1. 2017年10月度のABC部数、朝日は年間で約30万部減、「10月部数」に見る偽装部数の特殊なトリック、「昔からやってきた」

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2017年11月29日 (水曜日)

2017年10月度のABC部数、朝日は年間で約30万部減、「10月部数」に見る偽装部数の特殊なトリック、「昔からやってきた」

【写真の解説】ビニール梱包されているのが「押し紙」。新聞紙で包装されているのは、水増しされ余分になった折込広告。岡山県内の毎日新聞販売店。

 

2017年10月度の新聞のABC部数が明らかになった。長期低落の傾向には変わりがないが、前月比でみると、中央紙も地方紙も+に転じている傾向がある。その背景には、「10月部数」が紙面広告の媒体価値を決める評価基準として採用される新聞業界の慣行があるようだ。つまり新聞社は10月に「押し紙」を増やすことで、紙面広告の媒体価値も詐欺的に高くしているのである。

同じことは「4月部数」についても言える。

その結果、年間を通じて次のようなパターンが観察される。

3月から4月にかけて「押し紙」を増やしてABC部数をかさ上げする。
4月から5月にかけて「押し紙」を若干減らし、販売店の負担を軽減する。
9月から10月にかけて「押し紙」を増やしてABC部数をかさ上げする。
10月から11月にかけて「押し紙」を若干減らし、販売店の負担を軽減する。

筆者が調査したところ、少なくとも2000年から、このような操作をしていることが裏付けられた。販売関係者によると、こうした数値の偽装は、それよりもずっと昔からやってきたという。

以下、10月部数の詳細を紹介しよう。()前月比、[]前年費。

朝日:6,121,605(-14,732)[-290,113]
毎日:2,960,278(+18,031)[-123,574]
読売:8,734,925(+20,940)[-206,400]
日経:2,695,255(-7,329)[-28,640]
産経:1,578,032(+58,387)「-46,232」

年間ベースでみれば、朝日が約30万部減、毎日が12万部減、読売が20万部減である。

不自然なのは産経の数字だ。産経はこの一年で約4万6000部を減らしたが、9月から10月にかけては、一気に約5万8000部増やしている。おそらくこの5万8000部は、11月には減部数になるだろう。筆者はそう推測している。広告の媒体価値を上げるだけの操作の可能性が高い。

日刊紙全体の数字は次のようになっている。

全日刊紙:37,021,153(+77,735)[-975,166]

はやり前月比は増えているのである。

2017年度10月部数一覧

◇「押し紙」とは?

ただ、ABC部数には「押し紙」が含まれているので、減部数分が必ずしも読者の減少とは限らない。この点を把握しておかなければ、新聞社経営に関する議論はまったく成り立たない。

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して、搬入する新聞のうち、配達されないまま回収される新聞のことである。たとえば2000部しか配達していない販売店に3000部を搬入すると、過剰になった1000部が「押し紙」である。偽装部数ともいう。

ただし、予備紙(配達中の破損などに備えて余分に確保しておく新聞で、通常は、搬入部数の2%)は、「押し紙」に含まれない。

公正取引委員会の見解は、実際に配達する新聞の部数に予備紙をプラスした部数が、正常な新聞販売店経営に必要な部数であって、それを超えた部数は、機械的にすべて「押し紙」と定義している。新聞社は、「押し紙」についても、卸代金を徴収する。

◇横綱審議委員長の北村正任という人物

余談になるが、横綱審議委員長の北村正任氏が、元毎日新聞社の社長だった事実を読者はご存じだろうか。彼は、白鵬について「相撲界の膿を出すとか言ったが、何を意味するのか分からない。何か横綱としておかしいのではないかという意見が多かった」と述べた。が、彼自身は新聞業界の膿、「押し紙」「折込詐欺」を黙認してきた人である。

日馬富士の傷害事件と、毎日新聞社の「押し紙」問題は、どちらが重大だろうか。前者は一時的なもので、後者は少なくとも数十年続いている。しかも、まったく反省していない。批判されても止めない。なかには「押し紙」は一部も存在しないと開き直っている輩もいる。北村氏には、相撲界を浄化できない。