世論誘導の大部隊、大新聞社は国民にとって本当に必要なのか? 

 『新聞通信』(1月14日)が読売新聞社の今年の年賀詞交換会における渡邉恒雄会長のあいさつを大きく紹介している。同紙によると、渡邉会長は、「世界最大部数を誇る1000万部を死守して新年を迎えたことは非常にうれしい」と述べている。

 この1000万部が発行部数なのか、それとも実配部数なのかには言及していない。実はこの点が最も肝心なのだが。

  新聞は公器を自称しているわけだから、みずから実配部数を明らかにするのが筋だろう。発行部数しか公表しないのは筋違いだ。

◇渡邉氏は世界情勢を読みまちがえている
 さて、渡邉氏はあいさつの中で日本の政治状況にも言及して自論を展開している。たとえば鳩山内閣の評価については次のように述べる。

 鳩山内閣は「3Kに苦しむ」と言われています。景気、基地、献金の3つであります。米軍基地問題では日米合意を破り、右往右往しています。日本は、日米同盟が空洞化すれば、北朝鮮のミサイルや中国の増強を続ける軍事力、特に空母保有後の中国の海軍力強大化に対し対抗手段がなくなり、その結果、外交上の発言力を失い、ひいては、グローバル化時代に生き残るための経済力も著しく低下するでしょう。(略)

 このような時代には、政府に対する新聞の建設的発言、主張が極めて大切です。

 新聞の影響力で、政治界をリードしていこうという意志がありありと現れている。基地問題について、わたしの見解もあるが、本題からそれるのでここでは言及しない。ただ、世界は非軍事化の方向へ進んでいるという点だけを付け加えておきたい。

 渡邉氏に限らず、日本の政治家の大半がこのあたりの事情を正確に把握していないところに、政策を誤る原因があるのではないか。米軍と共同で中国に対抗しようというような考えは、時代錯誤以外のなにものでもない。

 ちなみに読売の国際面を読んでも、ラテンアメリカで何が始まっているのかは見えてこない。

◇巨大部数と世論誘導、対抗言論の不在
 新聞人がみずからの主張を紙面で展開することは、当然のことである。もともとジャーナリズム活動とは、自分(自分たち)の主張を公にすることで、社会を動かしていく行為であるからだ。

  ところが日本の新聞業界には、それ以前の大問題がある。対等な規模の対抗言論が存在しないことである。たとえば改憲や海外派兵を主張する考えに基づいて編集した新聞が1000万部の規模で宅配されるとすれば、それに対抗する1000万部の新聞がなければ、対等な論争にはならない。

 800万部の朝日新聞が読売の対抗言論になるのではという考えもあるが、わたしは根本的には、大きな主張の違いはないと見ている。違いがあるとしても、それは自民党と民主党の違い程度ではないだろうか。

  両者とも財界をスポンサーとする政党である。この点をベースに考えると、当然、民主党も改憲や海外派兵の方向へ傾く傾向、あるいは危険性がある。海外派兵の究極の目的は、海外へ進出した多国籍企業の権益を武力で防衛することであるからだ。

 それは財界の要求と言えよう。国際貢献はあくまで建前である。

 しかも、第3世界が台頭してきた今世紀の状況下では、海外での政変や革命が発生する可能性が高くなっている。政変や革命が多国籍企業の権益と衝突したとき、国際貢献を口実に海外派兵を断行してほしいというのが、財界の要望ではないか。財界を広告主とする新聞社が、財界よりの論調になっても何の不思議もない。

 問題は同じ規模の対抗言論が存在しないことである

◇新聞社、キー局、ローカル局の協働で世論誘導
 メディアによる世論誘導は、日本ではシステム化されていると言っても過言ではない。実質的に新聞社がテレビ局もコントロールしている。しかも、新聞社が経営難に陥るにつれて、両者の関係がますます緊密になってくる。

 事実、新聞記者が取材した内容を、テレビ番組の制作に併用することで、コストを削減する案も、複数の新聞社で浮上してるようだ。

 さらに問題なのは、新聞社と一体化したテレビ局が、その下にローカル局を従えていることである。このあたりの実態について、『ウィキペディア(Wikipedia)』は次のように説明している。

 日本には5つの主要テレビ局(日本テレビ・テレビ朝日・TBS・テレビ東京・フジテレビ)があるが、これらの本社は全て東京に集中しており、在京キー局とも呼ばれる。

 キー局は自ら報道番組や娯楽番組を制作し、ネットワーク系列から各ローカル局に卸売りを行っている。地方における放送局も番組制作を行っているが、キー局の割合は非常に大きく2002年度のテレビ番組総売り上げの55.7%[要出典]はキー局のものである。さらに系列ネットワークはそれぞれの系列新聞社とも強く結び付いており、メディアにおける影響力が強い。

◇特殊指定と「電波利権」でメディア・コントロール
 こんなふうに日本では、メディアによる世論誘導が可能なシステムが構築されている。各メディア企業が真に自由な言論活動を展開できる条件があれば、大きな問題はないが、実際は経営面を政府にコントロールされている。広告を通じて、財界にも依存している。

  具体的に政府がメディア・コントロールの道具にしているものは、新聞業界の場合は、新聞特殊指定である。これを撤廃すれば、巨大な新聞社が崩壊するおそれがある。

 一方、テレビ局は、「電波利権」で政府にコントロールされている。電波の使用領域は、政府が割り当てる仕組みになっているからだ。

  日本に埋め込まれたメディアのシステムが、世論誘導の役割を果たしていることは言うまでもない。タレントやスポーツマンが代議士になっても、異常だと感じない人々が増えているのも、メディアに責任があるのではないか。

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