1. 読売新聞「押し紙」裁判、原告の元店主が敗訴するも、読売による「新聞特殊指定第3項2号違反を認定」

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2023年04月26日 (水曜日)

読売新聞「押し紙」裁判、原告の元店主が敗訴するも、読売による「新聞特殊指定第3項2号違反を認定」

大阪地裁は、4月20日、読売新聞の元店主・濱中勇さんが読売新聞社に対して大阪地裁に提起した「押し紙」裁判の判決を言い渡した。結果は、濱中さんの敗訴だった。しかし、判決の中で裁判所は、読売による新聞特殊指定第3項2号違反を認定しており、今後の「押し紙」問題の進展に大きな影響を及ぼしそうだ。

新聞特殊指定第3項2号とは、新聞社が「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給する」行為である。しかし、「押し紙」に対する損害賠償責任は免責しており、論理の整合性が完全に欠落している。

この判決について「押し紙」弁護団の江上武幸弁護士が報告文を公開したので、以下、掲載しておこう。

■報告書

読売新聞押し紙訴訟 大阪地裁判決のご報告
             令和5年(2023)4月吉日
                 弁 護 士 江 上 武 幸

4月20日(木)午後1時10分、大阪地裁本館10階の1007号法廷で、広島県福山市の読売新聞販売店元経営者の濱中さんを原告、読売新聞大阪本社を被告とする1億2370万円の損害賠償を求める押し紙裁判の1審判決が言い渡されました。

福岡から私、東京から黒藪さんの二人が判決を聞くために大阪に出向きました。原告の濱中さんは仕事のため立会うことは出来ませんでした。
法廷にはいる前に、入り口横の掲示板に貼られた3人の裁判官の名前を見て、黒藪さんが「アッ」と声を上げました。

そして、「この裁判長は、東京地裁で産経新聞の押し紙裁判の敗訴判決を言い渡した裁判長です。」と言って野村武範裁判官の名前が書かれている、掲示板を指さしました。
その瞬間、私と黒藪さんは濱中さんの押し紙裁判の敗訴判決を確信しました。

野村裁判官は、名古屋地裁から東京高裁に転勤して、わずか40日ほどで再び東京地裁に転勤になり、51部ある民事部の中で、産経新聞の押し紙訴訟を担当する部に配属され販売店の敗訴判決を言い渡しています。

その、野村裁判官が、今度は東京地裁から大阪地裁に転勤して、26部ある民事部の中で、読売新聞の押し紙訴訟を担当する24部に配属になり、濱中さんの敗訴判決を言い渡しています。
2022年4月の京都地裁の日経新聞の押し紙敗訴判決や、同年8月の東京地裁の読売新聞の押し紙敗訴判決などでも、不思議な裁判官の人事異動や日程の変更などが相ついでみられています。

このような裁判官の特異な人事異動は、裁判の公正と司法に対する国民の信頼を大きく損なうもので、裁判所の内外を問わず何らかの形で問題提起する必要性が高まっていると思います。
ネット社会が広がっていますので、このようにネットに情報発信することで世論が喚起することを大いに期待しているところです。

ところで、本件判決には読売新聞の押し紙裁判ではこれまで見られなかった注目すべき判断が示されています。

判決は、濱中さんが前経営者から販売店を引き継いだ平成24年(2012)4月の供給部数1641部の内、配達されない残紙が約760部程度含まれていたことを指摘し、この残紙は平成11年告示の新聞特殊指定第3項2号違反の「注文部数指示行為」該当するとの判断を示したのです。
驚きの事実認定でした。というのも、読売新聞は、これまで一部たりとも独禁法違反の押し紙は存在しないと公言していたからです。今回、裁判所が認めた残紙の割合は46パーセントにも及びます。

私どもは、平成20年(2008)頃、福岡県筑後地区の読売新聞販売店の依頼を受けて、不要な新聞の減紙を申し入れたことがありますが、その当時も残紙の割合は4~50パーセントに及んでいました。

今回の判決は1000万部を豪語する読売新聞にこのような大量の残紙があることを裁判所が認めたもので、画期的判決と評してよいと思います。
しかし、残念なことは、せっかく独禁法違反の押し紙を認定したにもかかわらず、不法行為にも公序良俗にも法令遵守義務違反にもあたらないとして濱中さんの請求を棄却したことです。

誰が考えても、押し紙はコンプラアンス違反であり、不法行為であり、折込み広告料の詐欺行為であり公序良俗に反し無効であることは明らかです。
大阪高裁に控訴することになりますが、高裁裁判官が法と良心にのみ基づいて地裁判決を見直してくれれば、必ずや濱中さんを勝訴に導くことが出来ると確信しています。

濱中さんは、読売新聞社に押し紙をやめさせ、現役の販売店経営者が胸をはって新聞配達の仕事ができるようになることを願ってこの裁判を提訴されています。来月5月には、福岡地裁で読売新聞西部本社を被告とする押し紙裁判の判決も言い渡される予定です。
引き続き、他の押し紙裁判についても、皆様のご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

 

■この裁判の判決については、明日付けの「デジタル鹿砦社通信」で改めて報告します。また、近々に判決の全文を公開します。

■ウルグアイのプレス協会へも、「押し紙」問題やメディアと政界の融着を報告しました。

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 ■日本語への翻訳