後、読売ISの社員が店舗にあった折込チラシの束を搬出した。

この行為について筆者は、「メディア黒書」の記事で「これは窃盗に該当し、刑事告発の対象になり得る」と記した。

喜田村弁護士らが訴因としたのは、この「窃盗」という表現である。彼らは、折込チラシの搬出は契約解除後の行為であり、かつ平山さんの許可を得ていたため「窃盗」には該当しないと主張し、それを根拠に2230万円の金銭を求めてきたのである。

◆隠喩(メタファー)としての「窃盗」

確かに「窃盗」を文字どおりに解釈すれば、関係者の面前で行われた行為である以上、「窃盗」には該当しない。また、実際にチラシの束を運び出したのは読売新聞社の社員ではなく、読売ISの社員である。しかし筆者は、「窃盗」という言葉をレトリック(修辞法)としての隠喩(メタファー)として用いたのである。

隠喩の例としては、例えば次のようなものがある。

「あの監督は鬼だ」

「あの人は悪魔だ」

また、有名な例としては、

「踊子のように葉を差し上げた若い椰子は、私の愛を容れずに去った少女であった」(大岡昇平『野火』)

「人生は歩いている影だ」(シェイクスピア『マクベス』)

などが挙げられる。

筆者が記事の中で隠喩を用いたのは、この事件の悪質性が強いと感じたためである。突然店舗に現れた江崎法務室長が、平山さんの面前で改廃通知を読み上げたことは、平山さんに強い衝撃を与えた可能性が高い。仕事を失って動揺していたと想像できる。そのような心理状態の中で、読売ISの社員がチラシを搬出したのであれば、隠喩として「窃盗」と表現する余地はあったと考えた。筆者にとって、メディア企業が表現の問題で、このような訴訟を起こしたことは心外だった。

◆加藤裁判官と差戻審

判決は地裁・高裁ともに筆者の勝訴だった。その理由は、「メディア黒書」の記事が「窃盗」という事実を断定的に伝えること自体を主眼としていない、という点にあった。

読売は控訴したが、喜田村弁護士は控訴審の代理人から外れた。代わって登場したのは、TMI総合法律事務所の複数の弁護士である。同事務所は大手法律事務所であり、当時、元最高裁判事が少なくとも3名在籍していた(今井巧、泉徳治、才口千晴)

人脈が影響力を持つ日本社会の現状を踏まえると、筆者は控訴審の行方に不安を覚えた。しかし控訴審は一度の口頭弁論で結審し、結果は筆者の勝訴だった。ところが読売はさらに最高裁へ上告した。

最高裁は上告を受理し、口頭弁論を開いたうえで、筆者勝訴の判決を東京地裁へ差し戻した。差戻審では加藤新太郎裁判官が担当した。この人物について調べたところ、過去に少なくとも2度、読売新聞のインタビューを受けていたことが判明した。

また、読売の社員が最高裁の各種委員会に参加していることも確認された(2012年6月時点)。

金丸文夫:判官の人事評価の在り方に関する研究会
桝井成生:裁判制度の運用に関する有識者懇談会、明日の裁判所を考える懇談会

こうした事情から、筆者は最高裁が読売の上告について慎重な検討を行ったのか疑問を抱いた。

差戻審の判決では、加藤新太郎裁判官は読売の訴えを認め、筆者に対して110万円の支払いを命じた。読売社と3人の社員に支払う金銭は、メディア黒書でカンパをお願いして集めた。

なお加藤裁判官は裁判官を退任した後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所顧問などを経て、2021年に瑞宝重光章を受章している。

2026年03月13日 (金曜日)

【連載・報道と人権2】読売裁判の原点-真村訴訟と「押し紙」問題

読売新聞社と販売店(YC)の係争が裁判に発展した例は、数えきれない。両者間の裁判はいうまでもなく、係争を報じた報道機関や記者が読売から提訴されたケースもある。最近の例としては経済誌『ZAITEN』があるが、わたし個人も、2008年から2009年にかけて立て続けに3件の裁判を起こされた。請求額は総額で約8000万円だった。これらの裁判の読売代理人として、頻繁に仕事を受けてきたのが、喜田村洋一・自由人権協会代表理事である。

◆◆
一連の読売裁判を理解する上で欠くことができないのが、2002年に始まる真村訴訟である。この裁判と、そこから派生した裁判が、読売と喜田村弁護士の訴訟方針を典型的にあらわしていると言っても過言ではない。「読売に『押し紙』は一部も存在しない」という主張は、当時から現在まで変わっていない。その意味で、真村訴訟の読売の販売政策を考える上で最良のテキストなのである。

真村訴訟の原告である真村久三さんは、1989年9月に福岡県にあるYC広川の経営を始めた。それまでは自動車教習所の教官を務めていたが、自分で事業を営むことを希望し、販売店主に応募した。真村さんは幸いにも採用され、退職資金などをつぎ込んで開業にこぎつけたのである。自店で独自のユニフォームを作るなど経営の才覚のある人物で、当初は読売新聞社とも良好な関係にあった。

しかし、開業から10年あまりが過ぎた2001年、読売新聞との係争に巻き込まれる。読売本社が真村さんに対して、YC広川の営業区域の一部を隣接するYCへ譲渡するよう通告してきたのである。

YC広川が譲渡対象地区で配達していた新聞の部数は約500部(200万円相当)だった。全体の3分の1程度である。真村さんは、YC広川を開業するに際してこの地区の営業権も買い取っていたこともあり、読売の提案を断った。

これに対して読売は説得を続けたが折り合いがつかず、最終的にYC広川に対して改廃を通告したのである。改廃理由の一つとして読売が持ち出したのは、新聞部数の虚偽報告であった。この虚偽報告という行為は、『ZAITEN』裁判でも読売側が問題視している。「配達していない部数が1日あたり398部もあり、その分を加えた虚偽の売り上げを原告に報告していた」(訴状)と述べている。

周知のように、読売に限らずほとんどの新聞販売店には「押し紙」(広義の残紙)がある。しかし新聞社側は、自分たちが残紙の買い取りを強制したことはなく、新聞販売店の側が自ら注文したものであるとの見解を維持してきた。新聞の搬入部数と折込広告の搬入部数が一致するという基本原則があるため、販売店の側が部数を水増し購入しているという論理である。

真村裁判でもこの論理が持ち出され、喜田村弁護士らは、部数の水増しを隠すために真村さんが部数内訳を偽って読売本社に虚偽報告したと主張したのである。

それゆえに読売は、部数の虚偽報告を有力な販売店改廃の理由に挙げ、裁判所は残紙になっていた部数の性質を検証した。つまり残紙の性質は、読売が押し売りした部数なのか、それとも真村さんが自主的に買い取ったものなのかを審理したのである。地位保全裁判で「押し紙」が争点になったゆえんにほかならない。

仮に真村さんが部数をみずから水増しして虚偽報告していたのであれば、正当な改廃理由になる。販売店と新聞社の信頼関係を損なうことになるからだ。

※同じ時期に、福岡県久留米市内にある他の2店のYCでも改廃事件が起きた。
厳密に言えば、真村訴訟の原告は真村さんだけではなく、他の2店の店主も原告となった。しかし真村さんのケースが大きくクローズアップされ、後に真村訴訟と呼ばれるようになる。同じ時期に3店のYCが係争に巻き込まれた背景には、販売店の統廃合計画があった可能性も指摘されている。

 

◆◆

この裁判は、真村さんの全面勝訴だった。特に福岡高裁判決(2007年6月19日)では、真村さんの主張をほぼ全面的に認め、真村さんに対して慰謝料220万円を支払うよう命じた。地位保全裁判で高額の慰謝料が認められるのは異例のことである。

福岡高裁判決は、真村さんが約130部の残紙を隠して読売本社に虚偽報告していた事実を認定したものの、その責任は読売側にある判断した。以下の引用文中の「定数」とは、新聞の搬入部数のことを意味する。

「このように、一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。」

判決のこの箇所では、読売が実配部数と搬入部数の間に齟齬があることを認識していながら、正常な取引部数に修正しなかった事実を認定している。さらに裁判所は、その背景に読売の部数への異常とも言える執着があることを、次のように認定した。

「販売部数にこだわるのは一審被告(黒薮注:貴社のこと)も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために新聞販売店に対して増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、『目標達成は全YCの責務である。』『増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である。増紙こそ正義である。』などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて増紙のための努力を求めている。

米満部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、『読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。』とも述べている。」

◆◆

はからずも地位保全裁判の中で、読売の「押し紙」政策が認定されたのである。
しかし、真村訴訟の福岡高裁判決が読売の焦りを誘ったのか、その後、大変な事態が起きる。喜田村弁護士が読売のために奔走して、弁護士生命を危うくすることになる。(続く)

■参考資料:真村訴訟福岡高裁判決

2026年03月11日 (水曜日)

【連載・報道と人権1】販売店改廃をめぐる報道・人権・訴訟、読売とZAITENが対決、読売代理人には、「人権派」喜田村洋一・自由人権協会代表理事

新聞販売店の改廃(廃業)事件をめぐるトラブルをきっかけに、それを報じた月刊誌『ZAITEN』(財界展望新社)と読売新聞東京本社の間で訴訟が起きている。改廃事件は、デジタル化の時代、販売店の経営が圧迫される社会状況のもとで起きた。

事件の詳細については、原告と被告の間で認識に隔たりがあり、現時点では双方の主張が出そろっていないため言及を避ける。ただし争点となりそうなのは、この販売店改廃に正当性があったのかどうかという点である。また、それが報じるに値する公益性があるかどうかという問題である。

『ZAITEN』側は、改廃事件は第三者が読売本社と結託し、販売店の乗っ取りを断行した可能性が高いと主張している。これに対し読売側は、販売店の改廃は適正な手続きを踏んで行ったと主張している。

改廃事件の舞台となったのは、神奈川県のYC武蔵小杉店である。事件が進行したのは2023年末から翌年2月にかけての時期である。読売が問題視した記事は、『ZAITEN』2024年5月号に掲載された。タイトルは「死屍累々でも“暴走”する販売局 読売新聞『朝日との最終決戦』に販売店大量廃業」。

しかし、実際に読売が提訴したのは、2025年10月である。記事の掲載から2年近くのブランクがある。この間、『ZAITEN』は断続的に新聞販売に関連した問題を取り上げてきた。

読売が提訴の対象とした記事によると、YC武蔵小杉店の店主であるSさんは自主廃業を決め、その旨を読売新聞を含む関係者に告げた。しかし、後任者は見つからなかったという。

事件の引き金となったのは、Sさんが体調を崩し、数日にわたり販売店に出勤できなかったことである。この期間中に読売新聞社が一方的に販売店改廃を断行した――というのが記事の主旨である。その際、「事務所のデスクの引き出しに保管されていた契約書や印鑑などが、引き出しをこじ開けられた末に持ち出されていた」という。

これに対して読売新聞社は、取引契約の解除は適正な手続きを経たうえで行ったと主張している。

◆大量に存在する読売関連の資料

実は、読売新聞社が関係してきた販売店関連の訴訟は、過去にも何件も起きてきた。筆者はこれに関する資料を大量に保管している。今後、過去の事件と比較しながら、『ZAITEN』のケースを取り上げていきたい。

なお、この裁判で読売側の弁護人を務めているのは、自由人権協会の代表理事である「人権派」弁護士、喜田村洋一氏である。メディア研究者から重宝されている弁護士だが、読売には一部の「押し紙」も存在してこなかったと主張してきた弁護士としても知られている。今世紀に入るころから、読売の販売店関連の訴訟を多数担当してきた経歴を持つ。販売店訴訟で、福岡地裁や高裁へも頻繁に足を運んできた。

過去には、筆者を被告とする3件の裁判にも関わっており、当然ながら筆者は喜田村弁護士が作成した書面を重要書類と位置づけて、大量に保管している。興味深いものもあるので、これについても紹介していこう。

今回の『ZAITEN』の裁判は、過去の読売裁判との類似性が高い。そうしたこともあり、過去の裁判とも関連づけながら事件を検証したい。(続く)

2025年08月07日 (木曜日)

新聞、止まらぬ部数減 読売41万部減、毎日29万部減――最新のABC発表で浮き彫りになった「新聞崩壊」の現実

2025年6月度のABC部数が明らかになった。これは日本ABC協会が公表する最新の新聞発行部数であり、新聞業界の動向を示すひとつの指標である。

この1年間で、中央紙各社はいずれも大幅な減部数となった。最新のABC部数と、前年同月比(▲)は以下の通りである。

読売新聞:5,442,550部(▲413,770部)
朝日新聞:3,234,313部(▲156,690部)
毎日新聞:1,213,572部(▲285,999部)
日経新聞:1,288,439部(▲86,975部)
産経新聞:798,252部(▲51,539部)

なお、ABC部数は新聞社の公称発行部数であり、この中にはいわゆる「押し紙」(実際には配達されずに余る部数)も含まれている。そのため、部数の減少が必ずしも読者数の減少と一致するとは限らない。

実際には、新聞社が販売店に対する「押し紙」を調整・削減した結果、部数が減ったように見える場合もある。近年では、折込広告の激減により、販売店が「押し紙」を抱え続ける経営的な余裕がなくなってきている。こうした背景から、「押し紙」の削減は、新聞発行本社にとっても販売網維持のために不可避になっているのが現状だ。

 

2025年08月07日 (木曜日)

新聞発行部数が大幅減 2025年6月度ABC発表、読売41万部減・毎日29万部減

2025年6月度のABC部数が明らかになった。これは、新聞各社が公表する最新の発行部数であり、新聞業界の動向を示す重要な指標である。
この1年間で、中央紙各社はいずれも大幅な減部数となった。前年同月比での減少は以下の通りである。
•読売新聞:5,442,550部(▲413,770部)
•朝日新聞:3,234,313部(▲156,690部)
•毎日新聞:1,213,572部(▲285,999部)
•日経新聞:1,288,439部(▲86,975部)
•産経新聞:798,252部(▲51,539部)
なお、ABC部数は新聞社の公称発行部数であり、この中にはいわゆる「押し紙」(実際には配達されずに余る部数)も含まれている。そのため、部数の減少が必ずしも読者数の減少と一致するとは限らない。
実際には、新聞社が販売店に対する「押し紙」を調整・削減した結果、部数が減ったように見える場合もある。近年では、折込広告の激減により、販売店が「押し紙」を抱え続ける経営的な余裕がなくなってきている。こうした背景から、「押し紙」の削減は、販売網維持のためにも不可避となっているのが現状だ。

2025年06月10日 (火曜日)

【YouTube】読売新聞社の「押し紙」を認定した真村訴訟、読売代理人として喜田村洋一弁護士も登場

007年12月、読売新聞の「押し紙」を認定した判決が最高裁で確定した。この裁判は、新聞販売店が地位保全を求めて起こしたもので、販売店の残紙が「押し紙」か否かが争われた。裁判所は、残紙を「押し紙」と認定。その後、雑誌による「押し紙」報道が本格化するが、読売は、裁判提起により反撃した。読売裁判には、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士が、延々とかかわってきた。喜田村弁護士は、読売に「押し紙」は、一部も存在しないと主張してきた。

■【YouTube】読売新聞社の「押し紙」を認定した真村訴訟

2025年05月24日 (土曜日)

【YouTube配信6】徹底検証 産経、読売の「押し紙」、新聞特殊指定の何が問題なのか?

「配信6」では、産経新聞と読売新聞の「押し紙」の実態を紹介する。「押し紙」は1999年の新聞特殊指定の改定を機に急激に増えた。搬入される新聞の
40%が「押し紙」といった例も当たり前になった。

「押し紙」の元凶である1999年の新聞特殊指定の改定について、イラストを使って具体的に説明する。「押し紙」問題の核心に外ならない。この改定は、北國新聞に対する公取委による「押し紙」の排除勧告を受けて、公取委と新聞協会の間で対策を協議した結果行われたものなのだが、なぜか新聞社の「押し紙」政策に加勢する内容になった。

かえって「押し紙」がしやすくなったわけだから、独禁法の主旨や方個性とも整合していない。

2025年04月22日 (火曜日)

2025年2月度のABC部数、読売は前年同月比で-40万部、毎日新聞は-28万部

2025年2月度のABC部数が明らかになった。前年同月比で、最も減部数が多いのは読売新聞で、-40万部だった。毎日新聞は-28万部、さらに朝日新聞は、-18万部となった。

中央紙の部数内訳は次の通りである。

朝日新聞:328万部(-18万部)
毎日新聞:130万部(-28万部)
読売新聞:560万部(-40万部)
日経新聞:133万部(-7万部)
産経新聞:81万部(-6万部)

なお、ABC部数には、「押し紙」(広義の残紙)が含まれており、新聞の実配部数を反映しているわけではない。「押し紙」の実態は、最近の「押し紙」裁判の中でも、次々と浮上している。裁判資料を裏付けに、「押し紙」の実態を紹介しよう。

たとえば読売新聞のA店(大阪地裁・高裁)の2017年度における「押し紙」の規模は、47%から48%の規模で推移していた。つまり販売店に搬入される新聞の約半分が、配達されないまま回収され、廃棄されていたということである。

また毎日新聞のB店(大阪地裁)の2022年度のケースでは、11%から39%の間で推移していた。

2024年08月22日 (木曜日)

読売大阪が「押し紙」裁判の元原告の預金口座を差し押さえ、新聞人らが反撃、約1300万円の金銭支払を求める

読売新聞の元販売店主が読売新聞大阪本社に対して起こした「押し紙」裁判のその後の経緯を報告しておこう。新しい展開があった。

既報したように、この「押し紙」裁判は、大阪地裁でも大阪高裁でも読売新聞が勝訴したが、大阪地裁は読売による独禁法(新聞特殊指定)違反を部分的に認めた。その意味で、元店主が敗訴したとはいえ、画期的な認定が誕生した。高裁が、この認定を取り消したとはいえ、判例集でも公開され、「押し紙」問題の解決に向けた一歩となった。

しかし、読売は、元店主に対して新たな動きに出た。8月1日付けで、元店主の預金口座を差し押さえて、約1300万円(延滞損害金などを含む)のお金を支払うように求めてきたのだ。

◆約1300万円の中味

読売が金銭要求している1300万円が発生した経緯は次の通りである。2020年8月に、元店主は読売に対して、「押し紙」で損害を受けたとして、4120万円(後に1億2486万円に増額)を請求額する「押し紙」裁判を起こした。

これに対して読売は、元店主から約1000万円の補助金を騙し取られたとして、元店主を「反訴」した。返金を求めたのである。

判決は、大阪地裁も大阪高裁も、元店主の請求は1円たりとも認めず、読売の高額請求は認めた。

ちなみにこの「押し紙」裁判の読売代理人を務めたのは、喜田村洋一弁護士ら3名である。喜田村洋一弁護士は、人権擁護団体である自由人権協会代表理事を務め、今世紀の初頭か、地元の東京だけではなく、福岡、大阪、埼玉などへ足を運び、一貫して読売に「押し紙」は一部も存在しないと主張し続けてきた。熱心な「人権擁護活動」が評価されてるのか、メディア関係者や新聞研究者からは、ありがたい存在として重宝がられている。

これまでにも読売は、裁判を起こした(元)店主に対して逆に訴訟を提起するなどして法的根拠をつくり、資産を差し押さえたケースはある。たとえば2012年7月、真村訴訟の元原告だった真村久三氏に対して、自宅を仮差押えする申し立てを行った。裁判所は、早々にこれを認めた。この差し押さえには、喜田村洋一・自由人権協会代表理事がかかわった。

当事者を精神的にも、経済的にも追い詰めかねない預金口座の差し押さえ手続きを行ったのは次の3名である。元店主の人命にかかわりかねない案件なので、以下に実名を公表する。

 軸丸欣哉弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)
 森田博弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)
 森本英伸弁護士(弁護士法人淀屋橋・山上合同)

なお、今回の差し押さえ事件に関しては、喜田村弁護士の名前はないが、裁判では読売の代理人として重要な役割を果たした。従来どおり、「押し紙」は一部も存在しないと主張し続けた。

判決の評価は、本来であれば判決の全文を公開した上で、議論するのがふさわしいが、読売が判決文に閲覧制限をかけているために、議論の肝心な分部は黒塗りで閲覧できない。

預金口座を差し押さえられた後、元店主は新聞労連にも相談したが支援は得られなかった。新聞研究者も口を閉ざしたままである。緒雑誌のジャーナリズム特集でも、「押し紙」問題だけは除外されている。

■判決の解説記事

この事件をどう評価するかは読者の自由であるが、わたしが着目しているのは、次の3点である。

❶裁判所と新聞社は、日本の権力機構の中で、どのような位置づけになっているのか?

❷新聞社の系統を問わず、裁判所は、大半の「押し紙」裁判で、「押し紙」の存在を認定していないが、公序良俗という観点から、大量の新聞が配達されることなく廃棄されている事実(積み紙)をどう考えているのか。

❸自由人権協会とは何か。

❹読売の社会部長は、「押し紙」問題をどう考えているのか。

 

【参考記事】
■江上武幸弁護士が、「押し紙」裁判についていの報告書を公開

■新聞ジャーナリズムが機能しない背景に何が? 「押し紙」を放置する国策、年間の闇資金は932億の試算(1)

■1999年の新聞特殊指定改訂、談合と密約の疑惑、新聞ジャーナリズムが機能しない背景に何が?(2)