1. 老夫婦が訴えられた裁判にみる法律事務所ヒロナカの金銭請求方法、不可解な自由人権協会の理念

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2015年02月18日 (水曜日)

老夫婦が訴えられた裁判にみる法律事務所ヒロナカの金銭請求方法、不可解な自由人権協会の理念

スラップ(SLAPP、strategic lawsuit against public participation)とは、端的に言えば、訴訟を起こすことで訴えられた側の言動を封じ込める戦略のことである。日本でも2003年に武富士がジャーナリストの三宅勝久氏に対して起こした裁判を皮切りに、スラップの時代が始まった。

当初は大企業や巨大メディアがフリーランスをねらい打ちする訴訟が多かったが最近は、個人がブロガーを訴えることで、言論の抑圧をねらうケースが増えている。

この種の裁判のひとつが、最近、東京地裁で結審した。裁判を起こしたのはMという女性。被告は次のブログを主宰している退職夫妻である。

■kogchan blog

■天野ベラのブログ 

この裁判については、MEDIA KOKUSYOでも過去に取り上げている。

 ■老夫婦が訴えられた名誉毀損裁判で、原告代理人の弘中惇一郎弁護士らが「抽象的概念」に対して請求単価を設定、417本の「記事」に3200万円

原告(女性)の主張が理にかなっているのか、それとも被告の主張が理にかなっているのか、今後、検証する必要があるが、現時点では、原告は取材に応じていないので全体像は掴めていない。

この裁判でわたしが最も関心があるのは、原告が行った損害賠償金の請求方法である。原告と被告それぞれの主張はさておき、お金の請求方法に尋常ではないものを感じるのだ。

結論を先に言えば、ブログ記事から417件の記事など(表現と画像)をピックアップし、しかも、そのひとつひとつを「名誉毀損」、「名誉感情侵害」、「プライバシー権侵害」、「プライバシー権侵害」、「肖像権侵害」に分類して、単価を設定している点である。その単価と記事数は次の通りである。

ア 「■■のブログ」

  名誉毀損・・・・・・・・・162記事 1620万円(単価10万)

  名誉感情侵害・・・・・・・101記事  505万円(単価5万)

  プライバシー権侵害・・・・・85記事  425万円(単価5万)

  肖像権侵害・・・・・・・・・・5記事   25万円(単価5万)

  合計・・・・・・・・・・・・・・・・・2575万円

イ 「■■のホームページ」

  名誉毀損・・・・・・・・・13記事  130万円(単価10万)

  名誉感情侵害・・・・・・・11記事   55万円(単価5万)

  プライバシー権侵害・・・・12記事   60万円(単価5万)

  合計・・・・・・・・・・・・・・・・・245万円

ウ 「■■のblog」

  名誉毀損・・・・・・・・・・7記事   70万円(単価10万)

  名誉感情侵害・・・・・・・・3記事   15万円(単価5万)

  プライバシー権侵害・・・・・5記事   25万円(単価5万)

  肖像権侵害・・・・・・・・10枚    50万円(単価5万)

  合計・・・・・・・・・・・・・・・・・160万円

エ「YouTube」

  名誉感情侵害・・・・・・・・3動画   15万円(単価5万)

 こうして被告夫妻が請求された金額は、約3200万円である

◇弁護士サイドの責任

法律の専門家ではない原告の女性が、このようなお金の請求方法を知っていたとはおおよそ考えられない。たとえ知っていたとしても、訴訟を弁護士(法律事務所ヒロナカ)に委任しているわけだから、弁護士の判断でこのような請求を行ったことになる。

かりにこの種の請求方法が一般化して、一個人が一個人に対して裁判を起こす事態が多発すれば、日本の言論表現の自由は、どんどん萎縮していく。ブログによる自由闊達な議論ができなくなってしまう。

その意味で法律事務所ヒロナカの戦略は問題がある。

かつてわたしは、読売新聞社から1年半の間に3件の裁判を起こされたことがある。この時の読売側代理人は、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士だった。

3件の裁判のうち、2件目の名誉毀損裁判(MEDIA KOKUSYOの前身「新聞販売黒書」の記事の削除と約2200万円の金銭支払い)の請求方法が、上記のケースと類似していた。

原告である3人の読売社員と、3人が所属する読売新聞社が、それぞれが550万円、総計で2200万円のお金を請求したのである。

これが違法行為というわけではない。しかし、このような方法で請求額を増やすわけだから、被告の言論を萎縮させる効果があることは間違いない。

ちなみにこの裁判の結果は、地裁、高裁がわたしの勝訴。最高裁が高裁判決を差し戻した。これを受けて、東京高裁の加藤新太郎長が、わたしに対して110万円のお金を支払うように判決を下した。土壇場の読売逆転勝訴だった。

わたしは高額訴訟が多発している背景には、弁護士サイトの問題もあると考えている。しかし、日弁連は高額訴訟に対してなんの対策も取ってこなかった。訴訟がビジネスと化したとき、言論表現の自由は一層狭まる。

ちなみに喜田村弁護士も弘中弁護士も、護憲派の自由人権協会のメンバーである。わたしには、この人権擁護団体の目的がさっぱり理解できない。