1. 新聞社が避けたい「押し紙」裁判、提訴の前段で販売店が強く抗議すれば「解決金」は高くなる

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2020年10月27日 (火曜日)

新聞社が避けたい「押し紙」裁判、提訴の前段で販売店が強く抗議すれば「解決金」は高くなる

残紙問題が深刻になる状況下で、メディア黒書への情報提供も増えている。先日は、朝日新聞の残紙の実態を収録した動画が送られてきた。残紙の回収ルートを知らせてくれた人もいる。

ABC部数の激減は、残紙の排除が進んでいることを意味するが、それでも依然として残紙はなくならない。

新聞販売店の経営は悪化の一途をたどり、廃業を検討している店主が増えているようだ。

日本新聞販売協会が8月に発表した「新型コロナウイルスの影響に関するアンケート」によると、71.5%の店主が、1000万円以上の借金をかかえている。経営が苦しいと回答した店主が93%にものぼった。

こうした状況の中で、「押し紙」裁判も増えている。

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しかし、新聞発行本社は、「押し紙」裁判を極端に嫌がっているようだ。そこで提訴に至る前に金銭解決するケースが増えているらしい。多くの新聞関係者がそんなふうに証言している。

つまり廃業に際して販売店が、新聞社に抗議すれば、それなりの金銭解決に至る可能性が高い。抗議すれば、抗議するほど金銭は高くなる。

濱中・読売裁判でも、提訴に至る前段で、読売の喜田村洋一弁護士は、濱中さんの弁護団に対して、書面で、

 濱中氏はYC大門駅前を経営していた間、回答者(注:読売)に対し、長年にわたって部数の増減に関して虚偽の報告を続けていました。回答者が「押し紙」行為を行っていた事実はなく、貴職らが主張する不当利得返還請求や債務不履行に基づく損害賠償請求には理由がありません。

と、述べたあと、次のような提案をしている。

 なお、回答者としては、濱中氏が上記の虚偽報告を行っていたことを認めるのであれば、話し合いに応じることを検討する用意がありますので、この旨、付言します。

金銭解決を検討するとは書いていないが、濱中氏が不正行為を認めれば、交渉に応じるというのだから、論理が完全に破綻している。普通、不正行為を認めれば、処罰を検討するものなのだが。

この記述からは、「押し紙」裁判だけは絶対に避けたいという読売の弱みが読み取れる。少なくともわたしは、そんなふうに解釈した。

読売は、「押し紙」をしていないのであれば、堂々と法廷でそれを主張すれば、いいだけの話ではないか。2009年の対新潮社裁判でも、「押し紙」は一部も存在しないと主張していたはずだが。

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参考までに、読売の宮本友丘専務(当時)が、対新潮社の「押し紙」裁判で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言した。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。