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横浜市港北区、大倉山付近には起伏の多い住宅街が広がっている。丘の斜面にマンションや民家がへばりつくように立っている。石畳の坂を登り切ると、遠方で曇り空と接した横浜の街が広がっていた。
◇携帯アンテナと共存
緑屋根のマンションが眼下に見えた。屋上の携帯電話アンテナ。まるで電話会社のために、アンテナの設置場所が設けられたような印象がある。
このマンションに住む山本(仮名)さんに、屋上を視察させてもらった。
携帯電話のアンテナは3本。電線を通す4本のパイプが走り、増幅器を経由して地下に降りている。さらにパイプは地下から箱状の基地局本体につながっている。
隣接するマンションにも2本の携帯電話アンテナが立っている。さらに、表通りを挟んだ向かいのビルに1本立。まさにマンションの住民は電磁波が人体に与える影響を測定する「モルモット」状態に置かれている。
◇まだ安全は確認されていない
携帯電話アンテナから発せられる電磁波(マイクロ波)がもたらす健康リスクは欧米では常識になっているが、日本ではメディアがほとんど報じないこともあって、あまり知られていない。
現在、普及している第3世代携帯電話に使われる電波は、高周波と低周波を組み合わせたもので、「変調電磁波」と呼ばれている。
「変調電磁波」の健康リスクとは具体的に何か?結論から先に言えば、それはこのような電磁波が携帯電話に使われるようになって、まだ歴史が短く、そのために安全が証明されていないことである。
携帯電話から発せられる電磁波が安全だとする説は、「変調電磁波」が登場する以前の古い研究データに基づいたものである。従って「変調電磁波」が安全か危険かは、「変調電磁波」を使った実験をしない限り知ることができない。
電磁波が人体に与える影響を測定するためには、かなりの時間を要する。化学反応を観察するようなわけにはいかない。常識的に考えて少なくとも数年の歳月を要する。だから現在の段階では、「変調電磁波」が安全だという保証はまったくない。ところが海外で行われた疫学調査で、危険を示すデータが出始めている。
2004年にイスラエルで行われた調査では、携帯電話基地局の周辺で、ガン発生率が4.15倍(女性に限れば10.5倍!)という結果が明らかになった。
◇秘書が高圧線近くの自宅を売却
山本さんは、仕事の関係で米国に25年滞在した。米国では電磁波の危険性は、日本とは比較にならないほど認識されている。
たとえばカリフォルニア州のアーバイン市では、民家から300メート以内に携帯電話・基地局を設置することが、条例で禁止されている。高圧電線の下は、グリーンベルトと呼ばれ、民家の建設を禁止して、緑のまま放置する。それが常識になっている。山本さんが言う。
「わたしの秘書をしていた女性が、まもなく生まれてくる子供のために、送電線の近くにあった自宅を売り払って、安全な場所に引っ越しました。1990年代のことでした」
会社を退職したあと、日本に戻ってくると自宅マンションの屋上に基地局のアンテナを建てる計画が持ち上がっていた。設置に反対したが、住民の反応は鈍かった。反対運動に発展する前に、アンテナが設置されてしまった。
それから1月後には、体調に異変をきたした。昼間から耐え難い眠気を催したり、耳鳴りに悩まされるようになる。鼻血が出たこともあるという。他の住民も健康被害を訴えるようになった。
36年にマンションを購入した時は、新居を終の棲家にする予定だった。しかし、長い米国滞在を終えて戻ってくると、携帯電話の基地局問題が待っていたのである。平穏な生活は夢物語となった。(全文公開。携帯電話の基地局問題を取材しています。情報提供は:03-3976-6012まで)

JR武蔵野線は、神奈川県北部から東京都多摩地区と埼玉県南部を経て千葉県西部を結ぶ路線である。その武蔵野線に平行して走る高圧電線。光の乏しい空。鉛色の雲の下にそびえ立つ鉄塔の腕が、重量感のある電線を支えて延々と続いている。冬の風が鉄塔に衝突すると、口笛のような摩擦音が風を切って伝ってくる。
さいたま市南区も武蔵野線と高圧電線の通り道になっている。
◇高圧電線と白血病
池田(仮名)さんの自宅は2階建てなので、電線が垂れ下がってきて屋根に接触しそうな印象がある。高圧線の軌道から家屋までの距離は、1メートル。池田さんは、頭上から電磁波のシャワーを浴び続けて来たことになる。
ちなみに送電線から放出される電磁波は、低周波である。これに対して、携帯電話の基地局から発せられるのは、高周波と低周波の変調電磁波だ。
スウェーデンでは、20年を超える歳月をかけて高圧電線の付近に住む人々を対象とした疫学調査が行われた。その結果、白血病の発症率が高いことが明らかになった。白血病と高圧電線から発せられる電磁波に因果関係があることは、ほぼ定説となりつつある。
しかし、池田さんが電磁波の危険性を知ったのは、自宅を建築した後だった。ある日、電磁波問題についての学習会のチラシがポストに投函されたので、奥さんと一緒に集まりに参加した。そこで初めて電磁波が人体に及ぼすリスクを知ったのである。
「このあたりは50年ぐらい前までは、田んぼと畑ばかりでしたが、市が区画整理をして宅地を売り出したのです。ですから昔からこの地に住んでいるひとはほとんどいません」
池田(仮名)さんも、この振興住宅地へ移り住んだ一人である。池田さんは、奥さんの実家が所有していた土地を贈与で譲り受けて、そこに家を立てた。そして設計士として働き、昨年、定年をむかえたのである。
◇自宅の移転を考えたが・・・・
10年前に家を建て替えるときに、別の場所への移転も考えたという。しかし、奥さんの実家から譲りうけた土地という事情もあって、移転には踏み切れなかった。親戚に電磁波の危険性を説明しても、
「国が安全だと言っているから、問題ない」
と、撥ねつけられた。隣近所に電磁波の話をしても、重大問題としては受け止めてもらえない。このような態度の根底には、おそらく2つの心理が働いている。人体にリスクがあると言われると不安にはなるが、現在、自分が住んでいる家を捨てて、別の土地へ引っ越すだけの経済的な余裕がない。そこで高圧線のことを忘れようとするのだ。当然、電磁波について語りたくない。
欧米の人々の視点では、高圧電線の下に民家が立ち、住民が住んでいること自体が異常なのだ。実際、WHOの職員が来日して、高圧電線と住居の共存に仰天したという話もある。
池田さん自身も、高圧線と自分の健康について質問されるのは、あまり好きではないという。それでもこんな話を打ち明けてくれた。(1200/2800文字、◇基地局問題にはふれたくない)

携帯電話の基地局の設置は、どのような手順で行われるのだろうか。最近取材したひとつの例を紹介しよう。(人名等はすべて匿名にする)。
◇住民に通知なし
T市の郊外にA社が鉄塔型の基地局を設置したケースである。JRの駅から、バスで20分ほど郊外に出ると、起伏の多い農業地帯が広がる。防風林の中に民家が立ち並ぶ小高い丘が、海の中の群島のように点在している。その防風林の上に灰色の鉄塔が頭部を突き出している。
「あれはソフトバンクの鉄塔です。あの塔のすぐ近くに、B社が別の鉄塔を建てようとして、反対運動がおこったのです」
住民の池沢さんが話してくれた。
問題の発端は、池沢さんの自宅から80メートルほど離れた荒地に、B社が鉄塔を建てようとしたことである。池沢さんが携帯基地局の設置計画を知った糸口は、ある日、自宅近くの荒地が更地になっているのに気付いたことだった。
この土地を所有する地主に問い合わせたところ、B社が鉄塔を立てるという。池沢さんは、携帯電話から発せられる電磁波が、身体に有害という話を聞いたことがあった。ただ、漠然とした話で、最初はあまり気にかけなかったという。
ところが地主が携帯基地局は、高圧線よりも安全だと言ったことで、かえって不安を喚起された。高圧線の側に住む人々が白血病にかかるリスクが高いのであれば、携帯電話の基地局から発せられる電磁波も、なんらかの人的影響を及ぼさないとは限らないのではないか?
そこでインターネットで基地局から発せられる電磁波について調べた。その結果、「変調電磁波」の危険性を指摘する記述が次々と見つかったのである。事実を知るにつれて、恐怖感が募った。
鉄塔工事を請け負っている会社に電話で、安全性について問い合わせた。すると担当社員が池沢さんの自宅へやってきた。
「鉄塔はどこにでも立っているものなので、危険はありませんと、繰り返し言われました。電話の通信状態もよくなると・・」
なぜ、事前に説明に来なかったのかを問いただすと、鉄塔を立てる地点から40メートル以内の範囲は、説明を義務付けられているが、40メートルをこえると説明の必要がないと言われた。この「40メートル」は、鉄塔の高さを想定していると思われる。
つまり塔が倒壊した時、その影響を受ける土地の持ち主に対してだけ説明が義務づけられているのだ。(電磁波に関する考察はない)
確かに鉄塔の設置予定地点から池田さんの自宅までは、40メートル以上の距離があるが、池沢さんの畑は40メートル以内に位置していた。
この点を説明すると、会社は池沢さんの畑から40メートルの範囲に入らない地点に設置場所を変えた。が、このころには同じ地域の人々にチラシなどを通じて、携帯基地局がもたらすリスクを知らせていたので、鉄塔を見上げる位置にある家の住人が猛反対した。
結局、設置地点は次々と移動した。直近の住民がことごとく反対したからだ。自宅と鉄塔が隣り合わせになることなど、誰も望まない。
とうとう最後に電話会社は、集落から離れた場所(と言っても80メートル付近に民家と牛舎がある)に、囲いを作って住民の視線をさえぎり、塔の土台を作った。そしてたった1日半で鉄塔を立てたのである。
◇九州では、裁判で住民運動を弾圧
このケースでは、強引に鉄塔を立てたような印象があるが、わたしが以前に取材したケースと比較すると、皮肉なことにもっとも「誠意ある」プロセスを踏んだケースである。たとえば九州では、鉄塔の建設に反対する住民を仮裁判にかけることで、住民運動を弾圧した例もある。
最近、裁判を提起することで言論や住民運動を封じる会社が増えているが、携帯電話の基地局設置をめぐる係争も例外ではない。有無を言わさずに基地局を設置して、携帯電話ビジネスを推し進める例が後を絶たない。(2300/2800文字、◇朝日はKDDIと提携)
【基地局問題についての情報を集めています。連絡先:03-3976-6012 xxmwg240@ybb.ne.jp】

携帯電話の電磁波問題といえば、主として携帯電話の受話器が発する電磁波が脳腫瘍のリスクを高める問題が取りざたされてきた。この問題は、なかり多くの人々が認識している。しかし、携帯電話の電磁波問題には、もうひとつ別の領域がある。
携帯電話の基地局から発せられる電磁波が、基地局周辺の住民にもたらすリスクである。具体的には、
1、電磁波が人体に及ぼすリスク
2、基地局周辺の地価が暴落するリスク
電磁波とは直接関係のないリスクとしては、
3、基地局のアンテナが落下、あるいは倒壊するリスク
4、基地局のアンテナが落雷を誘発するリスク
5、基地局の重量が建物の耐震強度に与えるリスク
携帯電話・基地局のアンテナは市街地では、おもに高いビルの屋上に設置されていることが多い。巨大なツノのようなアンテナが立っているので、視線をビルの屋上に走らせるとだれでも識別できる。
一方、人口が密集していない地域では、40メートル程度の鉄塔を立てて、その上にアンテナを設置することが多い。これも郊外へ足を運べば、比較的容易に発見できる。ちなみに、わたしの住居からは、遠方に3つの鉄塔を観察することができる。
◇高圧電線と白血病
改めて言うまでもなく、携帯電話の基地局からは、携帯電話の通信に必要な電磁波が放出されている。電磁波が健康被害を及ぼすリスクがあると書けば、根拠のない奇論を展開しているように受け止められるかも知れないが、電磁波が人体になんらかの影響を及ぼすという考えは、欧米では常識になっている。
電磁波による健康被害といば、高圧電線の近くに住む住民に白血病の発症率が高いことが比較的よく知られている。たとえばマイニュースジャパンの「電磁波&鉄塔の街・門真 『白血病死者18人調査』から10年、今も変わらぬ風景」と題する記事のリードは次のように言う。
関西各地に電力を供給するため、関西電力の古川橋変電所が位置する大阪・門真市。住宅やマンションの上を7万7000ボルト、15万4000ボルトの高圧送電線が走り、巨大な鉄塔が墓標のように並ぶ「鉄塔の街」である。「電磁波4mG以上で小児白血病が2倍以上」の報告もある中、鉄塔の真下の保育園では、電磁波測定器は『36.1mG』を指した。10年前には自治会長の個人調査で白血病死者が18人いると報告された地域を、カメラ片手に歩いた。
高圧電線と白血病の関係は、ほぼ否定できない状況になっている。住民の間にもそれなりの認識が広がっている。
◇基地局周辺の住民は「モルモット」
現在の携帯電話は、第3世代携帯電話である。
第3世代携帯電話には、マイクロ波(電子レンジなどと同タイプの電磁波)に極低周波の信号を混ぜた「変調電磁波」が使用されている。このような電磁波は、人類史上かつて存在しなかった。
基地局から発せられる「変調電磁波」は、高圧線による電磁波と同様に、人体になんらかの影響を及ぼしているのだろうか。結論から言えば、現在の段階では不明な部分が多く、危険なのか、それとも安全なかの結論を出すまでには至っていない。なぜ、結論が出ていないのだろうか?
答えは簡単で、携帯電話の基地局から現在発せられている第3世代携帯電話に使う電磁波は、使用が本格化してからの使用期間が短いからだ。当然、危険か安全かの研究も今世紀に入ってから本格化した。従って結論を出すまでには時間がかかる。ある程度の歳月を経なければ、危険なのか安全なのかも分からない。
時間が経過しなければ、問題が浮上しないのが公害なのだ。そのことは、水俣病でも、じん肺、でもアスベストでも周知となっている。
その意味では、携帯電話・基地局周辺の住民は、現在、なにも知らされないまま、「モルモット」状態に置かれていると言っても過言ではない。
携帯電話の基地局問題が欧米で問題になっているのは、最近になって携帯電話の基地局の周辺で、健康被害が発生しているという疫学調査の結果がようやく出始めたからである。
たとえば日本ジャーナリスト会議のブログで、高峰真弁護士は海外での疫学調査の結果を紹介している。「企業による人体実験を許してはいけない」と題する記事から引用してみよう。
近年、携帯電話と中継基地局の間で送受信される電磁波に健康被害の危険が存在するという研究結果が続々と発表されている。例えば、2004年にイスラエルで行われた調査によれば、携帯電話基地局周辺では、ガン発生率が4.15倍(女性に限れば10.5倍!)になるという驚くべき結果が発表されている。
◇役所は電話会社に理解
かりに携帯電話の「変調電磁波」が人体に影響を及ぼすとすれば、これから10年先、あるいは20年先になって、大問題になる可能性がある。(3100/3900文字)

鉄塔やビルの頂上に取り付けれた携帯電話・基地局のアンテナ。これらのアンテナからは、携帯電話の通信に必要な電磁波が放出されている。しかも、携帯電話が普及するにつれて、アンテナがあちこちに林立するようになった。アンテナの周辺を避けて住居を見つけるのは、至難のわざになっている。
この電磁波の危険性については、メディアではほとんど報道されない。電話会社が有力な広告主であることに加えて、国策としてIT戦略があるのがその背景ではないかと思われる。
なぜ、基地局のアンテナから発せられる電磁波をストップさせる必要があるのだろうか。それは安全性がまだ十分に確認されていないからである。極めて人体に有害である可能性も否定できない。
最近、ワンセグなどの登場もあって、基地局からは高周波と低周波を織り交ぜた極めて複雑で強い電磁波が発せられている。変調電磁波と呼ばれるもので、かつて人類に存在したことがない。それゆえにまだ安全性が確認されていない。
最近になって、基地局の危険性を指摘する疫学調査の結果が次々と発表されるようになった。たとえば2004年にイスラエルで行われた調査によれば、基地局周辺では、ガン発生率が4.15倍(女性に限れば10.5倍!)になったという。
ところが日本では、ほんの一部の人々を除いて、基地局の危険性すら知らされていない。携帯電話を使うか使わないかは、だれでも選択できる。しかし、基地局はそう簡単に撤去できない。と、なれば基地局周辺の住民は、有無を言わさず電磁波を浴び続けることになる。
《ケータイ基地局周辺の健康影響の関する最近の研究報告》加藤やすこ氏作成。『週刊金曜日』(2006年3月24日号)より引用。
2003年【フランス】
基地局から300メートル以内で健康被害が発生。吐き気、食欲不振、視覚障害、いらいら、うつ、性欲減退、記憶障害、頭痛、睡眠障害、不快感、疲労感など。



















