4月16日(水)と18(金)に、言論表現の自由にかかわる2つの裁判の法廷が開かれる。16日は、読売新聞社が弱小な出版社・七つ森書館に対して仕掛けている著作権裁判。18日は、森ゆうこ元参院議員が、『最高裁の闇』の著者・志岐武彦氏に仕掛けている名誉毀損裁判である。
それぞれの裁判の詳細は次の通りである。
【読売VS七つ森書館】
日時:4月16日 水曜日
場所:東京地方裁判所 721号法廷
午前10時20分?12時 原告側証人・星春海さん(出版契約当時、 読売新聞社会部次長)
午後1時30分?3時30分 被告側証人・清武英利さん(元読売巨人軍 専務取締役)
午後3時30分?午後4時 中里英章(被告代表者・七つ森書館社長)
【森ゆうこVS志岐武彦】
日時:4月18日 金曜日
場所:東京地方裁判所 530号法廷
時間:午前10:00
※法廷の終了後、「志岐武彦さんを支援する会」が弁護士会館503号でミーティングを開きます。だれでも参加できます。問い合わせ先は、電話048?464?1413(黒薮)まで。
◇読売VS七つ森書館?職務著作権をめぐる問題
この裁判の発端は、七つ森書館が『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』(読売新聞社会部。1998年新潮社刊、2000年新潮文庫)を復刊しようとしたことである。同書は清武英利氏が中心になって制作したもの。七つ森書館は、2011年5月9日に読売との間に出版契約を結んだ。
ところが本の制作が最終段階に差し掛かったころに、清武氏が記者会見を開いて、読売の渡邉恒雄会長を批判したのを機に、両者は裁判へと突入した。その影響が、七つ森書館にも及んだようだ。
読売が七つ森書館に「出版契約を解除したい。補償はお金でする」と申し入れてきたのだ。しかし、交渉は決裂。読売は、喜田村洋一自由人権協会代表理事を代理人に立て、出版契約の無効を主張して裁判を起こしたのである。
争点としては、出版契約の手続きが有効かどうかという点に加えて、職務著作権をめぐる問題も浮上している。
職務著作権とは、新聞社の場合に即していえば、ある記事を執筆した記者をその記事の著作権者と認定するのを回避して、記者が所属する新聞社を著作権者と定めるルールである。著作権法の15条1は、職務著作権を次のように定義している。
法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
問題となった『会長はなぜ自殺したか──金融腐敗=呪縛の検証』は、読売新聞の記者たちによる執筆・取材である。しかし、単行本として刊行する場合は、単行本に即した文体や形式に改めることが多い。
新聞連載をそのまま単行本にすれば、無機質な印象が露呈して単行本としては読みづらいからだ。
詳しいことは知らないが、この本が新潮社から出版されるに際して行われた「てなおし」の過程では、清武氏の功績が大きい。このあたりを裁判所がどう判断するかが注目される。
読売勝訴により、職務著作権の適用範囲を拡大する判例ができてしまうと、新聞記者や出版社の編集者が自分の名前で本を出版する自由が侵害される危険性も秘めている。出版関係者にとっては、重要な意味を持つ裁判である。
続きを読む »