1. 「押し紙」の実態

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2022年11月14日 (月曜日)

【臨時ニュース】西日本新聞を提訴、「押し紙」による被害5700万円の損害賠償

【臨時ニュース】

西日本新聞の元店主が、「押し紙」で被害を受けたとして14日、約5700万円の損害賠償を求める裁判を福岡地裁へ起こした。「押し紙」率は、最大で搬入部数の約25%程度。10%を下回っている時期もあり、相対的にはこれまで提起された「押し紙」裁判の例よりも低い。

原告代理人は、「押し紙」問題に取り組んでいる福岡の「押し紙」弁護団(江上武幸弁護士)が担当する。同弁護団は、佐賀新聞の「押し紙」裁判(2020年5月15日判決)では、佐賀新聞による独禁法違反を認定させる判決を勝ち取っている。

詳細は後日。

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日本経済新聞の「押し紙」裁判と今後の課題── 露呈した公権力機関による新聞社保護の実態 

2022年7月時点における全国の朝刊発行部数(一般紙)は2755万部(ABC部数)である。このうちの20%が残紙とすれば、551万部が配達されることなく無駄に廃棄されていることになる。30%が残紙とすれば、827万部が廃棄されていることになる。

1日の廃棄量がこの規模であるから、ひと月にすれば、おおよそ1億6530万部から、2億4810万部が廃棄されていることになる。年間に試算すると天文学的な数字になる。「押し紙」は重大な環境問題でもある。

しかし、裁判所も公正取引委員会も、いまだに「押し紙」問題に抜本的なメスを入れようとはしない。新聞社の「押し紙」政策を保護していると言っても過言ではない。新聞社を公権力機関の歯車として取り込むことによりメディアコントロールが可能になるから、「押し紙」を黙認する政策を取っている可能性が高い。

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2022年10月21日 (金曜日)

朝日新聞が399万部に、年間で62万部の減部数、2022年9月度のABC部数、

日本ABC協会が公表した2022年9月度のABC部数によると、朝日新聞は399万部となり、400万部の大台を割り込んだ。この1年間で62万部を失った。かつて読売「1000万部」、朝日「800万部」と言われていたが、「紙新聞の時代」の終わりを感じさせる。新聞が巨大ビジネスだった時代は幕を閉じた。今後、新聞産業はさらに縮小しそうだ。

一方、朝日のライバル紙である読売新聞のABC部数は667万部だった。前年同月比較で37万部減。さらに毎日新聞のABC部数は187万部、産経新聞は100万部、日経新聞は170万部だった。いずれの新聞も部数減が止まらない。

中央紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)がこの1年間に減らした部数は、総計で134万部になる。これは東京新聞(38万部)が3.5社が消えたに等しい。

ただ、ABC部数には「押し紙」が含まれており、ABC部数の減少は、単に「押し紙」を整理した結果である可能性もある。「押し紙」の整理を進めれば、それに応じてABC部数も減る。逆に「押し紙」の整理をしなければ、ABC部数の減数幅も小さい。

9月のABC部数は次の通りである。

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2022年10月10日 (月曜日)

「押し紙」で生じた不正な資金・35年で32兆6200億、公取委が新聞社の犯罪を「泳がせる」背景に強い政治力、「世論誘導」という商品の需要と売買

2022年7月8日、安倍元首相が旧統一教会に恨みを抱く人物から狙撃されて命を落とした。この事件をきっかけとして、旧統一教会の高額献金や霊感商法の問題などが浮上した。被害額は、昨年までの35年間で総額1237億円になるという。(全国霊感商法対策弁護士連絡会」)

これに対して、新聞の「押し紙」による被害がどの程度に上がっているのか、読者は想像できるだろうか。簡単な試算を紹介しよう。

日本全国の一般日刊紙の発行部数は、2021年度の日本新聞協会による統計によると約2590万部である。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と想定し、新聞1部の卸卸価格を1500円(月額)と想定すると、被害額は77億7000万円(月額)になる。これを1年に換算すると、約932億円になる。

旧統一教会による被害額が35年間で1237億円であるから、「押し紙」による被害額と比較するためには、1年間の「押し紙」の被害額932億円を35倍すれば、その数値が明らかになる。32兆6200億円である。

しかも、この試算は誇張を避けるために、「朝夕セット版」を外して、低く見積もった数値なのである。

公正取引委員会や裁判所などの公権力機関が正常に機能していれば、合法的に取り締まるレベルの問題であるにもかかわらず彼らは延々と問題を放置してきたのである。背後に強い政治力が働いている可能性が高い。

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2022年10月01日 (土曜日)

兵庫県を対象とした新聞部数のロック調査、朝日、読売、毎日、日経、産経、独禁法違反の疑い

 次に紹介する記事は、2月26日にメディア黒書に掲載したものである。兵庫県を舞台に、朝日、読売、毎日、日経、産経を対象に、新聞部数のロック状態を調査したものである。調査結果から、新聞社が販売店に対してノルマを課している可能性が推測できる。これは独禁法に抵触する。

同じ記事を再掲載するのは、公正取引委員会や裁判所に「押し紙」問題を解決しようという意思が毛頭ないことが明白になったからだ。これらの公権力機関が、なぜか新聞社に「便宜」を図っている可能性が高い。

 その背景に新聞社が世論誘導の役割を担う権力構造に組み込まれている事情があるようだ。(現在進行している憂うべき状況については、順を追って報告する。)

【再掲載】

このところわたしが提唱している「押し紙」問題検証の方法論として、ABC部数の新しい解析方法がある。兵庫県全域をモデル地区として、ABC部数の変化を時系列に、しかも、新聞社(朝日、読売、毎日、産経、日経、神戸)ごとに確認してみると、ABC部数が地域単位でロックされている自治体が多数あることが判明した。地区単位で部数増減の管理が行われている疑惑が浮上した。

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2022年09月26日 (月曜日)

「押し紙」問題を放置してきた公権力機関、巧みなメディアコントロールのからくり、モデルは戦前・戦中の新聞用紙の配給制度

「押し紙」が温床となっているメディアコントロールの例を、具体的な新聞記事を引き合いに出して立証することは不可能だが、公正取引委員会や裁判所などの公権力機関が新聞社の「押し紙」政策を黙認してきた軌跡を記述することはやさしい。それはちょうと公害の原因を医学的な根拠を示して立証することが困難であっても、疫学調査によって健康被害の全体像を立証できるのと同じ原理である。

「押し紙」問題を半世紀前までさかのぼってみると、公取委や裁判所がメスを入れる機会は何度かあった。しかし、実際は抜本的な対策を取ったことはほとんどない。それどころか、新聞業界の自主規制に委ねることで、故意に「押し紙」政策を奨励したのではないかと思われる節もある。

【参考記事】公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

余談になるが、2022年7月に起きた安倍首相狙撃事件を機にして暴露された旧統一教会と自民党の関係も、約半世紀に渡って放置されてきた。警察などの公権力機関はメスを入れなかった。マスコミもほとんど報道しなかった。この問題についてもメスを入れる機会はあったはずだが、実際には延々と放置してきたのである。

統一教会による霊感商法の被害額は、35年間で1237億円(日テレNEWS、7月29日)に上った。これに対して「押し紙」による新聞販売店の被害は、中央市の場合、年間で100億円単位になる推定される。
金額という観点から言えば、「押し紙」による被害の大きさは、霊感商法の比ではない。

【参考記事】「押し紙」を排除した場合、毎日新聞の販売収入は年間で259億円減、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算

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2022年09月23日 (金曜日)

【取材メモ】新聞用紙の統制から「押し紙」放置の政策へ、メディアコントロールの手口

かつてメディアコントロールのアキレス腱となっていたのは、新聞用紙の配給制度だった。現在は、これと類似した構図が、「押し紙」を介して成立している。

公正取引委員会や裁判所などの公権力機関は、「押し紙」を放置することで、新聞社に莫大な利益をもたらす。一方、新聞社は、公権力の「広報紙」になることで、「押し紙」という経営上の大汚点にメスを入れられる事態を回避してきた。

次の記述は、新聞用紙の統制とメディアコントロールの関係を記述したものである。

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2022年09月17日 (土曜日)

公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

筆者は、今年の6月、公正取引委員会と消費者庁に対して、新聞の「押し紙」に関するある資料の情報公開を申し立てた。

9月になって消費者庁が資料を開示したが、肝心な記述部分を黒塗りにしていた。はからずもこうした情報公開の方法は、新聞社を延々と「保護」してきた公権力の姿勢を浮き彫りにした。背景に権力構造がすけて見える。

この資料は、公正取引委員会と日本新聞協会の間で行われた広義の「押し紙」問題に関する話し合いの記録である。

発端は1997年にさかのぼる。この年、公正取引委員会は、北國新聞社に対して「押し紙」の排除勧告を発令した。北國新聞が、販売店に対してノルマ部数を割り当てた事実を指摘して、改善を勧告したのである。

同時に公取委は、北國新聞以外にも、これと類似した手口の「押し紙」政策を実施している新聞社があるとして、日本新聞協会に対し、「本件勧告の趣旨の周知徹底を図ることを要請」した。

これに対抗して日本新聞協会は奇策にでる。結論を先に言えば、残紙の「2%ルール」を撤廃したのだ。これはどういう意味を持つのか?

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2022年09月13日 (火曜日)

2022年7月度のABC部数、朝日新聞、年内に400万部の大台を割り込む可能性、 「押し紙」を黙認する公権力と新聞人の関係

2022年7月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日新聞は、前年同月比で約54万部の減部数となった。これは月間に換算すると約4万5000部。今年の12月まで5カ月あり、予想される減部数は22万5000部になる。従って400万部の大台を割り込む公算がかなり高くなっている。

読売も、年間で約36万部減らしている。産経新聞は、約18万部。産経はもともと部数が少ない新聞なので、18万部の減部数による経済的な影響は大きい。

朝日新聞:4,121,240(-541,662)
毎日新聞:1,885,163(-122,338)
読売新聞:6,760,411(-326,266)
日経新聞:1,703,815(-150,542)
産経新聞:1,013,683(-177,289)

 

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2022年08月24日 (水曜日)

霊感商法による年間の被害3億円、「押し紙」による年間の被害900億円

日テレNEWS(7月29日付け)によると霊感商法の被害は、「去年で3億円超」、「35年間では1237億円」と報告されているという。

わたしはこの数字を見たとき、額が大きいとは感じなかった。新聞社による「押し紙」の被害の方がはるかに莫大であるからだ。それを示すごく簡単な試算を紹介しよう。

◆控え目に試算しても年間の被害額が900億円超

日本新聞協会が公表している「新聞の発行部数と世帯数の推移」と題するデータによると、2021年度における全国の朝刊発行部数は、約2590部である。このうちの20%を「押し紙」と仮定すると、「押し紙」部数は518万部である。

これに対して販売店が新聞社に支払う卸価格は、おおむね新聞購読料の50%にあたる1500円程度である。

以上の数値を前提に、「押し紙」が生み出す販売店の損害を試算してみる。

卸価格1500円×「押し紙」518万部=約77億7000万円

ひと月の被害額が約77億7000万円であるから、年間にすると優に932億円を超える。霊感商法とは比較にならないほど多い。

しかも、この試算は誇張を避けることを優先して、「押し紙」率を低く設定している上に、「朝夕刊セット版」の試算を含んでいない。「朝夕刊セット版」を含めて試算すれば、被害額はさらに膨れ上がる。

「押し紙」により販売店が被っている被害額は、霊感商法の比ではない。

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2022年08月11日 (木曜日)

読売の「押し紙」裁判、判決日が先送りに、東京地裁

東京地裁は、8月9日に予定していた「押し紙」裁判(被告・読売新聞社)の判決を10月21日に先送りした。わたしはこの変更を知らずに、9日、東京地裁へ足を運んだ。しかし、法廷には鍵がかかっていて、掲示板にも「押し紙」裁判のスケジュールは見当たらなかった。

自宅に戻ってからわたしは、この裁判を担当している東京地裁の民事25部に電話で状況を問い合わせた。そして判決日の変更を知った。

「変更理由は?」

「おこたえできません」

「裁判官の体制も変わったのか?」

「おこたえできません」

途中から電話の相手が、広報部に変わったが、判決の日程が変更になったことを除いて何も答えなかった。「最高裁事務総局からの指示があったのか」と、いう肝心な質問に対しても、「お答えできません」と答えた。

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2022年08月02日 (火曜日)

岡山県下における読売のABC部数の調査、瀬戸内市では5年に渡って1040部でロック 

日本ABC協会が定期的に公表しているABC部数は、新聞社が販売店へ搬入した部数を示すデータである。残紙(広義の「押し紙」)も、ABC部数に含まれている。従って第三者からみれば、ABC部数は、「押し紙」を隠した自称部数である。実配部数との間に乖離があり、広告営業の基礎データとはなりえない。

筆者は、都府県を対象に各新聞社のABC部数の長期的変化を調査している。今回は、岡山県における読売新聞のABC部数を調べてみた。その結果、ABC部数が1年、あるいはそれ以上の期間、固定されるロック現象を頻繁に確認することができた。新聞社が販売店へ搬入する部数が、一定期間に渡って増減しないわけだから、読者数が減れば、それに反比例して「押し紙」が増えることになる。

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2022年07月21日 (木曜日)

新聞・テレビ報道のタイミングが極端に遅れるテーマ、被害額は「押し紙」が霊感商法をはるかに上回る

新聞・テレビがタブー視しているテーマ、あるいは事件が爆発するまで報じないテーマについて検証してみよう。次のようなものがある。

① 宗教団体に対する批判
② 天皇制廃止論
③ 各種の反差別運動に対する批判
⑤ 新聞社の「押し紙」問題
⑥ 電磁波や化学物質などの新世代公害
⑦ 医療制度の批判

これらのテーマは聖域とされ、ジャーナリズムのメスが入らない。

原発問題はかつてタブーだったが、2011年3月の福島第1原発の事故を機に比較的自由に報じられるようになった。

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