青色LEDの開発に貢献した日本の研究者3名のノーベル物理学賞受賞を機に、関連製品のPRが大々的に行われている。一方で、ここ半年余りの間に、青色LEDによる人体への悪影響も指摘されるようになった。
東北大学大学院の研究チームは昨年12月、青色LEDを昆虫に照射したところ死に至ったとする研究結果を、英国の科学誌『Scientific Reports』に発表した。
また、岐阜薬科大学も同誌に、青色LEDが加齢黄斑変性症など失明に至る病気の原因になっているとの研究結果を発表。
さらに、LED光を浴びた熱帯魚の奇形など、民間レベルでもリスクが報告されている。LEDはどのような性質のものなのか。「これまで『安全』と言われてきたLEDは、そう簡単な問題ではない」と話す理学博士の渡邉建氏に、リスクとその対処法を聞いた。
--LEDはどこで使われていますか?
渡邉:もっとも身近なものとしては、部屋の照明や街灯です。丈夫で長持ちして、電力の使用量も抑えられるということで従来の照明から、LEDへ切り替える人が増えています。また、パソコンのバックライトの照明にも使われています。
かつては特殊な蛍光灯を使っていたのですが、今はそれをやめて白色LEDのバックライトになっています。そこに液晶のスクリーンを置いているわけです。さらに携帯電話やスマートフォンのバックライトにも、LEDは使われています。
ちなみにLEDではありませんが、紫外線は冷蔵庫などの殺菌装置や、水をきれいにする装置で実用化されています。紫外線に毒性があることは周知ですが、青色LED(ブルーライト)にも、毒性があることが最近になって指摘されるようになっています。
後で述べますが、東北大学のグループが、ブルーライトを害虫駆除に応用する方向で研究を進めています。ですから、当然、人間の人体にも有害な可能性があります。
◇ブルーライトと電磁波
--そもそもLEDとはどのようなものなんでしょうか?
渡邉:LEDは、Light-emitting diodeの頭文字を取った略称です。半導体の発光ダイオードのことです。これに電流を流すと光を発します。ですから文字通り「発光」ダイオードというわけです。
しかし、眼にみえない光を発する領域もあります。たとえばテレビのリモコンなどは、赤外線のLEDなので知覚できませんが、センサーが赤外線を感知するから機能するわけです。
--LEDでは、どのような光の色が出せるのでしょうか?
渡邉:赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫です(不可視光の赤外光、紫外光を出すLEDもあります)。これらの色光を組み合わせることで、別の色も合成できます。このうちブルーライト(青色LED)の開発は日本の3人の研究者によってなされ、昨年、ノーベル物理学賞を受賞しました。
最初に発明された色は赤でした。米国人のニック・ホロニアックという人が1960年代に赤LEDを作ったのです。そのうち黄や緑が開発されました。今、青が出てきたので、光の合成により白色もできるようになりました。
その意味では、ブルーライトの開発は、産業界にとっては、大きな貢献には違いありません。しかし、ブルーライトによる人体への影響も指摘されはじめているのです。
そもそもブルーライトとはどういう性質のものなのだろうか。
読者は意外に感じるかも知れないが、この点を理解するためには、電磁波とは何かを理解しなければならない。
電磁波の「電」とは電気のことである。一方、電磁波の「磁」とは、磁気のことである。
つまり電磁波とは、ごく端的に言えば、電気と磁気がその影響範囲である電磁場を作った電波の形状を描写した言葉である。「電磁波=電波」と考えてもよい。
電磁波にはさまざまな種類がある。原発のガンマ線から医療現場のエックス線、さらには携帯電話の通信に使われるマイクロ波まで、かなり細かく分類されている。その分類の基準となるのが、電波の周波数(サイクル数)である。一秒間に繰り返す波の数により、下図PDFのように分類され、ヘルツ(サイクル/秒)という単位で表示される。
電磁波の分類PDF
たとえば電力会社が提供する電気の周波数は、50ヘルツ(東日本)である。これは1秒間に50サイクルの波を意味する。ある種の無線PCは、2.5ギガヘルツ(25億サイクル/秒)、電子レンジは、2.45ギガヘルツ(約24億サイクル/秒)である。
周波数が高いほど波が小刻みになるので、波長が短くなる。それに伴いエネルギーも高くなるので波長によって、電磁波を分類することができる。
さて、この電磁波の分類対象のひとつに可視光(380 ~ 780 nm)と呼ばれる帯域がある。文字通り、光として視ることが可能な帯域の電磁波である。本稿のテーマであるブルーライトは、可視光線に分類される。ブルーライトも、電磁波である。
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