1. 東京・豊島区の広報紙水増し問題、2018年度の水増し率は30%、背景に「押し紙」による新聞販売店の経営悪化

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東京・豊島区の広報紙水増し問題、2018年度の水増し率は30%、背景に「押し紙」による新聞販売店の経営悪化

豊島区の広報紙『広報としま』が大幅に水増しされている問題で、過去10年分の関係資料を入手した。詳細については、検証が完了した段階で公表するとして、今回は、2018年度のケースに絞って報告する。

朝日、読売、毎日、産経、日経、東京の6紙が折り込み媒体となっている。卸部数は総計で7万8765部である。これに対して、ABC部数(2018年4月)は、5万4778部である。次に示すのが裏付けだ。

■『広報としま』の部数

■ABC部数

2018年度の水増し率は30%だった。2019年度の水増し率が43%であるから、18年から19年にかけて、13%も水増し率が増加したことになる。

2019年度のデータを公表した際に読者から、過剰になっている部数は、販売店がポスティングしているのではないかとの指摘があったので、この点について調査したところ、新聞を購読していない世帯で、『広報としま』を希望する住民に対しては、区から直接郵送していることが分かった。

郵送部数は、2018年が4040部である。

ちなみに豊島区のウェブサイトは、広報紙の普及方法について、次のように述べている。

「区政全般にわたる情報を、より早く、わかりやすく、正確に区民の皆さんに伝えるため、広報紙「広報としま」を発行しています。毎月1日は「特集版」と「情報版」を、毎月11・21日は「情報版」を発行します。また年に2回、「特別号(としまplus)」(A4冊子版)を全世帯に配布予定です。

下記デジタルブック版からご覧になれます。
ほか、日刊紙(朝日・読売・毎日・東京・産経・日本経済)への折り込みや、区内各駅の広報スタンド、区内ファミリーマート、区内公衆浴場、区内郵便局、区施設の窓口にも置いています。
また、区内在住で、新聞を購読していない世帯(企業は除く)で、ご希望のかたに個別配布をしています。」

なお、『広報としま』の新聞折込契約は、豊島区と豊島区新聞販売同業組合の間で交わされている。それによると、「折り込み部数」は7万9000部になっている。

広報紙を折り込む媒体(新聞)が5万4778部しかないのに、「折り込み部数」は7万9000部になっているのだ。

ただ、こうした状態になっている背景には、新聞販売店の経営悪化がある。残紙を相殺するために、折込媒体を水増しせざるを得ない苦しい事情がある。折込手数料と補助金の総額が、新聞の卸価格を上回れば、残紙による損害はないが、折込広告の需要が急激に減っている事情の下では、少しでも折込媒体を増やさなければ、経営が破綻してしまう。

その意味では、同情の余地がある。こうしたビジネスモデルを構築した発行本社に責任がある。