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YC小笹の「押し紙」裁判で福岡高裁は、元店主の請求を棄却した。
判決の趣旨をかみ砕いていえば、次のようになる。
補助金等で店主が「押し紙」により被る損害を相殺すれば、『押し紙』でABCをかさ上げしても司法は関知しない
恐るべきことに、「押し紙」を容認したのである。一般の市民の常識では考えられない判決である。今後、海外の識者をも含めて判決文を検証する必要がある。
この裁判では、YCの店舗に「押し紙」(新聞関係者の表現を借りると「積み紙」、あるいは「残紙」。一般的には過剰になった新聞全般を指して「押し紙」と呼ぶ)があったが、補助金の支給などが行われていたので、「押し紙」によって元店主が損害を受けたとは言えないというのが裁判所の判断である。
判決文の次の記述が、「押し紙」裁判の難しさを象徴している。
しかし、新聞購入契約における購入部数は販売店(控訴人)と新聞社(被控訴人)との間で決められるものであるから、仮に当該販売店担当地区の購読者数が折込広告料の料金の基礎となるもので、
被控訴人が対外的に発表する購読者数が実数よりも多数であることが、折込広告に係る契約の効力に影響を与えるものであったとしても、そのことが直ちに控訴人と被控訴人間の新聞購入契約の効力に影響を与えるものではないから、控訴人の主張は採用できない。
◇「押し紙」問題と正面から対峙せず
「押し紙」により、ABC部数が不透明になっても、それは販売店と新聞社の商取引とは無関係であるから、司法が判決する対象にはならないと言っているのだ。
しかし、経済面の損得だけを判断基準として採用すれば、「押し紙」により新聞社がABC部数をごまかしても、補助金の支給などにより販売店に損害さえ与えなければ、許容範囲ということになってしまう。
「押し紙」をしても店主に損害を与えなければ裁判所は、関知しないということになる。社会通念上、このような論理は受け入れられるものではない。恐ろしい判決である。
繰り返しになるが判決は、「押し紙」裁判でありながら、「押し紙」政策そのものについての言及を避け、「押し紙」と補助金等による相殺関係を対象とした収支の「損得」が検証の中心になっている。わたしは肝心な点がタブー視されているような印象を受けた。
私見になるが、結局、「押し紙」問題にメスを入れるためには、新聞のビジネスモデルそのものに問題があることを立証する必要があるのではないだろうか。そのためには、店主が集団で訴訟を起こすことが、今後、鍵になりそうな気がする。
「押し紙」政策が普遍的なものであるこを裁判所に理解してもらうためには、集団訴訟が有効だ。個々の販売店が「押し紙」裁判を起こしても、「押し紙」による収支の損得計算に終始してしまう恐れがあるからだ。「押し紙」政策の普遍性を、裁判所に理解してもらうためには、被害を受けた販売店の数量が必要。
ただ、現在の新聞のビジネスモデルを法的な観点から見た場合、どこに違法性があるのかも検証しなければならない。(判決文は、なんからの形でネット公表予定)
◇毎日・箕面販売所の「押し紙」裁判
2007年5月に毎日新聞・箕面販売所(大阪府)の元店主が提起した「押し紙」裁判の本人尋問が、大阪地裁で1月25日の午後おこなわれた。法廷に立ったのは、原告の元店主と毎日の2人の社員。
元店主は、平成1年に新聞(「押し紙」を含む)の仕入れ代金を支払うために、自宅のマンションを売却したことなどを証言した。
裁判官から「押し紙」の保管場所について質問を受けると、店舗の奥にあった炊事場を改良して「押し紙」置き場にしていたことを証言した。
また、毎日の「押し紙」政策の決定的な証拠とも言える減部数を求めた内容証明郵便の作成過程については、従業員の女性に口頭筆記をしてもらって、作成したと答えた。元店主は、3通の内容証明郵便を毎日社に送付している。
毎日社員に対する尋問では、毎日独特の「注文部数」の決定方法などが鮮明に浮かび上がった。毎日は「注文部数」を、販売店との話し合いで決定するという。
つまり最終的な「注文部数」の決定権は、販売店の側ではなくて、社に握られていることがはっきりとした。「押し紙」政策が客観的に存在することを裏づけたとも言えるだろう。
◇元店主の勝訴は、ほぼ確定
尋問が終了した後、裁判官は原告と被告の双方に最後の和解案を提案した。原告代理人弁護士によると、和解案は毎日が元店主に和解金として1500万円を支払うという内容。
これまで裁判所が提示していた和解金の額は1900万円であるから、400万円の減額になった。
原告と被告は、裁判所の和解案を持ち帰り2月22日に回答する。和解が決裂した場合は、4月26日に判決が言い渡される。判決になった場合は、元店主が勝訴する可能性が圧倒的に高い。
本人尋問の詳細は、調書が作成された後に新聞販売黒書で詳しく紹介する。以下、わたしの感想である。
「注文部数」とは文字通り、商店が品物を発注する際に仕入先に明示する仕入れ数量である。当然、商店の側に注文数量を決定する権限がある。これが普通の商取引である。
ところが毎日新聞の商取引では、注文部数を決める権限が必ずしも販売店側にあるわけではないことが、尋問で明らかになった。
毎日の場合、「注文部数」は、販売店と本社の話し合いで決めるという。箕面販売所の店主から内容証明で提出された減部数の要求に応じなかったのは、元店主が発証数など店の経営状況を判断するためのデータを提出しなかったからだという。そのために実配部数が確認できなかったから、減部数に応じなかったという。
しかし、実配部数を把握していなかったという主張に対しては、裁判官も疑問を呈していた。
さまざまな口実はあるにしろ、毎日新聞の場合、販売店が減部数を申し出ても無条件に受け入れられるとは限らないことが尋問で明らかになった。種々の条件を考慮して、最終的に「注文部数」は毎日の側が決めていることが明らかになった。
言葉を変えれば、毎日の店主は自分の判断で「注文部数」を決める権限を持っていないことになる。
法廷における毎日の狙いは、「押し紙」政策を否認することよりも、賠償額を減らすことに置かれているような印象を受けた。そのためなのか、「押し紙」裁判にもかかわらず、元店主の経営がいかにずさんであったかを強調してみせた。
たとえば店の電話を自動転送にしていなかったとか。購読料の自動振り替えのシステムを構築していなかったとか。順路帳の管理がずさん。店主会への不参加。営業成績が悪い等。これらは新聞社が常套としている販売店攻撃である。
本人尋問を要求したのは、毎日側であるそうだが、尋問を通じて、毎日新聞の「押し紙」政策が一層鮮明になった。(4200/4200文字、全文公開)

















