1. メディア黒書に相次ぐ内部告発-販売店主の自殺、背景に深刻な「押し紙」問題の可能性も

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2015年05月21日 (木曜日)

メディア黒書に相次ぐ内部告発-販売店主の自殺、背景に深刻な「押し紙」問題の可能性も

 新聞販売の関係者からと思われる内部告発があった。内部告発の内容を紹介しよう。問題が深刻化する前に警鐘を鳴らすのが、ジャーナリズムの役割であるからだ。ただし、完全な裏付けが取れない現段階では匿名報道にする。

5月19日の夜、わたしの自宅に1本の電話があった。東京都内で新聞販売店を営む男性 が自殺したというのだ。告発者は、店名も店主の名前も明らかにした。自殺の原因については、経営難ではないかとの推論を述べた。

「やはり『押し紙』ですか?」

「相当、あったようですよ」

実は、販売店主の自殺に関する情報は、昨年の秋にも入手していた。群馬県の販売店主である。しかし、犠牲者の親族から、裏付を取ることはできなかった。親族外の何人かの関係者に接触したが、やはり話してもらえなかった。

そして、新聞社の系統こそ異なるが、今度は東京都内で販売店主の自殺と推定される事件が起きたのだ。

「だれか詳しい話をしてくれる人はいませんか?」

「箝口令(かんこうれい)が出ていますからね」

言論の自由を最大限に尊重しなければならない新聞社が箝口令を発令することに、わたしは異常なものを感じた。

◆水面下で広がる「押し紙」問題

わたしは1997年から新聞社の「押し紙」問題を取材しているが、初めてこの問題を単行本『新聞ジャーナリズムの正義を問う』で告発したころ、無言電話や脅迫状めいたFAXをたびたび受けた。その後、こうした「抵抗」がムダだと自覚したのか、新聞関係者からの嫌がらせはぴたりと止まった。

続いて予期せぬリアクションが起きた。取材拒否だった。新聞販売店主たちが一切の取材に応じてくれなくなったのだ。このころからすでに一部の新聞社は、「言論統制」に踏み切っていたのかも知れない。業界内部から情報を得ることが極めて難しくなったのだ。

が、2007年の12月に画期的な出来事が起こる。読売新聞社とYC広川(読売新聞・広川店、福岡県)の間で争われていた地位保全裁判で、販売店側を勝訴させた判決が最高裁で確定したのだ。しかも、判決の中で読売による「押し紙」が認定されたのだ。新聞業界全体に大きな影響を及ぼした「真村裁判」の衝撃である。

 ■真村裁判・福岡高裁判決の全文

真村裁判の判例ができたことで、わたしは「押し紙」問題にメスが入ると思った。新聞業界が変化すると思った。しかし、そうはならなかった。

真村店主は、廃業に追い込まれる。結果、再び裁判に巻き込まれた。わたしは読売から、3件の裁判を起こされた。

しかも、これら一連の裁判の読売側代理人を自由人権協会の代表理事・喜田村洋一弁護士が担当するという構図になった。人権擁護団体や新聞社の「正義」が何であるのか、わけが分からなくなったのである。

「押し紙」問題も、完全に押さえ込まれた感があった。こうした中で、朝日バッシングの問題も起こった。

そして、昨年あたりから、再び内部告発するが販売関係者が増えてきた。大量の「押し紙」があるというのだ。

すでに述べたように昨年、店主の自殺情報を得た。さらに3日前にも別の自殺事件の情報が入ってきたのである。

わたしは犠牲者を出したとされる東京都内の販売店に直接電話してみた。(続)