1. 携帯電話のマイクロ波と発ガンの関係、ドイツやブラジルの疫学調査で危険性が顕著に、問題多い日本の安全基準

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2016年07月06日 (水曜日)

携帯電話のマイクロ波と発ガンの関係、ドイツやブラジルの疫学調査で危険性が顕著に、問題多い日本の安全基準

携帯電話やスマホの通信に使われるマイクロ波による人体影響が否定できなくなっている状況のもと、市民団体ガウスネットは、9日(土)に東京板橋区で「科学技術依存社会を考える」と題するシンポジウムを開く。詳細は次の通りである。

■「科学技術依存社会を考える」の案内

◇マイクロ波と発ガン

WHOの傘下にあるIARC(国際がん研究機関)は、2011年5月31日、マイクロ波に発癌の可能性があると発表した。

IARCは、化学物質やウイルス、それに放射線など約800種の発癌性リスクについて、次のように分類している。

 「1」発癌性がある
 「2A」おそらく発癌性がある
 「2B」発癌性の可能性がある
 「3」発癌性の分類ができない
 「4」おそらく発癌性はない

現在、マイクロ波は「2B」にランク付けされている。しかし、電磁波研究の第一人者で元京都大学講師の荻野晃也氏は次のように指摘している。

「IARCでは、『人間の発ガン』に関する『疫学研究』が重視されており、『がんの可能性』のあるものが『2B』に分類され、研究が進むにつれて更に『2A』ないし『1』に移っていく傾向があります。IARCでの分類が始まってから現在までに『3』から『2B』へは6件、『2B』から『2A』へは38件、『2B』から『1』は1件、『2A』から『1』へは2件で、逆に降格したのは『2B』から『3』のみで8件です」(『九州/中継塔裁判ニュース』)

たとえランク付けが上がらなくても、マイクロ波のリスクが存在することに変わりはない。

◇ドイツの疫学調査

事実、携帯基地局の周辺に癌患者が多いという疫学調査の結果はすでに存在する。有名な例としては、ドイツの医師たちが、93年から04年まで、特定の団体から資金提供を受けずにナイラ市で行った調査がある。対象は、調査期間中に住所を変更しなかった約1000人の通院患者。基地局は93年に設置され、その後、97年に他社の局が加わった。

これらの患者を基地局から400メートル以内のグループ(仮にA地区)と、400メートルより外(仮にB地区)に分けて比較した。

最初の5年については、癌の発症率に大きな違いがなかったが、99年から04年の5年間でA地区の住民の発癌率が、B地区に比べて3.38倍になった。しかも、発癌の年齢も低くなっている。たとえば乳癌の平均発症年齢は、A地区が50.8歳で、B地区は69.9歳だった。約20歳早い。ドイツの平均は63歳である。

◇ブラジルの疫学調査

ブラジルのベロオリゾンテ市は、ブラジル南東部、標高約 800 メートルに建設された計画都市である。人口は約240万人。

この市をモデルとして携帯電話の通信に使われるマイクロ波と癌の関係を調べる調査が行われたことがある。結果が公表されたのは、2011年5月。おりしもWHO傘下のIARC(国際がん研究機関)が、マイクロ波に発癌性(遺伝子毒性)がある可能性を認定した時期である。

調査は役所が保管している携帯基地局の位置を示すデータ、市当局が管理している癌による死亡データ、それに国勢調査のデータを横断的に解析したものである。対象データは、1996年から2006年のもの(一部に欠落がある)である。

結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。次に示すのは、各ソーンごとの癌による死亡率である。明らかな相関関係が浮上する。

距離 100mまで:43.42
 距離 200 mまで:40.22
 距離 300 mまで:37.12
 距離 400 mまで:35.80
 距離 500 mまで:34.76
 距離 600 mまで:33.83
距離 700 mまで:33.80
 距離 800 mまで:33.49
 距離 900 mまで:33.21
 距離 1000mまで: 32.78
全市        :32.12

検証対象のエリアに複数の基地局がある場合は、最初に設置された基地局からの距離を採用した。そのために汚染源の基地局を厳密に特定できない弱点はあるが、大まかな傾向を把握していることはほぼ間違いない。

基地局から200メートル以内は極めて危険性が高い。

◇複合汚染こそが問題

とはいえ、マイクロ波が単独の発癌因子とは断言できない。というのも、複合汚染が地球規模で急激に進み、さまざまな「毒」が人体をも汚染しているからだ。

たとえば、新しい化学物質は毎日のように誕生している。その発生件数を見ても、脅威的な数字である。米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)は、新しい化学物質に対してCAS登録番号を発行しているが、その数は1日に1万件を超える。

新しい化学物質により自然環境は常に変化している。静止した状態にはならない。

航空機事故を解析する際に、「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」とするハインリッヒの法則が引き合いに出されることがままあるが、環境と病気の関係も同じ原理で、複数の因子が重なったときに、発病のリスクが高まるのだ。

たとえば、子宮頸癌の原因がHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)であることは定説になっている。しかし、HPVに「感染した人全員がかならず子宮頸癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされてDNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発癌リスクが高くなる」(利部輝雄著『性感染症』)のである。

原因と結果の因果関係が複雑なだけに、公害においては理論よりも「異変」の事実を優先して対策を取らなければならない。医学的に「異変」が解明されるのを待っていたのでは、公害を拡大させてしまうからだ。

このあたりの認識が欠落しているのが、日本の総務省だ。事実、次に紹介するように、日本の安全基準は、「安全基準」にはなっていない。

◇危険極まりない日本の安全基準

マイクロ波の基準値は、「マイクロワット・パー・平方センチメートル(μW/c㎡)」で表示されるのだが、専門用語にこだわらずに、次の数字の違いに注意してほしい。

 日本の基準:1000μW/c㎡ 

 EUの提言値:0.1μW/c㎡          

 ザルツブルク市の目標値:0.0001μW/c㎡

なぜ、これほど歴然とした数値の違いが生じているのだろうか。それを理解するためには、若干、マイクロ波の性質をどう解釈するかという点に触れなければならない。

マイクロ波には、大別して熱作用と非熱作用の2つの性質があると言われている。まず、「熱作用」は電子レンジのマイクロ波に象徴されるように、文字通り加熱作用である。これが有害であることは説が定まっている。

一方、「非熱作用」のひとつとされるDNAの損傷については、見解が対立する。マイクロ波がDNAを損傷するという説と損傷しないという説だ。損傷するという説を採用すれば、それが誘発されない低い規制値を設定しなければならないし、逆に損傷しないという説を採用すれば、熱作用による人体影響を防ぐことだけを前提に規制値を設定しても差し支えない。クリアすべき規制が減るわけだから、当然、高い数字になる。

日本の規制値は、マイクロ波がDNAを損傷しないという考え方を前提にしている。それゆえに異常に高い数値になっているのだ。

これに対してEUやザルツブルク市は、DNAの損傷など、非熱作用の存在も考慮に入れて低い数値を提言しているのである。