1. ASA宮崎大塚の「押し紙」裁判の再検証、独禁法に抵触していた高い可能性、朝日新聞社が注文部数を指示していた事実

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2020年05月26日 (火曜日)

ASA宮崎大塚の「押し紙」裁判の再検証、独禁法に抵触していた高い可能性、朝日新聞社が注文部数を指示していた事実

佐賀新聞の「押し紙」裁判で、佐賀新聞による独禁法違反が認定されたことを受けて、過去の「押し紙」裁判の資料を再検証してみた。このうち朝日新聞のASA宮崎大塚の店主が起こした「押し紙」裁判(途中から本人訴訟、敗訴)では、店主の敗訴だったが、明らかな独禁法違反の証拠が残っていることが分かった。少なくともわたしの解釈では、独禁法違反である。

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この点に言及する前に、佐賀地裁の判決に関して特に重要な2点を指摘しておこう。

【1】佐賀地裁は、佐賀新聞が全店を対象とした一斉減紙を行ったことを認定した。一斉減紙の時期と部数は次の通りである。

2009年2月:1491部
2010年3月:1148部
2013年3月:1743部
2014年4月:2965部
2016年2月:3608部

独禁法の新聞特殊指定は、「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること」を禁止している。佐賀新聞の場合は、一斉減紙の例に見るように発行本社が搬入部数を調節していたわけだから、完全に独禁法に抵触する。

【2】佐賀地裁は、販売店が必要な予備紙の定義を「原告が実際に原告販売店を経営する上で必要としていた」部数と認定した。原告は繰り返し予備紙は搬入部数の2%で十分であると言っていたので、予備紙は搬入部数の2%という計算になる。他の残紙は、理由のいかんを問わずすべて「押し紙」である。

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以上の点を踏まえたうえで、ASA宮崎大塚が朝日新聞に対して起こした「押し紙」裁判で、明らかになった興味深い資料を紹介しよう。

朝日新聞は、2006年12月に「07目標数のお願い」と際する書面をASAの各所長宛てに送付している。これは2007年度の新聞拡販の目標部数を決定した旨の通知である。その中に次の一文がある。

貴ASAの2007年の目標数案を別紙の通り決定致しましたので、ご通知申し上げます。皆様方の更なるご活躍とより一層の飛躍をお祈り申し上げます。■出典

引用分が示すように、朝日新聞が新聞拡販の目標部数を指定しているのである。その具体的な数値は次の通りである。

1月~9月:4740部
10月:4765部
11月~12月:4740部
■出典 

次に上の数字と下の数字を照合いただきたい。

【1月】
送り部数:4770部
実配部数:3219部

【2月】
送り部数:4770部
実配部数:3191部
(以下略)■出典

各月とも送り部数(搬入部数)と目標部数が完全に一致している。これは佐賀新聞の場合と同様に、発行本社の側が注文部数を決めていることを意味する。独禁法が禁止している「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給する」行為に抵触する。その結果、大量の「押し紙」が発生していたのである。販売店にとって不要な予備紙(押し紙)が発生していたのである。

この裁判の判決は、完全に間違っているというのがわたしの見解である。朝日新聞に忖度した判決であることは疑いない。

他年度についても、朝日新聞は同じパターンで「押し紙」をしている。

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記憶は定かではないが、2009年ごろ産経新聞も一斉減紙をやったような気がする。一斉減紙は、独禁法違反の決定的な証拠だ。