1. 最初の国会質問から40年、いまだにメスが入らない残紙問題と拡販問題、絶対に自分の非を認めない新聞人の体質

「押し紙」の実態に関連する記事

2021年02月15日 (月曜日)

最初の国会質問から40年、いまだにメスが入らない残紙問題と拡販問題、絶対に自分の非を認めない新聞人の体質

景品を使った新聞拡販や「押し紙」の問題が、はじめて国会質問で取り上げられたのは、1980年3月5日である。共産党の瀬崎博義議員が、衆議院予算委員会で新聞販売の過当競争をテーマに質問したのが最初である。今年は、2021年だから、この3月で40年の歳月が流れたことになる。

この40年の歳月をどう評価すべきなのか。2007年に、読売新聞の真村訴訟で、福岡高裁が読売の「押し紙」政策を認定した後、徐々に残紙問題にメスが入るようになってきたものの、新聞人たちは、未だに「押し紙」の存在を認めていない。「積み紙」はあっても、「押し紙」は存在しないという詭弁を平気で貫いてきた。新聞人は絶対に自分の非を認めない。これは真理である。

事実、少なくとも半世紀近く延々と残紙政策を続けてきた。新聞に折り込まれて配布される地方自治体の広報紙が、残紙と共に大量廃棄されていても、無視を決め込んでいる。発覚すれば、「取引先」の販売店に責任を転嫁する。

景品を使った新聞拡販についても、昔ながらの戦略を続けている。最近では、高齢者をターゲットにした強引な新聞拡販に対して、地方自治体が注意を喚起する事態も生まれている。

◆◆
国会の場で、はじめて読売新聞社の「押し紙」(広義の残紙)問題が、取り上げれらたのは、1982年3月である。瀬崎議員が、読売新聞・鶴舞直売所(奈良県)の残紙実態を取り上げたのである。国会議事録には、次の数字が残っている。

◆◆
読売に限らず残紙が発生する原因になってきたのが、新聞社の部数至上主義である。新聞社は残紙を販売店へ送り込むことによって、販売店を新聞拡販へ駆りたてる。当時の公正取引委員会は、新聞拡販の方法に問題があることを認めていた。瀬崎議員の質問と公取委の回答を紹介しよう。

瀬崎:公取は昨年2月の末に新聞販売店の取引実態調査結果を発表しましたね。もう1年たつのですが、その結果に基づいて公取委としては、具体的にどういう改善措置を講じたのか、簡単に言ってください。

植木説明員:公正取引委員会といたしましては、この実態調査の結果に基づいて新聞発行本社を呼び、新聞発行本社の行為について非常に遺憾な点が見られる、でありますから、われわれとしては、その新聞販売方法について十分改善していただきたいということを申し入れたわけでございます。

この質疑に続いて瀬崎議員は、異常な新聞拡販の原因は、新聞発行本社にあるのか、それとも販売店にあるのかを質問した。これに対して、植木説明員は次のように回答した。

植木説明員:どちらの責任かということでございますけれども、通常の場合、私どもの方は、発行本社の方が自分の紙数を拡大するために景品を出していらっしゃるのではないかというような受け止めかたをしているわけでございます。

◆◆
40年後。残紙問題も新聞拡販問題も解決していない。新聞関係者は、どんなに批判されても、知らぬ、存ぜぬの一点張りで同じことを繰り返してきた。通常はありえないことである。

新聞社が世論誘導の道具として、権力構造の歯車に組み込まれているのが原因ではないか。それゆえに取り締まりの対象にならないことを知っているのだ。さもなければ説明がつかない。

読者は、紙面内容にも十分に注意すべきだろう。報道しない重大問題が水面下に山積している。新聞が社会の実態を客観的に描きだしているというのは幻想である。

■瀬崎・国会質問議事録の全文