2013年10月11日 (金曜日)

公共事業は諸悪の根源? ジャーナリズムでなくなった朝日 その3(後編)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

名古屋編集局では、部長会を開き、その日の紙面について評価・検討するのが日課です。内容は、「部長会行政」という表題で、支局にもファクスで流れます。

ある日の部長会で「河口堰に反対しているのは他地区の外人部隊ばかりだ」と、部長が発言しているのが目にとまりました。同じ日の別の項目では、名古屋社会部が実施した独自の地域世論調査を、「地域の声が分かる」と部長は自画自賛していました。

しかし、以前に行った中部地区住民を対象にした同じような地域世論調査では、河口堰反対の方が多いという結果が出ていたことを私は知っていました。私は「あなたが重要性を指摘した地域世論調査では、この地域の住民は、河口堰に反対の方が多い。『堰反対は外人部隊ばかり』という発言は事実と違うのではないですか。相反する発言を、同じ日の部長会でするのはおかしい。もう一度、私の取材内容を検証すればどうか」と、支局から電話で指摘をし、河口堰問題を話すきっかけにしたのです。

でも、部長の答えは予想通りです。「豊田のおめぃに、河口堰は関係ないだろ」との怒鳴り声が返ってきました。私が「私に河口堰報道をさせないための豊田転勤だったのですね」と尋ねると、「うるせぇ」と電話は音を立てて切れました。

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2013年10月10日 (木曜日)

共事業は諸悪の根源? ジャーナリズムでなくなった朝日 その3(前編)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

安倍首相は、予想されていたこととはいえ、消費税増税を正式に記者会見で表明しました。しかし、何故、無駄な公共事業でここまでの大借金を溜め、増税を国民にお願いするしか道がなくなったのか。残念ながら、安倍首相の言葉に、これまでの自民党長期政権時代の責任、真摯な反省の言葉は何もありませんでした。

次世代に大借金をツケ回しするのではあまりにも無責任です。こんな政権を選択した私たち国民にも、責任の一端はあります。ですから、消費税増税は受け入れるしかないと、私は思っています。しかし、それは増税で確実に借金が減る保証があっての話です。「景気対策」のためなら、増税しないことが何より一番です。

自民党の今の顔ぶれを見ても、私が政治記者をしていた時代とそれほど大きく変わったとは思えません。増税で予算枠が拡大されたことをいいことに、また政・官の利権拡大のために「景気対策」と称し、これまで同様、無駄な公共事業に走ることは目に見えています。

その証拠に民主党時代、曲がりなりにも凍結状態だった多くのダムが建設に向けて動き出しています。でも、その大半はこの欄で私が報告している長良川河口堰同様、無駄な事業です。消費税増税の前提は、「徹底的に財政の無駄を省く」だったはずです。しかし、財政の見直し、行財政改革は具体性に欠け、ほとんど手付かずのまま、「消費税増税に見合う景気対策」では、すり替えも甚だしいと言わざるを得ません。

「監視役」は、ジャーナリズムしかないのです。しかし新聞だけ、消費税をまけてもらおうと、こそこそ政府に働きかけをしている新聞界の姿を見ると、本当に情けなくなります。もし、「新聞が国民にとってかけがえのない『知る権利』を守る必需品」として本当に軽減税率を適用すべきだと思うなら、何より「権力の監視役」を果たし、新聞界が国民の信頼・支持を回復することから、始めるべきだと私は考えます。

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2013年10月08日 (火曜日)

新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を③

「押し紙」回収の際には、人目を避けるために、コンテナ型のトラックも登場している(写真・読売VS新潮の「押し紙」裁判で、新潮社が提出した証拠写真。東京高裁の設楽隆一裁判官は、「押し紙」は1部も存在しないと認定した)。まさに水面下で進行している問題である。

私的なことになるが、わたしは1980年代の大半は海外に在住し、1990年に帰国した。そして最初に日本で遭遇した異様な光景が、景品を多量に使った新聞拡販だった。押し売りとジャーナリズムが結びつかなかった。

景品を提供しなければ売れない新聞では、まったく存在価値がないのではと思った。

次に異常を感じたのが、「押し紙」だった。新聞記者が結束して、内部告発しないことを不思議に感じた。何のためのジャーナリズムなのかと思った。

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2013年10月06日 (日曜日)

新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を②

「押し紙」は1部たりとも存在しないというのが新聞社の一貫した主張である。つまり販売店で過剰になっている新聞は、販売店主が自分で買い取ったものであって、新聞社が押し売りしたものではないという論理である。

(「押し紙」の正しい定義=ここをクリック)

裁判所も新聞社の見解を全面的に是認している。

具体的に「押し紙」について、新聞社がどのような主張を展開しているかを紹介しよう。例に引くのは、読売がわたしと新潮社に対して5500万円を請求した「押し紙」裁判の証人尋問である。

読売の宮本友丘副社長(当時・専務)は、代理人である喜田村洋一・自由人権協会表理事の質問に応えるかたちで、次のように証言している。

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2013年10月04日 (金曜日)

新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を①

3日付け読売新聞がスペインのラホイ首相への単独インタビューを掲載している。その中で読売は、軽減税率についての首相の考えを次のように紹介している。

(略)軽減税率について、「ぜいたく品とパンのようなものは扱いが違ってしかるべきだ」と述べ、生活必需品に軽減税率導入は必要との認識を示した。首相はまた、同国で最低4%の軽減税率を適用している品目の例として、「食料品、本、新聞」を挙げ、「それらが一番重要なものだ」と明言、食料品や知識への課税は慎重にすべきとの考えを明らかにした。

あえて新聞を対象とした軽減税率の話をラホイ首相から引き出して、記事にしているのだ。そこに恣意的なものを感じないだろうか。

周知のように日本新聞協会は、新聞に対する軽減税率導入を主張している。新聞は文化的な商品であるから、他の商品と同一に扱うべきではないとの論理である。

たとえば読売の白石興二郎社長は、今年の6月に新聞協会の会長に就任したさいに、軽減税率の新聞への適用について、「政府や政党関係者だけでなく、広く国民の理解を求めるべく、丁寧に説明する作業を進めたい」と述べている。

(出典=ここをクリック)

わたしは軽減税率の導入そのものには反対しない。消費税率を上げる一方で、法人税を軽減する安倍内閣の方針そのものが完全な誤りだと考えているからだけではなくて、新聞販売店の経営が悪化の一途をたどっているからだ。

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2013年10月02日 (水曜日)

目黒区八雲で新型チラシが登場 携帯電磁波のリスクを広域にPR 専門家招き学習会も予定

東京・目黒区八雲の住民たちが、携帯電磁波の危険性を知らせるチラシ(上写真は裏面)の配布をはじめた。引き金となったのは同地区に基地局設置の計画が浮上したこと。

幸いにこの計画は、区会議員の地道な努力で中止の見通しとなったが、予期しなかった「騒動」を通じて、住民たちは携帯電磁波をめぐるトラブルを防止するためには、日常的に電磁波の危険性を広く知らせる必要性を痛感した。

そこでトラブルは解決したが、チラシを作成して、広域配布に踏み切ったのである。さらに10月19日(土)には、八雲住区センター(目黒区八雲1?10?5)で、午後6時から科学ジャーナリスト植田 武智氏を講師に住民向けの学習会を行う。

チラシの内容は、日本の電波防護指針のデタラメなど、電磁波のリスクを知らせる内容になっている。特定の電話会社を批判したものではない。それだけにかえって普遍性があり説得力が増している。住民の中には、霞ヶ関(総務省前)でチラシを配布したいと話している人もいる。

チラシは各地の住民運動で共通して使える内容なので、別地域で配布を希望される団体があれば、黒薮が目黒の住民グループと仲介します。(連絡先:048-464-1413)

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2013年10月01日 (火曜日)

あいつぐ電磁波のリスクを指摘する書籍の出版、広告依存の新聞・テレビはタブー視

このところ電磁波問題を扱った書籍の出版が相次いでいる。ここ1年の間に、少なくとも6冊の書籍が出版されている。出版年日が新し順番に紹介しょう。

『やっぱりあぶない電磁波』(船瀬俊介? 花伝社)

『危ないリニア新幹線』(荻野晃也、懸樋哲夫、他 緑風出版)

『隠された携帯基地局公害』(徳田靖之、高峰真、他 緑風出版)

『携帯電話亡国論』(古庄弘枝 藤原書店)

『携帯電話でガンになる?!』(大久保貞利、上田昌文、植田武智、他 緑風出版)

『本当に怖い電磁波の話』(植田武智、加藤やすこ 週刊金曜日)

いずれの本も小規模出版社から刊行されたこともあり、国の隅々まで電磁波の危険性を知らしめるほどの影響力はないが、良識ある出版人により、新世代公害「電磁波」の危険に警鐘を鳴らす種が撒かれていることは疑いない。

つい最近まで電磁波問題と宗教団体「パナウェーブ」を混同している無知な人々が後を絶たなかった。しかし、WHOの傘下にある世界癌研究機関が2001年に極低周波に発癌性がある可能性を認定したのに続いて、2011年にはマイクロ波(携帯電磁波)にも発癌性がある可能性を認定した事情もあり、科学的な見地から電磁波の危険性を認識する人々が増えている。

欧米では、それが常識になっている。しかし、恐ろしい物に対しては、視線をそらす傾向があることも否定できない。以前、空手道の師範を取材した時、初心者の中には、拳が顔面に接近してくると、無意識のうちに、眼を閉じてしまうひとが多いと話していた。これに対して有段者は、最後まで拳の軌道を見据えて、対処するという。

電磁波問題についても同じことが言える。先日、マイニュースジャパンに荻野晃也氏のインタビューを掲載したところ、電磁波が気になるが、危険性を認めたくない人々が、さまざまなコメントを寄せた。おそらく携帯電話やスマフォに依存している人々である。一部の紹介しよう。

MyNewsJapanってこういうのよく載せるな。この手の記事で他の記事の信憑性を大いに毀損していると思う。買ってはいけないを作った週刊金曜日とそっくりだな。

赤外線まで危険とかw 他人の不安を煽ってる暇があったら、自分の体から出てる輻射をさっさと止めろ

『原発のガンマ線も含め、いわゆる電磁波の仲間は、周波数の高いものから、周波数の低いもの(送電線、家電等)まですべて危険だという考えに立ってきました。』結論ありきにしては論理も実験データも弱すぎる。

同じ人の書いてるhttp://www.mynewsjapan.com/reports/1886を見ると携帯の基地局の近くで奇形植物大発生らしい。へー、じゃあ出力が遙かに大きいテレビ放送用の電波塔の近所はミュータントの巣窟なんですね!

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2013年09月29日 (日曜日)

「原発問題で味わった悲しい経験を、二度と味わいたくない」電磁波問題の第一人者・荻野晃也氏に聞く

携帯電話が爆発的に普及するなか、日常生活で電磁波に被曝するリスクが増大し、韓国では先月から規制が強化された。日本では、人体への影響を考える際、原発の放射線と、携帯電話や送電線の電磁波とを区別する傾向があるが、欧米では両者を広義の電磁波問題と捉える。

チェルノブイリ事故の放射線被害と携帯基地局による電磁波被害は、癌以外にも免疫不全や精神錯乱など多数の共通項目が観察された。スリーマイル島の原発事故では周辺にタンポポの巨大な葉が出現したが、これは携帯基地局近くの奇形植物と同じ現象だ。原子核物理学の専門家として伊方原発訴訟(原審・松山地裁)の原告を全面支援し、携帯電話や送電線の電磁波による人体影響も研究領域とする荻野晃也氏は「原発の放射線も、携帯電話の電磁波も、生体への影響はよく似ている」「メディアと最高裁には責任がある」と電磁波問題の深刻さを訴える。

(続きはMyNewsJapan)

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2013年09月25日 (水曜日)

読売掲載の北岡伸一「安全保障議論・戦前と現代、同一視は不毛」を批判する?

9月22日付け読売新聞は、国際大学の学長で、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の座長を務める北岡伸一氏が、「戦前と現代、同一視は不毛」と題する評論を掲載している。

わたしはこの論文を読んだとき、やはり学者の大半は、現場に足を運び事実を検証した上で、みずからの主張を展開する姿勢が完全に欠落していると思った。これは我田引水の評論である。この程度の論考でよく国際大学の学長が務まるものだと驚いている。

北岡氏は、日本の軍事大国化を危惧する人々は、日本が太平洋戦争へと突き進んでいった時代に現在を重複させて自衛力の強化に不安を感じているとした上で、当時と現在の状況が5つの点で異なっていると論じている。それゆえに集団的自衛権の行使を可能にすることは、危惧するには値しないというのである。

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2013年09月20日 (金曜日)

秘密保全法の成立で、「押し紙」報道・新聞批判が出来なくなる可能性

秘密保全法が成立した場合、「押し紙」関連の取材はできるのだろうか。周知のように、秘密保全法案とは、安全保障に関する情報のうち行政機関の長や警察本部長などが、「特定秘密」に指定した情報を漏らした者に対して、最高で10年の懲役を課する法律である。情報提供を求めた側も、情報を提供した側も懲罰の対象となる。「特定秘密」とは、(1)外交(2)防衛(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動防止、に関するものとされている。

結論を先に言えば、取材できなくなる可能性が高い。と、いうのもほとんど知られていないが、日本の新聞店の業務が部分的に、警察の防犯活動とリンクしているからだ。従って上記の(3)と(4)に抵触する可能性が高い。

次に示すのは、読売新聞社の関連団体である読売防犯協力会が、販売店と連携することで防犯活動を推進するために、覚書を締結している都道府県警察のリストである。右は、締結の年月日である。

高知県警 2005年11月2日

福井県警 2005年11月9日

香川県警 2005年12月9日

岡山県警 2005年12月14日

警視庁 2005年12月26日

鳥取県警 2005年12月28日

愛媛県警 2006年1月16日

徳島県警 2006年1月31日

群馬県警 2006年2月14日

島根県警 2006年2月21日

宮城県警 2006年2月27日

静岡県警 2006年3月3日

広島県警 2006年3月13日

兵庫県警 2006年3月15日

栃木県警 2006年3月23日

和歌山県警 2006年5月1日

滋賀県警 2006年6月7日

福岡県警 2006年6月7日

山口県警 2006年6月12日

長崎県警 2006年6月13日

茨城県警 2006年6月14日

宮崎県警 2006年6月19日

熊本県警 2006年6月29日

京都府警 2006年6月30日

鹿児島県警 2006年7月6日

千葉県警 2006年7月12日

山梨県警 2006年7月12日

大分県警 2006年7月18日

長野県警 2006年7月31日

福島県警 2006年8月1日

佐賀県警 2006年8月1日

大阪府警 2006年8月4日

青森県警 2006年8月11日

秋田県警 2006年8月31日

神奈川県警 2006年9月1日

埼玉県警 2006年9月14日

山形県警 2006年9月27日

富山県警 2006年9月29日

岩手県警 2006年10月2日

石川県警 2006年10月10日

三重県警 2006年10月10日

愛知県警 2006年10月16日

岐阜県警 2006年10月17日

奈良県警 2006年10月17日

北海道警 2006年10月19日

新潟県警2003年3月26日

沖縄県警 2008年6月12日

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2013年09月19日 (木曜日)

危険な秘密保全法、成立すれば携帯基地局問題は取材が不可能に

秘密保全法が今秋の臨時国会で提出される見込みになっている。

秘密保全法案とは、安全保障に関する情報のうち行政機関の長や警察本部長などが、「特定秘密」に指定した情報を漏らした者に対して、最高で10年の懲役を課する法律である。情報提供を求めた側も、情報を提供した側も懲罰の対象となる。「特定秘密」とは、(1)外交(2)防衛(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動防止、に関するものとされている。

この法律が成立すると取材活動が出来なくなり、ジャーナリズムが完全に骨抜きにされる可能性がある。たとえばTPPの問題は、(1)の外交に該当する。自衛隊の批判は、(1)から(4)のすべてに該当する。憲法9条の改悪に向けて、メディアの口封じをしたいという安部首相の意図が露骨に現れている。

住民運動は、(3)(4)にこじつけることができる。

「特定秘密」の範囲はあいまいでどうにでも解釈できる。たとえば携帯電話の基地局の位置と機能、それに所有者である電話会社名は、現在でも非公開になっているが、その理由として総務省は「テロ行為」の防止をあげている。通信網が破壊されたら、国家の安全が脅かされるので、これらの情報は公開できないというのが、彼らの説明である。

かりに秘密保全法が成立すると携帯基地局の電磁波問題は取材できなくなる。基地局に関する情報を提供した者、あるいは取材した者は、処罰の対象になるだろう。こうして言論を封じて、あちこちに携帯基地局を設置し、ユビキタス社会へ突っ走るのだ。

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2013年09月18日 (水曜日)

バレンティン外野手のホームラン日本新記録は参考記録ではないか?  偽装球問題と新聞社

『デイリースポーツ』(電子版)によると、読売の渡邉恒雄会長がプロ野球の統一球について、次のように語っている。

【2011年9月27日付デイリースポーツ紙面より】巨人の渡辺恒雄球団会長が26日、都内で取材に応じ、本塁打の激減につながった統一球に激しくかみついた。今季、ペナントレースの行方については白旗を掲げたうえで「プロ野球の経営者としては統一球ってのはどうだ?コマーシャルベースで考えれば、空中戦のほうが面白い」と、疑問を投げかけた。?  首位ヤクルトと6ゲーム差の3位で、優勝は厳しい状況。4位の阪神にも2ゲーム差と迫られている現実に「下手したら4位にもなる。今年はダメだ。来年、どうやって立て直すか」とあきらめ口調の渡辺会長。少し間を空けた後、自ら統一球の話題を切り出した。?  「日本だけの野球だったら、何もあんな統一球にする必要ないんじゃないかね。フェンス間際でみんなホームランにならないでアウト。これで観客数が減ってんだよ」。

(出典=ここをクリック)

この発言内容が事実とすれば、16日にヤクルト・スワローズのバレンティン外野手が達成したホームランの日本新記録に疑問符が付くことになる。厳密に言えば、参考記録でしかない。

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2013年09月15日 (日曜日)

公共事業は諸悪の根源? ジャーナリズムでなくなった朝日 

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

2020年、東京五輪の開催が決まりました。前回の五輪では、戦後復興の希望に燃える多くの若者がいました。しかし、今は閉塞感、内向き志向が強まっています。それを外に向け敵対心に変えてみても、何の進歩もありません。世界の人々と友情を育み、未来に向かってこの国の立ち位置を探る……。そんな若者を育てるためには、五輪は良い機会です。私は、東京五輪そのものに水を差すつもりはありません。

しかし、「新しい五輪」なら「新しい革袋」にです。五輪のインフラに期待。投入される税金の何割かをかすめ取ろうと言う政治家、官僚、古い体質の経営者の食い物にされ、借金が溜まるだけの五輪なら、止めたほうがましです。 衰えたとは言え、この国の民間企業には、まだまだ多くの蓄えと技術力があります。

五輪は、その日本の技術力を世界に宣伝するいい機会です。民間資金で、必要なインフラを整備。誇示した技術力でビジネスチャンスを見つけ、出資した企業は投資した資金を回収する。私はそんな新しいタイプの経営者が参加する「完全民営化五輪」を提案します。官に頼り、分け前を手に入れようとする姑息な経営者は、もうこの国に必要ないのです。

◇ジャーナリズムの役割は権力の監視

「公共事業は諸悪の根源」のこのシリーズ、今回で6回目です。前回までで官僚がいかに腐敗し、自らの利権のために無駄な公共事業を進めていたか、皆さんにお分かり戴けたと思います。この国を壊した責任は彼らにあります。口が裂けても、彼らを「国を支えて来た優秀な集団」などと呼ぶ訳にはいきません。しかし、監視するジャーナリズムがしっかりしていれば、何とか歯止めが出来ます。でも、残念ながら、そのジャーナリズムも壊れていたのです。

記者の仕事は、「論」より「事実」の報告です。長良川河口堰報道を朝日がどう止めたか。「今更」との読者のご批判も覚悟の上、恥も顧みず、私が具体的経過を書くのは、ジャーナリズムが監視役を放棄した場合、何が起こったかを後世に記録として残して置かねばならないと思ったからです。

既成メディアは、この朝日による長良川河口堰報道弾圧を教訓に、ジャーナリズム本来の精神を取り戻し、五輪報道では権力監視の役割を誠実に果たして行って欲しいと、私は切に願っています。

今回は、私が数々の建設省極秘資料を入手、完全に証拠固めが終わっている河口堰報道を、社会部長から「転勤だから、後輩に引き継げ」などと訳の分からない理由で1行も記事に出来ないまま止められ、1990年9月、名古屋本社社会部から、東京本社政治部に異動してからの話です。

◇朝日4本社にも序列が

朝日には、東京、大阪、名古屋、西部(九州)の4つの本社があります。新聞社が言う「本社」とは、一般会社のそれとは少し意味合いが違います。紙面の編集権を持っているところを「本社」と呼ぶのです。

ニュースは起きたところに近い程、関心が高くなります。遠いと関心は薄く、ニュース価値も小さいのです。全国紙だからと言って、全国一律の紙面を作っていては、読者の関心と一致しません。全国に散らばっている朝日記者は、自分の持ち場に応じた原稿を書きます。編集権を持つそれぞれの本社では、地域のニュース価値に応じ、記者の書いた原稿を取捨選択、見出しの大小も判断し、一つの紙面に作っていきます。

しかし、「本社」と名がついていても、それぞれに社長がいて、対等と言う訳ではないのです。朝日では、社長が常駐する東京が「本社」、発祥地である大阪が「準本社」、名古屋と西部は「支社」と言う位置付けです。

サラリーマン経験のある人なら、その「悲哀」は、お分かり戴けるでしょう。「支社」である名古屋では、幹部の人事権は東京が握っています。東京の「本社」からおかしな人物を幹部に送り込まれると、彼らは自分に都合のいいように「本社」に報告します。地方採用が多い名古屋では、そんな幹部に取り入って、身の安泰を図る人もいます。そんなこんなで、幹部の横暴をなかなか名古屋で止めることは出来ません。

朝日の人事制度は後述しますが、一応、いわゆるキャリア採用の端くれだった私は、とっくの昔に東京本社に異動してもおかしくはなかったのです。でも、前回のこの欄にも書いた通り、当時、名古屋の編集局長や本社代表を歴任した経営幹部との対立で異動が見送られ、40歳を前に初めての「本社」勤務です。

でも、本社なら様々に派閥が拮抗しています。そうそう名古屋のように一人の幹部による横暴は通じません。東京で名古屋社会部長の所業を訴えれば、そのうち潰された河口堰報道も復活出来るに違いないと、私は秘めた思いを持ちつつ上京しました。

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日本経済新聞の「押し紙」裁判と今後の課題── 露呈した公権力機...

2022年7月時点における全国の朝刊発行部数(一般紙)は2755万部(ABC部数)である。このうちの20%が...

ブラジル大統領選でルナ元大統領が当選、ラテンアメリカに広がる左...

10月30日に投票が行われたブラジル大統領選で、左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ元大統領(写真左)...

4人のオランダ人ジャーナリストの殺害から40年、元防衛大臣らを...

「戦後処理」とは、戦争犯罪の検証と賠償のことである。現在、進行しているNATO-EU対ロシアの戦争は、いずれ...

新聞に対する軽減税率によるメリット、読売が年間56億円、朝日が...

日本新聞協会は、10月18日、山梨県富士吉田市で第75回「新聞大会」を開催して、ジャーナリズムの責務を果たす...

朝日新聞が399万部に、年間で62万部の減部数、2022年9月...

日本ABC協会が公表した2022年9月度のABC部数によると、朝日新聞は399万部となり、400万部の大台を...

公正取引委員会にインタビュー「押し紙」黙認の姿勢が鮮明に ──...

全国の新聞(朝刊単独)の「押し紙」率が20%(518万部、2021年度)で、卸価格が1500円(月間)として...

タブーなきメディア、MyNewsJapaがリニューアル

MyNewsJapanがリニューアルされた。このウエブサイトに筆者は、2006年から寄稿している。リニューア...

携帯基地局のマイクロ波と「妄想」、隣人2人に同じ症状、

新世代公害とは、化学物質による人体影響と、電磁波による人体影響のことである。この両者が相互に作用して複合汚染...

「押し紙」で生じた不正な資金・35年で32兆6200億、公取委...

2022年7月8日、安倍元首相が旧統一教会に恨みを抱く人物から狙撃されて命を落とした。この事件をきっかけとし...

米国のNED(全米民主主義基金)、ロシア国内の反政府勢力に単年...

米国CIAの別動隊とも言われるNED(全米民主主義基金)が、ロシアの反政府系「市民運動」やメディアに対して、...

兵庫県を対象とした新聞部数のロック調査、朝日、読売、毎日、日経...

 次に紹介する記事は、2月26日にメディア黒書に掲載したものである。兵庫県を舞台に、朝日、読売、毎日、日経、...

大津市民病院の新理事長に滋賀医科大の河内明宏教授、過去の有印公...

赤色に錆び付いた人事制度。人脈社会の腐敗。それを彷彿させる事件が、琵琶湖湖畔の滋賀県大津市で進行している。 ...