1. 南日本新聞の現役店主らによる新タイプの「押し紙」裁判、注文部数を自分で決める自由を求めた裁判で和解勝訴

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2021年01月19日 (火曜日)

南日本新聞の現役店主らによる新タイプの「押し紙」裁判、注文部数を自分で決める自由を求めた裁判で和解勝訴

今週の『週刊金曜日』(1月15日号)に、「押し紙」に関する興味深い記事が掲載されている。タイトルは、「新聞社が『販売店の提案部数を尊重』対等な関係で販売戦略可能に」。執筆したのは、「押し紙」問題に取り組んでいる鹿児島大学の宮下正明准教授である。

この記事は、南日本新聞の5名の現役店主が起こした広義の「押し紙」裁判だが、裁判の争点は従来型(損害賠償)とは異なっていた。争点になったのは新聞販売店が自分で新聞の注文部数を決める権利の有無である。販売店が、自分の希望で注文部数を自由に増減する権利の有無が争われたのである。

従来の「押し紙」裁判は、「押し紙」によって販売店が被った被害の賠償が目的であった。ところが南日本新聞の「押し紙」裁判では、注文部数の「自由増減」の権利が争われたのだ。

裁判は昨年の12月24日に和解で終わった。宮下准教授が鹿児島地裁で閲覧した和解条項によると、原告・被告の双方は注文部数を決めるに際、「合意に至らない場合」は、販売店主らの「提案する取引部数を尊重する」ことで決着したという。

この和解条項により、南日本新聞は実質的に「押し紙」政策が採用できなくなった。

南日本新聞のこのケースは、今後、他の新聞社の現役の販売店主が選択する新しい訴訟形態になり得る。

筆者も一度だけ原告の店主さんらにあったことがある。その時、搬入されてくる「押し紙」を、毎日、南日本新聞の本社へ運んで積み上げていると話されていた。

「ヒラメ裁判官」の多い東京地裁とは異なり、地方裁判所では、「押し紙」にメスを入れる司法判断が次々に出始めているのである。

【参考記事】佐賀新聞「押し紙」裁判、判決の公開と解説、佐賀新聞社の独禁法違反を認定