1. 軽減税率や「押し紙」で新聞業界が得る不正収入、年間1300億円超の試算

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軽減税率や「押し紙」で新聞業界が得る不正収入、年間1300億円超の試算

新聞業界は、軽減税率の適用や「押し紙」でどの程度の不正収入を得ているのか。試算した結果、年間1300億円を超える可能性があることが分かった。

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『文化通信』の報道によると、日本新聞協会の税制に関するプロジェクトチーム(税制PT)は昨年の1月25日、自民・公明の税調会長に、税制改正要望書を提出した。その中身は、軽減税率の恒久化、適用範囲を即売新聞、書籍、雑誌、電子新聞へ拡大することなどである。骨子は次の通りだ。

①2年前から週2回以上発行される定期購読契約の新聞に軽減税率が適用された。新聞界は新聞の公共的な役割が認められたと受け止めている。新型コロナウイルスのワクチンを巡っても、フェイクニュースが拡散した。正確な報道、責任ある言論の役割は大きくなっている。新聞の公共性・公益性に配慮した税制の実現が取るべき方策だと考える。

②新聞界は「地域への課税強化」にかねてから反対している。この観点から、まず定期購読契約の新聞紙への軽減税率を恒久化していくべきだ。同様の観点から、欧米諸国と同じく即売、書籍・雑誌、電子新聞への拡大をお願いしたい。紙と電子との税率差は、電子新聞の読者に不公平感を抱かせかねない。

③新聞への軽減税率の適用で先行する欧州諸国では、2019年から電子新聞に適用を拡大する動きが続いている。欧州連合(EU)は電子新聞などの配信を電子的役務の提供だとして、標準税率を適用する考え方を改めている。

④経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)や全国学力テストを見ても、新聞閲読と読解力・学力とには相関関係が認められる。

⑤民主主義の発展ほか、次世代の人材育成の観点や欧州の動きも参考に、現在の軽減税率の定着と適用範囲の拡大の検討をお願いする。

出典:文化通信

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新聞業界が、自民党と公明党に対して優遇税制の継続を要望したことは、公権力に「取り引き」を打診したことに等しい。新聞の公共性とか、情報の正確さといったことは、単なる口実に過ぎない。何の関係もない。

新聞業界が軽減税率の適用でどれほどの利益を得ているのか、簡単なシミュレーションを紹介しよう。

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試算の誇張を避けるために、新聞1部の購読料を月額3000円で計算してみよう。まず、税率が8%の場合、税額は240円である。これに対して10%の場合は、300円になる。両者の差異は、60円である。

軽減税率の適用を受けることで、新聞1部に付き月額で60円の税が軽減されるのである。小さな額のようにも見えるが、新聞の発行部数が多いので、総計すると莫大な額になる。以下、部数と軽減税率による軽減額を示した。

100万部の場合:6000万円
200万部の場合:1億2000万円
300万部の場合:1億8000万円
400万部の場合:2億4000万円
500万部の場合:3億円
600万部の場合:3億6000万円

これらは月額であるから、1年で試算すると、その12倍ということになる。600万部の新聞社(販売店を含む)の場合は、43億2000万円になる。

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参考までに「押し紙」によるメリットも試算してみよう。この試算についても誇張を避けるために、新聞1部の価格を3000円と仮定する。新聞の卸代金は、通常、定価の5割から7割だが、これも誇張をさけるために5割で試算する。「押し紙」1部に付き不正収入1500円の試算である。

「押し紙」の割合を搬入部数の3割で試算してみよう。

2021年度の全国の朝刊単独の発行部数は、25,914,0024部である。(日本新聞協会のデータ)このうちの3割は、7,774,207部である。従って次の計算式で、「押し紙」によって新聞業界全体が得るひと月の不正収入が判明する。

7,774,207部×1500円=116億6131万円

これを年間の不正収入に換算すると、1392億円を超える。

このように新聞社は、公権力と暗黙の取り引き(「押し紙」問題への不介入)をすることで、「押し紙」により莫大な経済的メリットを得ている。逆説的に言えば、こうした経済的メリットが公権力によるメディアコントロールの温床になるのである。「押し紙」にメスが入ると、新聞社経営が成り立たなくなるからだ。

「押し紙」問題がジャーナリズムの問題であるゆうえんにほかならない。