1. 新聞業界の組織的な部数偽装疑惑、4月と10月になるとABC部数が増える理由

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2017年11月21日 (火曜日)

新聞業界の組織的な部数偽装疑惑、4月と10月になるとABC部数が増える理由

読者は、新聞のABC部数(出版物の公称部数を示す数字)が、毎年4月と10月になると不自然に増える事実をご存じだろうか。筆者はこの話を販売店の取材の中で知った。そして最近調査に着手したところである。

このたび2003年度から2008年度までの調査が終わったので、その一部を紹介しよう。実に興味深い事実が判明した。結論を先に言えば、新聞人による組織的な、部数偽装の疑惑が浮上したのだ。

4月と10月にABC部数が増える理由は、これら2つの月(俗に4月部数、10月部数という)に公表されたABC部数が紙面広告の媒体価値を評価する際の基準になるからだ。また、この数字が折込広告の適正枚数としても認定される仕組みになっているからだ。

4月部数と10月部数は、新聞社にとって特別な意味を持っているのだ。数字のトリックこれら2つの月を標的に行われてきたのである。

具体的な例を、全国の新聞発行部数の変化を例に紹介しよう。連続する次の3カ月の数値に注目してほしい。

【2003年度】

3月46,341,033
4月46,517,244
5月46,399,801

3月から4月にかけて部数を一時的に約18万部増やし、5月に再び3月の水準に戻している事実が確認できる。4月部数が特別に高くなるように操作している疑惑があるのだ。4月部数の増加分は、「押し紙」の可能性が高い。
こうしてABC部数を水増しして部数データを「更新」して、紙面広告の媒体価値を高めたり、折込広告の水増しを幇助しているのである。

9月から11月にかけても同じ傾向が見られる。10月部数を高く設定するように仕組まれているのだ。

9月46,175,323
10月46,499,248
11月46,333,321

このケースでも、9月から10月にかけて一時的に約32万部を増やし、11月に約17万部を減部数している。9月の水準にまで戻さなかった理由は、元販売店主によると、新聞記者のボーナスの財源を確保するためである。

◇2004年度のケース

2004年度についても、まったく同じ傾向が観察できる。

【2004年度】

3月46,272,212
4月46,465,978
5月46,328,582

3月から4月にかけて約19万部を水増した疑惑があるのだ。そして5月にはこの水準から14万部ほど減らしている。

9月46,269,854
10月46,609,026
11月46,424,929

おおむねこのような傾向が現在まで延々と続いてきたことが、調査の結果判明した。詳細については、いずれ別媒体で公表したい。

◇新聞のタブー「押し紙」

部数を水増しする手口は、改めていうまでもなく、「押し紙」行為である。「押し紙」とは、適正な予備部数と新聞の実配部数を合計した部数を超えて搬入される新聞の事である。適正な予備部数は、慣行的に搬入部数の2%とされてきた。かつてはそれが新聞業界の内部ルールになっていた。

たとえこのルールを度外視しても、古紙回収業者が数日に1度の頻度で回収しなければならないほど多くの新聞が搬入されていれば、それは実配部数でも予備紙でもないわけだから、すべて「押し紙」ということになる。

新聞関係者は、過剰になっている新聞には押し売りの証拠がないから、「押し紙」ではないという詭弁を根拠に大量の新聞を販売店に買い取らせてきたが、正常な販売店経営に必要な部数(実配部数+予備紙)を超えた部数は、理由のいかんによらず、すべて「押し紙」である。そして独禁法に抵触する。

この「押し紙」を利用して、新聞人は販売収入だけではなく、広告の媒体価値までかさ上げしてきたのである。もちろん、それが「折り込め詐欺」の温床にもなっている。筆者は20年以上に渡って、「押し紙」政策を批判してきたが、彼らはまったく聞く耳をもたない。

大半の新聞学者も「押し紙」問題をタブー視している。