1. 佐賀新聞「押し紙」裁判の波紋が広がる、新判例の誕生に警戒を強める中央紙

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2016年08月27日 (土曜日)

佐賀新聞「押し紙」裁判の波紋が広がる、新判例の誕生に警戒を強める中央紙

佐賀新聞の元販売店主が「押し紙」裁判を起こしたあと、全国に波紋が広がっている。佐賀新聞の発行部数は、わずか約14万部。地方紙の中でも規模の小さな新聞社である。

そのために筆者は、提訴に対する反響はあまりないのではないかと予測していたが、中央紙の関係者らは、あの手この手を使って情報を収集しているようだ。筆者のところにも、素性がよく分からない人物から問い合わせがあった。

「押し紙」問題で有名な江上武幸弁護士らが原告代理人を務めていることが警戒心を強めているようだ。「押し紙」を断罪する新しい判例が生まれることを警戒しているのだろう。

この裁判では、「残紙」はすべて「押し紙」であり、独禁法に抵触するという見解を打ち出している。

■参考記事:佐賀新聞の「押し紙」裁判、江上武幸弁護士ら原告弁護団が訴状を修正・再提出、「押し紙」の定義に新見解を示す

次に示すのは、「押し紙」の回収場面を撮影したものである。

◇「押し紙」の回収場面

「押し紙」の理不尽さを理解するには、現場を見るに限る。上の動画が示すように、新聞販売店で過剰になった新聞が次々とトラックに投げ込まれていく。その割合は、販売店によっては、搬入される新聞の4割にも5割にもなる。

新聞に折り込まれる折込チラシは、原則として新聞の搬入部数と同じなので、廃棄される新聞部数に連動して、折込チラシも秘密裏に廃棄されている。

こうした実態が延々と続いてきた。「押し紙」が最初に社会問題になったのは、1980年代の初頭である。「押し紙」を含む新聞販売の諸問題を、共産・公明・社会の3党が取り上げ、85年までに計15回の国会質問を行った。

しかし、それでも新聞販売の問題にメスが入ることはなかった。国会議員の質が落ちて、メディアの問題にはタッチしなくなったからだ。司法も、残紙を「押し紙」と認定することはなかった。その結果、新聞販売の現場は、どんどん蝕まれていったのだ。